2014年07月28日 TokyoFM Time Line 特集『なんとなく、クリスタル』が予見する2030年の世界 ゲスト 田中康夫

「註の新たな註」
「いまクリ」と「もとクリ」、その記憶の円盤が舞い続ける時空。

ようこそ現在から1980年の東京、そして日本へ❣
「✽文庫本化に際しての、ひとつの新たな長い註。」でお約束した「註の新たな註」は、
両書に登場する「字句の解釈」に留まらず、
高度消費社会の幕開けから現在に至る時代背景を、
関連する僕の拙稿等も紹介しながら絵解きしていくサイトです。

[田中康夫]7月28日月曜日Tokyo FM Time Line こんばんは、田中康夫です。

[今井広海]こんばんは、Tokyo FM 今井広海です。時刻は19時を回りました、News Program Time Line。今夜のTime Lineは長野県知事を二期、そして参議院議員衆議院議員を歴任された作家の田中康夫さんとお送りして参ります。田中さん、どうぞよろしくお願い致します。

[田中]はい、こちらこそお願い致します。

[今井]田中さん、このTokyo FMにご出演頂くのは何年ぶりぐらいになりますでしょうかね?

[田中]うんそうね、2年か3年くらい前に一度、今井さんとどうも・・・。

[今井]そうですね、3年くらい前にブルーオーシャンにね。

[田中]はい。はい。

[今井]ご出演頂いて、まさにこのスタジオだったと思うんですけど。

[田中]はい。

[今井]その時田中さん、あのー、加圧トレーニングされてるというお話されていたかと思うんですけど。

[田中]あぁ・・・。

[今井]続いて・・・。

[田中]週に一回は一応、まぁ気分転換になるし。

[今井]あぁ、そうですか。

[田中]意外と加圧トレーニングやってる時に、色々なんかアイデアが浮かんだり、しますね。

[今井]結構、加圧トレーニングってハードだって聞きますけれども。

[田中]やっぱり1時間、実質45分くらいでかなり、の運動量ですね。

[今井]ねぇ、やっぱりこう、精力的に活動される為にはやっぱり体力という・・・。

[田中]いえいえあの、ズボらだから短い時間で集中的にやれるのがいいなぁと思って。この近くで。

[今井]ね。そうなんですよねー。

[田中]やらせて頂いてます、麹町で。

[今井]あのー田中さん、今基本、どういう活動をされていらっしゃるんでしょうか。

[田中]まぁあのー、いくつか週刊SPAとか連載の原稿とそれから今、あの実は、17年ぶりにですね・・・。

[今井]はい。

[田中]小説を書いておりまして、「文藝」という河出書房の文芸誌で連載をしていて。

[今井]はい。

[田中]秋には単行本になるんじゃないかと思うんですけど。

[今井]その点詳しくは後ほど特集で伺っていきたいと思いますけど。

[田中]はい。

[今井]どうぞよろしくお願いいたします。

[田中]こちらこそ。

 *

[今井]今日7月28日のTime Lineを追いかけてみましたが、田中さんがなんか気になったニュースというのはありましたでしょうか?

[田中]んー、まぁ一番最後のその、パレスチナ自治区のガザですよね。ま、先週もあの、国連人権理事会で決議が行われたわけですよね、ま、これは残念ながら日本はあのー、棄権してしまったんだけども、でも、このまさに国連パレスチナ難民救済事業機関っていうんですか、ここの施設、の一般の人達が居る場所だし、あの、昨日はその、テレビ局まで攻撃されてるわけですよね。そうなるとやっぱこれは日本は真の意味での「積極的平和主義」というものを今こそ打ち立てないと、一方でまぁ、イスラエルとは準同盟国的な締結をこの間(ネタニヤフ首相)来日時にしてますし、ま、外務副大臣がそのまた向こうに行ったんだけどもこうしたその、国連の支援機関が財政難だ、っていうのに対してその緊急支援はまだ検討中というのはね、私達からするとどうなのかな?って感じはしますね。

*

[街頭インタビュー音声]地方・県議会、あんまり興味ないですね、あんまりなんかその、都議会議員の人達の主張みたいなのが全然市民に届いてこない、どんな議員がいるか ってのも殆ど興味が湧かない、ですね。あぁあります。地方の景気回復してきてるでしょ、水産関係がちょっと厳しいですね。水産県長崎ですから。あるにはあるんですけど、強い関心があるか、って言われるとそうでもないかなっとは思ってます。知る手段がね、まぁあるんでしょうけど、見る時間もなかなか。何やってるのか、正直見れないからまぁ、アクセスすることが手間って思ってしまう。

