2016年11月08日 TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線 今朝のニュースピックアップ 米大統領選まもなく投開票 電通強制捜査 同一賃金・同一労働の死角 職務給・職能給をめぐって」 電話ゲスト 田中康夫

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(今朝のニュースピックアップは06:03頃~)

[生島ヒロシ]さあ、今日のニュースピックアップは作家の田中康夫さんにお話を伺いますね。康夫ちゃん。
[田中康夫]はい。おはようございます。
[生島]おはようございます。NYマーケット反発してますね。322ドル上がって、ナスダックも。
[田中]今ね、生島さんが仰ったようにクリントン女史になるからだと言われているけれども、でも実際、クリントン女史ってほら、生真面目な弁護士みたいなところがあるからさ。
[生島]んー。
[田中]逆にね、背後に居るのは巨大金融機関や巨大軍需産業やね、巨大製薬会社だから(笑)。

[生島](笑)。
[田中]どうなのかっていうのはあるよね。確かにね。
[生島]ありますよね。
[田中]うん。

[生島]さて、今日はですね、大分、新聞の社説でも取り上げられておりますが、「大手広告代理店電通強制捜査」。やっぱりこの、長時間労働の問題も取り上げられてますね。
[田中]日本ってほら、労働生産性って、あのアメリカですら労働生産性3位なのに日本は21位(『労働生産性の国際比較』✽28ページ 図3-3)だっていうね。

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[田中]((国民)一人当たりのGDPもアメリカは4位なのに日本は18位で、殆どイタリア(19位)(『労働生産性の国際比較』✽26ページ 図3-1 図3-2)と変わらないって言うと、イタリアの優雅な過ごし方と日本のあくせくと、なんかアリとキリギリスって話は繋がんないな、と思うんだけど・・・。

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(公益財団法人日本生産性本部労働生産性の国際比較』)

http://www.jpc-net.jp/annual_trend/annual_trend2013_3.pdf

[田中]ただね、勿論、電通のこの問題というのをキチンと見てく必要はあると思うんだけれども、でもそうやって考えるとね、今ほら、「夜10時で電気消します」って言うけれど、夜中も(担当している)テレビやラジオ(の番組への対応)をちゃんとしてる人、もし、突発(の放送)事故が起きた時にね「(過労死等防止対策推進法に基づき)翌朝までお待ち下さい」って言うのかって話になっちゃうし。それともっと言うと、なんかやたらと政治は力入れてやってんだけど官庁だって、霞ヶ関、みんな電気を夜10時以降だって灯いてる訳じゃない。
[生島]灯いてますよね(笑)。
[田中]そうすると、国会だって「夜10時以降はやりません」ってするのか、もっと言うと、国会議員の秘書の人とかね、どんどん、大変な事になるから。そうすると、じゃあ「10時には止めしょう」なんて話になれば、日本全体の生産性とか経済が落ちちゃうのかって・・・。勿論、過労死は勿論いけない事なんだけど、同時に仕事に関して「(社内で)言える体質」体質とかね。もっと言うと、CM撮影してたら多分、夜中撮ってますよね。
[生島]確かに。
[田中]そしたら翌日までインターヴァルで、例えば、何時間はおいてでないと仕事が出来ないとか、そういう法律の形にしないと。
[生島]一律じゃね。
[田中]・・・と思うんだけど。それともう一個ね、僕、すごく思ってるのが、「同一賃金・同一労働」って言ってるじゃないですか。そうすると、それは正社員と非正規労働者の格差を埋める事で、そのようになると「女性や高齢者も就労し易い環境になる」から、「消費も出生率も上がるし経済に好循環が生まれる」ってな事を言ってるんですよ。

