2015年01月11日 BS日テレ「久米書店」 出演 壇蜜 田中康夫

◎前篇はこちら

[田中康夫]失礼致します。田中康夫と申します。

[壇蜜]壇蜜と申します。

[田中]ありがとうございます、今日はお時間を頂戴致しまして私のこの喋り好きな人間が註の註のような話を今日はさして頂ければということで伺わせて頂きました。

[壇]いえいえわかりました、わざわざありがとうございます。

[田中]いえとんでもない。

[壇]それではどうぞこちらへ立ち話もなんなんで。

[田中]よろしいでございますか、ありがとうございます。

[壇]ようこそ。

[田中]ありがとうございます。恐縮です。

[壇]せっかく訪ねていらしたのに私だけで申し訳ありません。

[田中]いえいえ逆に二人で話させて頂けるのは光栄です。

[壇]ありがとうございます。

[壇]まったく触れていない世代の、触れていない世界の話でしかも私の父や母が味わっているような見てきたような世界を描写されているので、歴史とも違うし近代とも違うし現代とも違うしライト・ノヴェルとも違うしっていうどこのジャンルにも当て嵌まらないものを読んだ気がしましたね。

[田中]あの、しかも今回私は初めて男性が語り手の物語を書きまして、それがカタカナの「ヤスオ」という人が、私が初めて33年程前に書いた作品に出てくる登場人物達と巡り合うという話ですので。

[壇]ちょっとあの、表紙の雰囲気もそうなんですけど、なんかこう、『アリス・イン・ワンダーランド』みたいな感じがしたんですね。『ヤスオ・イン・ワンダーランド』なのかなっていう風に読むようになりました。

[田中]いやそれは逆にありがたい言葉だと思いますけれども。

 
「黄昏時って案外、好きよ。

だって、夕焼けの名残の赤みって、

どことなく夜明けの感じと

にてるでしょ。

たまたま西の空に拡がるから、

もの哀しく感じちゃうけど、

時間も方角も判らないまま、

ずうっと目隠しされていたのを

パッと外されたら、

わぁっ、東の空が

明るくなってきたと

思うかも知れないでしょ」

由利は悪戯っぽく微笑んだ。

 

[壇]私は読み進めていて「ヤスオ」と「由利」の関係が恋人同士ともボーイフレンド・ガールフレンドとも絶対に言い切っちゃいけないと思うんですよ。

[田中]うん、なるほど。

[壇]んーだから、結局二人は何なの?って聞かれた場合っていつもどうやってお答えになってたのかな?ってそれが不思議でした。

[田中]私の中にもあなたの中にも「ヤスオ」の中にも主人公の「由利」は実在するって、私の物語は恐らくノンフィクションであってフィクションであり、フィクションであってノンフィクションだと思いますから。

[田中]私にとっては、恋愛をすることもヴォランティアをすることも行政や政治も同じなんです。人様に喜んで頂けてナンボ、多分、登場人物達も私が書いていたり実際に私が巡り合ってきてる人達なのでどこかしらそういう気持ちが・・・。

[壇]気持ちが・・・。

[田中]持ってるかな、と。「由利」はあなたの中にも私の中にもそして「ヤスオ」の中にもいる。この社会の中できっと上手く説明できないけど数字とかグラフとかでは説明できない、人間がきっと取り戻していったりあるいは造作の「造」じゃ無くて「創り」出していくものを、きっと「由利」は私にも、もしかしたら壇さんにも教えてくれる部分があんのかもしれない。

[壇]「与えてくれた人」っていう感じですよね。

[田中]あぁ、それはきっと本の中から今出てきて深々頭を下げたくなる思いだと思います、彼女は。

[壇]もしよろしければ、番組の中で一度著者の朗読というコーナーがありまして良ければ読んで頂きたいのですが、お願いできますか。

[田中]お茶を、コーヒーを。

[壇]どうぞどうぞ私も頂こうと。

[田中]冒頭で「ヤスオ」と「由利」が江美子というもうひとりの登場人物を通じてインターネット上でやり取りをするようになったところの部分の文章なんです。で、その、千駄ヶ谷の彼女がモデル事務、学生で学生でモデル事務所にも所属していて「僕」が行っていた学生の雑誌のデザイン事務所にデザインを貰いに行ったところなんですけど、その後のところで、そこでばったり会うんですけども。

 

『33年後のなんとなく、クリスタル』25頁


--- そうそう。あなたと江美子に出会ったパーティーから二、三週間後。


って僕がパソコンから打つと


--- お互いに一瞬、アレッと思ったのよね。
それで、お茶をしたの、近くのお店で。

 

ってんですけど、その後の地の文章のところで


自家焙煎が売り物だった珈琲店。覚えてる。
入口にオープンテラスも併設されたスターバックスの類いは、
まだ日本ではチェーン展開されていなかった。


これはとても、ひとつの卑近な例ですけどもこの33年間の変化で、ここに私が註を付けておりまして、とても短い他の長い註とは違って、ですけど。
 

スターバックスの類い

喫茶室ルノアール1964年~。談話室滝沢1966年~2005年。ドトール コ ーヒーショップ1980年~。スターバックスコーヒー1996年~。日本法人は2014年末、株式公開買付=TOBで米国法人の完全子会社化へ。

 

多分そうした33年のなかでそれぞれの方が暮らしてる場所や行ってる仕事やあるいは暮らし向きは違うとしてもやはりこの33年が、とても日本が変わりそして自分も、皆さんが変わってくるなかでもう一度「記憶の円盤」に自分も乗って、この物語を読むだけで無くてご自分をあるいは愛する方をそしてこれからの自分達の歩むものを感じて頂けたら、改めてそれは、一年余り呻吟しながら描いた人間にとって最大の有り難いことだと思います。ありがとうございました。

[壇]ありがとうございました。

[田中]とんでもない、こちらこそ。

『JJ』1981年4月号インタビュー記事より。田中康夫

 

 

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