[今井]ま、街頭インタビューを聞いてみても地方政治にあまり関心が無い、という方ね多いようなんですけど。あのー、田中さんは2000年から2期6年長野県知事ね・・・。

[田中]はい。

[今井]お務めになりましたけど。

[田中]私の時はね、途中で2年間で中間テストのように不信任決議が出て、出直し知事選になったりあの時は県民は毎日夕方のニュースを見てたんじゃないですか。

[今井]なるほどね。

[田中]今は逆に、呉越同舟になってしまうと、うーんそれがあの、何も無いから関心が無い、みたいなね。

[今井]どうなんでしょうかね、その田中さんから見て現在のそのー、地方議会であるとかまぁ、地方政治の状況・現状、どういう風に映ってますでしょうか?

[田中]あの、僕は前から持論で、まぁ勿論国政も低迷・混迷してんだけども地方議会の人数をね、議員の人数を減らすことが行政改革みたいに言ってるじゃないですか、でも仮に10人減らしたとしてそれはまぁ、1億か2億の金額なわけですよ、僕はむしろ逆に地方議会てのは、アメリカとかがそうであるようにもう、開催も土日とか夜間に行ってそして議員の数はね、20人居たところが10人になると、逆にもっと利権や票田を持ってる人達だけが議員になっちゃうわけですよ、一般の私達と等身大の人がなれない、そうすると逆にもう百人くらい居てそれこそ実費弁償で、交通費と日当ぐらいにして、で夜間にやってまさにケーブルテレビやネットで中継をする、そうするとおじいちゃんもいますと、あるいは若い奥さんもいるし、障害を持った方もいる、あるいはまぁ、ニートと呼ばれる人もいるかもしれない。そうするとその方がむしろ常設住民投票のような意見になるんですよね。

[今井]はい。はい。

[田中]だけどこの議会というのは、議会の議員の定数や議員のお給料を、あのー、自前で、自分達で決めるから、第三者機関も何も無いので、一番チェック機能が無い。僕
はやっぱりこれはもう、国が一刀両断で議員の数を膨大に増やして実費弁償日当制にでもした方がむしろ、有権者の声を反映する地方議会になると思ってます。

[今井]確かにこの地方議会のメンバーみてみますと、まぁ元々地元の顔役というんでしょうか、有力者、ま、特に建設業であったり農業であったりという方が多くてですね、まぁ一般のサラリーマンの方であるとか主婦の方っていうのはなかなか参加しづらい、っというのがあるのではないかと思うんですけど。

[田中]だって裁判員制度のようなものまで出来て昼間働いている人達が時間拘束されるのであれば、むしろ僕はその、土日や夜の議会を、人数を大幅に増やす、と。これは一つある、と思ってるんですけど。アメリカなんて既にそうです。

[今井]そうなんですよね。そういった意味ではあのーまぁ、今朝の朝日新聞にも出ていました地方選挙の投票率が急落してるということなんですけど、その地方議会と住民との距離感というのはやっぱりあるんでしょうかね?

[田中]まっ、私達の方も何も・・・、でも、一つはね国政の時は小選挙区でもう、まさに戦かっているのに、地方の首長選ぶのも議会もみんな呉越同舟みたいになってるから。

[今井]そうですね、曖昧と言われる・・・。

[田中]そうすると、一般の人達からすると、なんだかなぁ、で終わっちゃうと。

[今井]あぁ・・・はい。

[田中]なんだかなー、で終わらせない為にはやっぱりそういう制度を少し変える必要あると思ってますね。

[今井]あのー、安倍総理なんかはそのー今ね、えー地方の再生を掲げて地方が元気にならないと日本が元気にならないんだということを仰っておりますけれども、まぁ特にこの、公共事業を進めるということでこれはあのー、地方の活性化に繋がるんでしょうかね?

[田中]ま、旧態依然たる公共事業つまり、「造る」ということばかり考えてるけども、「直す」とか「守る」その事によって「創造」する「創る」。こないだあのー、長野県と岐阜県の境の南木曽町というところで砂防ダムで、が、土石流が出てきた、と。でもこれ、謎なことで、砂防ダムというのは、その砂を堰きとめる為にあるんです、でも満杯になってしまっても、それを浚渫しないんですよ、そして満杯になると上下にまたコンクリートで新しいダムを作る、ということになると本当に「砂防をしたい」のか、「公共事業の事業を続けたい」のか、むしろ浚渫をするというようなことの方が地元の青息吐息の土木建設業の人達の確実に仕事になるんですよね。その辺の「科学的知見」と称する言葉も新しい21世紀の発想にならないと、ホントにお金が落ちないでむしろあのー、大都会・都市に吸い取られちゃう形ですよね。

[今井]まぁ、そうしたなかでまぁ有権者の意識の問題でもあると思うんですけれども、地方政治の質、これから、まぁ、高めていく為にはどういうことが必要になってくるんでしょうかね?