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[田中]だけどね、一方で言うと、日本は今までずっと「職能給」だったんですよ。
[生島]はい。
[田中]職業の「職」に能力の「能」。つまり、仕事の内容だけでなくて、係長とかって名前じゃなくて責任の度合いとか、その人の能力とか・・・。でもヨーロッパの場合ってのは「職務給」だったんですよね。つまり、その仕事に対して採用されて賃金も決まると。だから、正社員やパートに限らず同一賃金・同一労働を適用し易いっていう形だったの。で、そうするとね、例えば仮にファースト・フードで働いてます、と。じゃあ、同一賃金・同一労働ですって話になると、「その時間さえ過ごせば良いんだ」って話になると生産性は上がんないかもしれない。もしかすると、「ご一緒にポテトも如何ですか?」だけじゃなくて、小っちゃなお子さんが居て、夏の暑い日だったから「おいしいアイスクリームも出たよ」って言ってそれで売れたら、それをちゃんと上司がどういう能力かって評価してくれるようなシステムが出来てかないと、「同一賃金・同一労働です」って言うだけでいくと、「仕事が終わりません」、そうすると逆に「正社員の人だけサービス残業とか残業しなさい」みたいになってっちゃうからね。

[生島]んー。
[田中]ここがすごく大きな問題で、つまり、今までずっと日本も「職業安定法」ってので、所謂、中間搾取とか強制労働を止める為に労働者の供給事業禁止って、戦後出来たんだけど、1986年に「労働者派遣法」ってのが出来て、非正規雇用の人がどんどん増えてきた訳ですよ。

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[田中]すなわち、ずっと非正規を増やす政策を、実は歴代の政治はやってきて、一方で、格差是正をしましょうって、アクセルとブレーキみたいな話になっちゃって。長時間労働の是正をしましょうって言うと、逆に、今申し上げたように正社員の残業は増えてっちゃうみたいな話になるから。だから、同一賃金・同一労働っていう言葉のままでいくと、逆に、「みんな全員ロボットで働いてもらって1%の人だけ良い収入になれば良い」みたいな話になっちゃうから、今までの日本の年功序列ですよって話ではないんだけれども、「職能給」と「職務給」と二つあるんだよ、それをどういう風に選択しますか、みたいなところの議論になってかないと、同一賃金・同一労働っていう言葉の中で、終身雇用や年功序列じゃないんだよって言ってくと、本当に全員ロボットになってっちゃうってね、難しいところですよね、これね。
[生島]いや、本当に田中さんが仰った事は本当に大きな問題で、真剣に考えないととんでもない方向に行っちゃいますよね。
[田中]そうなの。だから、日本は2000年までは非正規の労働者って33万人だったと言われてるんですよ。ところが2004年に製造業へも派遣を解禁した訳。それまでは、例えば、ビルの管理とかね情報処理とかパーティ・コンパニオンとかだけだったのが。

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[田中]で、これによって所謂、派遣会社ってどんどん出来てきたら、2004年には140万人になって、2015年の段階で労働者の37.5%の200万人の人が非正規だと。じゃあ、そこをどうするのかを話さないで同一賃金・同一労働を言ってるから・・・。
[生島]おかしいね。
[田中]一部の、まさに現場の正社員の人にもっと残業が増えてっちゃう。だから、この電通の問題は電通の事だけじゃなくて、先ほど言ったように、徹夜仕事したらあと何時間経たないと次の仕事を出来ませんよ、みたいな法制をしてくって事が大事なんで、そこに議論がいくようになって欲しいなってずっと思ってますけどね。

[生島]その方が現実的ですね。
[田中]でしょ。だって本当に。じゃあ、(過労死等防止対策推進法を遵守して)夜中もテレビラジオ(の放送は)やりませんって話になってっちゃうから(笑)。
[生島]そういう事になっちゃうよね。
[田中]うーん。国会議員の(日夜・週末休みなしの)秘書の問題とか、だから、今、声高に言ってる人達は、本当にブーメランが政治に飛んでくるんじゃないかなって思ってるんですけど(笑)。
[生島]そうだそうだ。大変に参考になりました。ありがとうございました。
[田中]とんでもないです。
[生島]田中康夫さんでした。

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