2016年10月26日 TOKYO MX「モーニングCROSS 田中康夫 同一賃金・同一労働の死角 アクセルとブレーキ」

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[堀潤]さあ、それでは田中さん参りましょう。

[田中康夫]はい。今日はですね、同一賃金 同一労働。まあこれ言われていますけど。実はこの問題の死角があるんじゃないかという事をあえてお話します。

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[宮瀬茉祐子]病気の治療と仕事の両立をどう支援していくかがテーマとなった24日の「働き方改革実現会議」の第2回会合で注目を集めたのは、有識者議員として参加する俳優の生稲晃子さんの提言でした。自身のがん治療の経験をもとに政府に対して具体的な支援策の案を示し、これ受け安倍総理は今後、政府として具体策を検討していく事を表明しました。

[堀]さあ、田中さん。

[田中]でね、今言われている事は「同一賃金・同一労働」。これは正社員と非正規労働の人の差があまりにあり過ぎるから埋めましょうと。そうすると、女性とか高齢者とかそういう人達も社会で働けるようになります。そうするとどうなるかと言うと、多くの世帯が収入が増えるので豊かになります。そうすると消費も上がるし収入が得られる事で出生率も上がるんじゃないかと。そうすると経済に好循環が生まれます、という事が言われている訳。

[堀]ここが「理想」の部分。

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[田中]と言われているのだがそうなの?っていう事で。ちょっと歴史を紐解くと、1947年、ですから戦後にですね「職業安定法」と。これはつまり何と言うと、強制労働とか中間搾取、いわゆる19世紀的なような企業とか、あるいはまさに廓に入れてしまうような、そうしたものを防止するんだと。だから労働者を供給するというような事業は禁止ですという事になった訳。

[堀]基本的人権が尊重される。

[田中]はい。で、それに対して1986年、バブルが始まるような時期ですね、「労働者派遣法」というのが出来た。これが何度か改正されてってんですけど、ですからこれはまさに、自民党政権が歴代、この「労働者派遣法」を行ってきたんですよ。

[堀]拡大していきました。

[田中]うん。で、それに伴って非正規の労働者が2000年、丁度私が知事になった年ですね、には33万人だったのが今はもう、昨年度で198万人と。200万人近くて、働いている人の37.5%。とりわけ2004年に製造業への派遣も解禁をしたと。他方で日本においては賃金水準が正社員の6掛けだと。で、ここにちょっと書いたんですけど、1978年の頃、私がまだ大学生の頃ですね、この頃はですね、こういう4分野、ビルの管理、情報処理、まだパソコンなんて無い時代で、でかいコンピューター。で、パーティ企画、ナレーター、コンパニオンとかモーター・ショーとか含めて、あるいは事務処理。この4分野だったと。それに対してその頃は、いわゆる小さな規模の人材派遣業者が4200くらいあった。で、これが先ほどの「労働者派遣法」が変わる形の中で、どんどんどんどん大きくなる。

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[田中]で、今や世界的に見ても日本が、まあ河合さんの方が詳しいと思うんだけど、こんなに派遣業というビジネスがある国ってのは不思議なくらいですよね。

[堀]生業がね、生業じゃないっていう。

[田中]じゃあね、何を申し上げたいかって言うと、同じ仕事に対して同じ賃金であるって事は、これはね、本来否定すべき事ではないと思います。でも、今まで日本は終身雇用とか年功序列だった。これはネガティブ、マイナスなんだと言われている。でもね、職務給と職能給というのがあるんですよ。

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[田中]つまりヨーロッパにおいては基本的には職務給、つまり仕事の内容に応じて採用されて賃金も決まるから、正社員やパートにかかわらず同一賃金・同一労働を適用しやすい訳です。それでも正社員とパートでは8掛けくらい。じゃあ日本は何かというと、今までは、もちろん年功序列・終身雇用が良い悪いあるかもしれないけど、職能給。つまり同じ仕事をアマゾンの倉庫で物を動かすという事だけではなくて、係長になりますとかいうだけじゃなくて、あるいはその人の仕事がどのくらい出来ているか。もちろんそれをジャッジする上司が公正でなかったり、視点が違えば大きな問題があるんだけど、少なくとも能力や成果に応じて職能給というのがある訳です。

[堀]これ、僕が会社員時代もやっぱり給与明細にははっきり職能給の欄があって、そこが人とランクが変わってくるんですよね。それがだから良い上司に巡り合えたらやる気も出るし、そうじゃないみんなは給与が上がらない上にモチベーションも下がるみたいな。

[田中]だから経団連の榊原会長が「日本の労働慣行は競争力の源泉だ」と。でまあ、もちろん、製造業の方だから。でもこれ、ネガティブに捉える人もいるかもしれないけど、一つ大事な事は、マイスターとか職人という言葉があるように、段々、先輩から学んで試行錯誤をして、良い仕事、素晴らしい物を作っていく。でも職務給だけになってってしまうと、「その時間居てやれば良いでしょ。その時間になったら帰りますよ」ってなってくる訳。で、先ほどここにバラ色の世界のようなものを見せたんだけど、これを取ると、つまりここで同一賃金・同一労働の場合に考えなきゃいけないのは、アクセルとブレーキなんですよ。

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[田中]今ね、非正規を増やす政策をずっと歴代の政治は行ってきた訳でしょ、「労働者派遣法」によって。これ「アクセル」ですよ。でも一方で、そこの格差の是正をしますと。良い「ブレーキ」のようにも見える。でも、そうすると長時間労働の是正、今言われているようにしなきゃいけない。そうするとパートの人はその時間で帰りますよと。そうすると正社員の人は、もしかしたらもっとサービス残業的なものが増えてしまうかもしれない。

[堀]そうですね。

[田中]正社員は恵まれてる人だからって今まで言われてきたんだけど、ここの職務給と職能給というところをきちんと分かり易く説明をして、だからこういう風に同一賃金・同一労働だけじゃなくて、こう変えていきますよっていう事を言わないと、結果としてまさに一部の1%、もしくは5%の人達だけの社会になってってしまうかもしれない。

[堀]やっぱりね、市場マーケットとかと向き合う時には性悪説に立たないと、本当に安易な方に流れていっちゃう。弱い方にシワ寄せ来ちゃいますね。

[田中]だからこの職務給と職能給というところが何故か殆どメディアでも、あるいは政治の世界でも議論されてないというところは僕は歪みがより大きいんじゃないかと。

[堀]是非皆さん、ポイントです。ありがとうございました。

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