[田中]うん、だからそれはでも、皆さん関心を持ちましょう、と言ってもその、食うや食わずでま、生活は苦しいんだけれども、なかなかそうならないとするともう一回繰り返しになりますけども、僕はもう議会の構成というものを少数の今までの自分の事業が更に潤う為に議員になるような人達では無い、ホントにボランティアの精神を持った大勢の人が議会を構成する形へと変えないといけないと思いますね。

[今井]Time Line、この時間は地方政治、あなたは関心がありますか?をピックアップしました。

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[田中]Tokyo FM Time Line、月曜日の今日は私田中康夫がお送りしています。

[今井]はい。ということで今夜のTime Lineは長野県知事を2期、そして参議院議員衆議院議員を歴任された作家の田中康夫さんとお送りしております。さあ続いては今夜の特集なんですけれども、先月25日にですね、総務省が発表した今年1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査に拠りますと、えー国内の日本人の人口は、前の年の同じ時期に比べて、243634人少ない、126435964人となりました。5年連続での減少なんですね。まぁ他の国に先んじて少子高齢化となっている日本ですけれども、こうした日本の現状を33年前に予見していた小説があります。作家の高橋源一郎さんがマルクス資本論との類似性を指摘したり、オマージュが込められた「なんとなく、クリティック」という雑誌が創刊されるなど、ここ数年再評価の機運が高まっている『なんとなく、クリスタル』。今夜はこの『なんとなく、クリスタル』の著者である田中康夫さんに少子高齢化社会の行く末についてお話を伺って参ります。

今夜Time Lineがフォローするのは・・・。

『なんとなく、クリスタル』が予見する2030年の世界。

[今井]さぁ今聞いて頂いてるこの曲、えー『なんとなく、クリスタル』に登場する1980年東京のラジオから流れてくる曲、Willie Nelsonの「Moonlight in Vermont」な んですが、『なんとなく、クリスタル』は1980年5月に当時在籍していた一橋大学の図書館でおよそ3週間掛けて書き上げた田中さんのデビュー作ですけれどもね、累計で100万部以上売れて後に映画化されるなど、社会現象となりました。えー、80年代の日本の消費文化・高度消費社会という時代の気分を社会化させた小説でありながら、442個に及ぶ膨大な註釈が付くことから単なるブランド小説、カタログ小説などと厳しい批判にもさらされました。

[今井]えー、1980年といいますとね、この番組のリスナー、まだ生まれていないとかあるいは小さかったと・・・。

[田中]あーまぁ、そうでしょうね。

[今井]ねぇ、いう方が多いと思うんですけれども、まぁ社会現象となりました当時の受け止め方、今振り返ってみて田中さんどういう風に感じてらっしゃいますでしょうか?

[田中]あのー、まさに日本って理屈では無くて「なんとなく」なんですよね。そして当時はまだ高度経済成長の後の、ま、バブルの来る前で、えーまだ、未来が少しこう、クリスタルな感じかなっていう、「豊か」な世代だったと思うんですよね。でまぁその、あのーいや、一杯ブランド物が出てくるからってゆった人に、そういう文芸評論家にはよく言ったのは、いやだって、ボーナスが出たので自分が買いたいと思ってた仮にルイ・ヴィトンのバッグを持って満員電車の中でもちょっとハッピーだな、って思ってんのは、あなた方が岩波書店の難しい本を読んで、おいらは利口だぞっつってるのと同じで、物質的ブランドも精神的ブランドも同じで、でもそこで得られるものはそれぞれ違うって話なのに、ルイ・ヴィトン岩波新書は同じ次元で語れないっていうことの方が高みに立ってんじゃないの?てよく言ったんですけど。

[今井]はい。

[田中]ただあのー、当時まぁ、色んな方からインタビューを受けて、海外のメディア、例えばワシントン・ポストとかですね、そうした人たちがよく言ったのは、註の最後にあたしが付けていた、まぁ今日のテーマでもあるけれども、日本の少子高齢化、そのーこれ、合計特殊出生率っていう、まぁ、役所は難しい言葉使うんですけども、どのくらい1人の女性が生涯にお子さんを産むのか、あるいは65歳以上の高齢、まぁ国連が65歳以上って決めてんだけど、日本ではね、70歳80歳でも現役世代ですけど、まぁその数字を載せたんですよね。なぜこれを載せたんですか?って海外のメディアの人にはものすごく聞かれて、いや私達はこの豊かな生活ってのをあのありがたいと思ってるけど、果たしてそれがこれから人口構造が逆に、(逆)ピラミッドになったら続くのかな、その意味でこの註を載せたんですよ、って言ったんです。

[今井]んーん。はい。そのーまぁ、資料なんですけどもね、今田中さん仰ったようにこれね、非常に難しいタイトルの資料(笑)。 なんですけれども。人口問題審議会出生力動
向に関する特別委員会報告、というね。

[田中]うん。

[今井]日本における人口減少を示すデータ、そして54年度厚生行政年次報告書、というこれは日本の高齢化社会への移行それに伴う厚生年金の保険料アップを示すデータなんですが・・・。

[田中]あのね、これあのー、まぁ政府が作った委員会が丁度その、本を書いた時に発表したんですよね、で、本書いたの1980年ですけど、1979年にまぁその、1人の女性が出産をする数字が1.77だったんです、そうすると日本のような国でも病気だとか事故で亡くなる方がいるので、2.07人産むと人口が横ばい、あ、そうすると人口減っていくんじゃないのか・・・。

[今井]ほうほうほう、そうですね。

[田中]と思ったんです。で、ところがこの審議会の文章には、「出生率の低下は、今後も続くが80年代には上昇(基)調に転ずる可能性もある」って書いてあったのね、ところが現実にはもう、去年でも日本は1.41という数字なんです。で、最も、まぁあの、ヨーロッパで、えー例えば事実婚のPACSとか児童手当が充実しているフランスでも2.01で横ばいよりも落ちる、EU全体も1.6、日本はそれよりも遥かに低いんですよね、で同時に高齢化率というのがありまして、これもまぁその時に載せた数字では2000年には、ま、僕が丁度知事になった年ですけど、65歳以上の人が14.3パーセントぐらいでしょう、って書いてあったんです。でも現実には6年早く1994年にはなってしまったし・・・。

[今井]うーん・・・。

[田中]今はその、2009年の段階で25.1という世界で最も高い・・・、スウェーデンよりもノルウェーよりも高い数字になっちゃってんですよね。でそうすると最近よく
言われるようになってきたのは、いやニッポンは人口が減少していくんだ、と前から私言ってたんだけどなぁ・・・。って思うんだけれども、で、今言ってることが日本の人口は2060年には8700万人になっちゃって2110年、ま、約100年後には4300万人になっちゃうよ、って、なんか、脅されてるような感じなんですよね。で、東京だけはオリンピックもあるから人口が増えます、って言われてますけれども実はオリンピックが開かれる2020年の前年からは東京の人口も減っていくし、今、逆に言うとほら、「地縁・血縁」が薄い社会だから、その、郊外の多摩ニュータウンとかだけじゃなくて青山とか、中心部でも限界集落になってきちゃってる。

[今井]そうですよね。はい。あのー先程ちょっとお話ありましたけども、まぁこうした巻末の資料に、ま、当時海外のね、メディアは、あーちょっと注目されていたということですけども、あまりこのー、日本のメディアで注目・・・。

[田中]だから、僕はね日本の人達が、なんなの?お前本文のなかでこうしたこと書けなかったから、なんか最後に註としてくっつけたの?って言うんだったらまだ分かるんですけど、全く誰も言及しなかったんですよね・・・。

[今井]どうなったんでしょうかね?

[田中]いや、分かりません(笑)。

[今井](笑)。

[田中]ま、今日のあのー、2030年のニッポンってじゃどうなってるの?って言うと、今大体、先程言ったように5年連続人口が減少しているけれどもまぁ、1億2700万人くらいですよね、でこれがあのー2030年には1億1600万人。そうすると1100万人減少する・・・で更にその、ま、15歳から65歳を、これもまた国連 の定義で「生産年齢人口」っつってるんですけれども、これはあの、1300万人も減少してっちゃう・・・、ってことなんですよね。じゃ、どうすればいいのか?で、それに対して最近、僕はちょっとびっくりしたんですけども、政府があのー経済財政諮問会議ってのを作ってて、でー、ここが「未来は政策の努力や人間の意志によって変えられるんだ」って文章が書いてあって、でその、内閣総理大臣が議長の専門調査会で、どういうこと言い出したかって言うと「これから毎年、日本は、20万人づつ移民を入れましょう」と。「労働力人口の穴埋めとして20万人づつ入れれば、100年後もニッポンは一億人を保てる・・・でハッピーです・・・」って言うんだけど、これってすごい不思議でね、で、日本の人達がどんなに働き易い、女性が産み易い、働き易い環境を作ったとしても、人口は元には戻ってかない・・・そうすると移民の人達が来るということになると、これ、単純に計算すると100年後には、55パーセントの人達は日本の今、生まれ育ってる人では無い、ような人になる・・・という話になるとね、極論すれば、勿論アメリカは元 移民に拠って成り立ってたのでバラク・オバマさんが大統領になったけど、今日本に、例えばそのーほら、あのー外国人技能実習制度とか、まこれも逆に下働き制度でいけないと思うんですけど、この80パーセントの人は中国の人達が来てるんですね、そうすると100年後の日本の首相は、果たして誰がなってるんでしょうか?っていうことなので、僕は別にその、鎖国論者でもなんでもないけれども、こんなに重要な日本の将来のことは国民的議論をしなくちゃいけないのに、政府の、その、委員会がこういうレポートを既に書いてしまっているということになると、ヨーロッパの、例えばスイスとかフランスや、イギリスでもかなり、あのー良くも悪くも入念な移民政策を採っても色んな問題が起きてるわけですよね?もっと振り返ればローマ帝国以来、移民政策をしてなかなか上手くいった場所は無い、っということになると、もしかするとあのー、昔ほら、鳩山由紀夫さんが「日本列島は日本人だけのものではありません」っつってネトウヨの人達がうわーーって「お怒り」になってしまったんだけど、いやもしかするとですよ、年間20万人づつ移民を入れてきましょう、ってのを今の政府が方針として立てると、実は、鳩山由紀夫さんの木霊を今言うようになっちゃったのか?っていう・・・だからこそこれは僕は、もうちょっと考えなくちゃいけないんじゃないか、で、一点はね、人口が減ることを、役人の人達って「数字」を維持したいんですよ、つまり、予算規模を削減するのを物凄い抵抗をするでしょ。でも考えてみたら日本て日露戦争の時に4700万人なんですよ、人口が。

[今井]そうなんですね。

[田中]そうするとね、奇しくも100年後の日本の予想人口と同じで、すなわち我々は量の拡大や維持から質の充実という発想の転換をね、しなきゃいけないんじゃないか。だってフランスやイタリアも日本の人口の今の半分なのにちゃんと自分達の農業の自立、自給率が高くてそしてブランドに象徴される付加価値のモノで、あの、国を豊かにしようとしてるわけでしょ?だからこの辺を日本はどう考えるのか、という議論が必要だろうと僕は思いますね。

[今井]まぁ、そうした現状、そしてね将来の予測があるなかで、まぁ田中さんは去年ですね2013年ですけども『なんとなく、クリスタル』が復活しまして、続編『33年後のなんとなく、クリスタル』の連載が雑誌『文藝』でスタートしました。

[田中]はい。

[今井]これはあのー、現在発売中の『文藝2014年秋季号』で第四話が掲載されておりまして物語りは今も続いているんですけども・・・。

[田中]で、まぁ、秋に五話目が出てそして単行本にしようと思ってるんですけどね。

[今井]あ、単行本化の計画もあるわけなんですね。

[田中]はい。

[今井]そのー、前作から33年ぶりに、このー、続編を執筆された理由ってのはどのあたりにあるんですか?

[田中]それは、あの、実際問題、一番最後に無意識のなかで付けていた脚注の数字を上回る形で日本が世界の超少子超高齢社会になっちゃってる、そうすると人口を5000万人でも維持できるような社会にしよう、でも昔と違って逆ピラミッドの人口構造なんだから、じゃぁその介護を誰がやるのかでも、考えてみると介護をね海外から来た人達にさせましょう、というけどむしろ、その、会話とか一番心の機微が大切なのが介護でむしろそうしたところに日本の若い人達が働けるような環境をつくる、こういう議論にならないのが僕としてはちょっと歯痒いんですよね。そしてさっき言ったように、日本を取り戻す、って言ってたのがなんか、日本を取り崩す、みたいな話になってきてしまう、で他方で、そのまー、元岩手県知事だった増田寛也さんあたりは、いやぁもう極限社会だ、極点社会だ、みたいな事仰ってて地方もみんなコンパクトシティにしなきゃいけないって言うけど、あれを官僚の人達がとてもねぇ、賛同してるってのが僕は、結局また新しい公共事業なんじゃないのか、と。もしそれだったらやっぱりあのー、もっとあのー、藻谷浩介さんが言ってるような「里山資本主義」のような具合にする・・・、で、同時にですね、あのー日本て今、じゃぁ地方にまたお金あげましょう、例えば基地がある所には交付税を増やしましょうってるけど、これやっぱり「上から目線」なんですよね。

[今井]はい。

[田中]日本の税制というのは、あの、ま、なかなか難しくて、法人税も例えば本社のあるところに全部入っちゃうんですよ。そうすると地方が工場誘致したりしたとしてもそこに入るのは固定資産税とその従業員の人達の住民税くらいなんですよね。

[今井]んー。

[田中]でこれに対して、その、今議論されているんですけども、外形標準課税って・・・。

[今井]はい。はい。

[田中]僕がまぁ、国会議員やってる頃からずっと言ってたんですけども、つまり東京に一括納付する法人税制度じゃなくて、地方税制度にすべきなんじゃないか、と。すなわちその、事業所の規模とか従業員とか今はもうネットの時代ですから、生産額とかあるいは販売額とか資本金とか全部出んので、こういう形で地方分散の税制にする、そのことの方がですね、東京一極集中だけではない、そして東京をも地方が逆に元気に出来る税制なんですよね。この辺がちょっと議論がまだ足りないんじゃないのかなぁ、っという。だからなんか交付税もなんか、脱金目の発想というのが必要なのに。

[今井](笑)。

[田中]地方は大事です、と言いながら中央からお金を交付税であげます、という、この目線を変えるべきだと思いますね。

[今井]あのー、もう一方で伺いたいのは、その、「なんとなく、クリスタル」でまぁ、描いていた当時のですね日本の消費文化であり消費社会のという時代の気分なんですけども、まぁあの、その当時の雰囲気と今の空気と比べて田中さんは、その「消費」という視点で言うとどういう違いを感じられてますでしょうかね。

[田中]んー、まぁ、あのー、ただ消費ってのはとても大事なことでね、「配給」の世界になってしまうとこれは「戦争」の世界なんですよ。

[今井]なるほど。はい。

[田中]つまり、これは堤清二さんであったり、セゾングループの。あるいはダイエー中内功さんであったりが「欲しい時に、欲しいモノを、欲しいだけ手に入れられる、欲しい人が」そういうのが流通だ、って言ったんです。でも私達もなかなか贅沢だし甘えてるので、ついついそれは最初は嬉しいと思っていても、そのうちに、ん~ん、もっともっときめ細かく頂戴よ、ってなるとどんどんどんどん流通の人が過剰サービスになってって、それがまぁあのー、セゾングループであったりダイエーであったりの苦しい局面になっちゃった、で今逆に言うとほら、安いだけがいい、みたいな具合になってきてるんですけども、んー、それはあのー、コムデギャルソンの川久保玲さんが言ってんだけど、やっぱり良い意味での緊張、っていうんじゃなくて意識を持って洋服を着る、というようなことが時代とか社会に流されないことですよ、って最近繰り返し仰っててね。

[今井]んー。

[田中]その意識は我々も必要でしょうね。

[今井]あのー、ね、80年代というと携帯も無かったですし、ネットも無かったですけれども。

[田中]そうですよね、ホントに。公衆電話からガールフレンドに・・・。

[今井]そうですよね(笑)。

[田中]テレフォンカードも無いような時代ですからね。

[今井]えぇ。

[田中]この、やっぱり30年というのも大変な変化で・・・。

[今井]まぁ、そういうのも含めてですね、最後に改めて伺いたいんですけれども、まぁ今から33年後、まぁ30年後ですね、2030年、日本どうなってるでしょうかね、田中さんの予見を伺いたいんですけども。

[田中]うん。ですからその意味ではやっぱり発想の転換を量の拡大や維持から質の充実に大胆に変えないと、なかなか逆ピラミッドのニッポンの人口構造のなかで、今生まれてくる人達、今若い人達は、大変に苦しい感じになっちゃいますよね。それはやっぱり政治や経営者やリーダーの責任だと思いますね。

[今井]TokyoFm Time Line、今夜は「『なんとなく、クリスタル』が予見する2030年の世界」にフォローしました。

*

[今井]Tokyo Fm Time Line、お送りしてる曲は、cero -「わたしのすがた」です。さぁ続いてはあらゆる書籍から今を考察する 【書考空間】。この 【書考空間】のサイト
では番組スタッフ・ライター・丸善書店ジュンク堂書店の書店員がお薦めする書籍をアップしております。えー例えばTokyoFM報道情報センター横山総合デスクが紹介しているのは、呉智英・適菜収「愚民文明の暴走」、えぇこちらの書評によりますと、「馬鹿は民主主義が好き、キリスト教と宗教の本質、B層社会の反知性主義、等対談が6つの章で構成されている。冒頭でポピュリズムは煽る側、衆愚政治は煽られる側と呉氏が切り出し、適菜氏が民主主義という制度に疑念が向かうようになってきた、といきなりズバりと始まる。対談本はあまり売れない・ウケない、という話を聞いたことがあるが、本書は少なくとも誰でも参考になる部分が全編に散りばめられている、とあります。えぇ、詳しい書評は番組のwebサイトをご覧下さい。

[今井]それでは今夜ご紹介する本の扉を開いてみましょう。

[ナレーション]話題の新書から文庫まで、あらゆる書籍から今を考察する【書考空間】。

[今井]さて書考空間、今夜は田中さんに一冊お薦めの本をご紹介して頂こうと思うんですが。

[田中]はい。

[今井]なんという本をご紹介頂けるでしょうか。

[田中]えぇー、あの、「戦う石橋湛山 ―昭和史に異彩を放つ屈服なき言論 」というですね、あのー、半藤一利さんという、ま、あの「文藝春秋」の編集長もされた作家の方が1995年に出されてる本で、今あの、東洋経済新報社からも新装版で出てますね。

[今井]はい。

[田中]うん。

[今井]「戦う石橋湛山」、これ石橋湛山というと、まぁジャーナリストであり、総理大臣も務めた方でありますよね。

[田中]そうです。あのーまぁ、彼はあのー、今名前がでた東洋経済新報社で主幹や代表取締役をしてですね、そしてまぁ所謂帝国主義、日本の拡張主義というものに対抗して、その、平和的な加工貿易立国論っていうのを唱えて、あのー、台湾や朝鮮や満州をむしろ放棄すべきだ、ということを言った人なんですね。で、彼のその、「戦う石橋湛山」て、半藤さんは非常に共鳴をしてお書きなんですけど、このー、戦争に日本がいくときにどういう具合だったか、と。あの、まぁ日本が敗戦をした後、あのミズーリ号の甲板で降伏文書の調印をする時に全権を務めた、あの、重光葵という、まぁあの「葵」と書くんですね。

[今井]はい。

[田中]彼が、そのー、戦争の前に日記で書いてることがね、「日本国民はみな戦争を忌避していることは事実である」と。「にもかかわらず議会は競って軍部の意を迎え、新聞は命令のままに論説記事を書く」ってあんです。で、このー、半藤さんは最初、いや、そのー、当時の昭和天皇ですね、天皇陛下がそのー、いわゆる松岡洋右全権の下ですね、国際連盟を脱退するわけですよね、その時に日本の、その、新聞がみんなすごい具合になってる、と。つまり、何を書いてるかっていうと「今もある全国紙」が軒並みですね、これはもう、脱退が成功であったか失敗であったかは別問題として既に断行したことなんだから、これ以外の方法が無かった、と思え、と。まぁ精神論になっちゃってる。

[今井]んー。

[田中]でむしろ逆に、陛下は、強いて脱退するまでも無かったんではないか、というふうに大臣に言ってんだけど、御尤もとは思いますが、脱退の方針で既に政府も全権も出処進退を・・・しておりますので、今になって方針を変更することは海外の諸国に対して、あのー、侮られます、と。これはやっぱりその、官僚社会がある・・・、至らなさを改むるに如くは無し、ってことが当たり前でね、君子豹変す、ってのは、その、国民に対して困るような君子豹変は困んだけども、まさに、僕、国益って「国民益」だと思うんですよ。

[今井]「国民益」。

[田中]はい。ところがいつの間にか、国会議員益であったり国家公務員益であったり国会議員後援会益であったり、やたらと三セクのように一杯真ん中に字が入っちゃってる、で、この非常にその、日本の新聞とかがみんなそういう状況だったってことを、あのー、半藤さんはお書きになられてんですけど、一方でね、半藤さんはあのすごい
ってのは、文藝春秋も含めて、そのー所謂、真珠湾攻撃の後のですね、もう4日後には、その、文藝春秋中央公論を始めとする日本編集者協会ってのが緊急会合を開いて、でこれはやっぱりその、あの、皇国将兵の忠誠・勇武に答え、って。で、国防体制の完璧を期す、ってもう、コロりと一夜にして・・・、戦争が終わるとみんな鬼畜米英!と言ってた先生が変わっちゃった、っていうけど、当時はそうだったんだと。だからその彼が言ってることは新聞は問わなかった、じゃなくて、問うべきなのに問おうともしなかった、で、そういう孤立外交や衝動外交善し!と言ってしまったのがメディアだったってことを自戒の念を込めてお書きなんですね。で、これは正に最初の重光葵が誰も戦争したいと思ってる国民は居なかったのにって、ところに繋がってくるし、同時に、僕、読んでて思ったのは日本の、所謂、あの、先の大戦て戦闘員が174万人亡くなってるわけですけれども、その60パーセントは、その、戦闘ではなくて飢餓で亡くなっているわけですよね。

[今井]はい。

[田中]つまり、ま、今あのー例えば、宅配便とか、ロジスティックスって言うけど、ロジスティックス=兵站というものが無くて、戦場に行って戦う前にみんな飢餓で亡くな
ってってしまっている、ということは、今の日本はどうなのかな、って。僕、3・11のときにね、すごく感じたことで、あのほら、えー、フクイチから20キロ30キロの人達は、屋内待機を命ぜられた・・・。

[今井]えぇ。

[田中]でも、食べ物は自分で確保しなさい、って確保出来る訳が無いじゃないですか。で僕はあの時に、亀井静香なんかと一緒に官邸に、ヘリコプターからどんどん物資を低空飛行して落としましょう、言ったら、いや、そういう、ヘリコプターは着陸しなければ物を下ろすことが出来ない法律んなってる、って言ったんです。でもそれこそ良い意味で君子豹変をすることが大事で、やはりこのー、半藤さんの本、そしてこのことをずっと言論人として戦った石橋湛山、その後首相にまでなる人ですけど、やはり「国民益」というのは果たして何なんだろうか?っということをですね、是非今、皆さんにあの、読んで頂ければな、と思います。

[今井]書考空間7月28日、今夜の一冊は田中康夫さんのお薦めの一冊、半藤一利「戦う石橋湛山 ―昭和史に異彩を放つ屈服なき言論」でした。

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[今井]時刻は19時48分になっています。えーここで電車情報をお伝えします、人身事故の為上野宇都宮間の上下線で運転を見合わせていたJR宇都宮線は先程運転を再開しました。えー宇都宮、上野宇都宮間の上下線で運転を見合わせていたJR宇都宮線は先程運転を再開しダイヤに乱れが出ています。ご利用の方はご注意ください。

[今井]さて、今夜のTime Lineは作家の田中康夫さんとお送りして参りましたが。

[田中]はい。

[今井]もうエンディングですけどもね。

[田中]あっという間でしたね。

[今井]ねぇ。あのー、私、田中さんといいますとね、その・・・。

[田中]ん?

[今井]『なんとなく、クリスタル』、33年後を予見していたということですけども、今ね色々こう、自治体で「ゆるキャラ」というのがブームになってますけども(笑。

[田中]あー、はい。はい。

[今井]「ヤッシー」がね、いましたよね?

[田中]あー、あれはあの・・・。

[今井]先駆けじゃないですか?そういった意味では。

[田中]タモリ倶楽部ソラミミスト安齋肇さんがデザインしてくれたんでね。うーん、そうですね、ちょっといつも早いんですね、

[今井]はっはっは、そうなんですよね。

[田中]あの時は逆にパフォーマンス、だとかってね県議会の人には言われちゃいましたけどね。

[今井]えぇ。えぇ。あのー、今ね、えーまぁそんな、色んなものを先取りしてる田中さんが今後もうちょっと詳しく、取り組んでみたいなっていうもの何かお在りなんでしょ
うかね?最後に・・・。

[田中]ま、あのー、だから、ある意味ではその、「33年後のなんとなく、クリスタル」ってのはこの、33年間の変化、そしてこれからの日本というものを、まぁ暗示するモノ、の作品として評価されればな、とは思ってます。

[今井]はい。えー、Tokyo Fm Time Line、月曜日の今日は田中康夫さんとお送りして参りました。田中さんどうもありがとうございました。

[田中]いえ、こちらこそ。

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