2014年12月21日 BS日テレ「久米書店」 出演 壇蜜 吉田久恭(田中康夫著 『33年後のなんとなく、クリスタル』担当編集者・『文藝』編集長)

◎後篇はこちら

[吉田久恭]はじめまして。

[壇蜜]はじめまして。

[吉田]河出書房新社の吉田と申します。

[壇蜜]壇と申します。

[吉田・壇]よろしくお願い致します。(名刺)頂戴致します。

[壇]どうぞお掛け下さい。

[吉田]今日ご紹介頂きたい本は、田中康夫さんの『33年後のなんとなく、クリスタル』という本です。

[壇」あれ、高橋源一郎さんとなかにし礼さんの間にに私がいる。

[吉田]そうなんです(笑)。

[壇]なんかフォアグラとトリフの間にピータンがいる感じですね・・・、もう宣伝したので。

[吉田]そう仰らずに、是非もう一度。

[吉田]実は、1980年にこういった小説が出ています。これ田中康夫さんのデビュー作で、1980年の日本社会が一番豊かだった時期に大学生だった女性である「由利」っていう人が主人公の、になっている小説なんです。この小説のなかで「由利」っていう女性は学生でモデルをやってるんです。で、彼女は10年後にも自分はモデルを続けていられたらいいな、っていう「由利」がそう思う場面でこの小説は終わっているんです。その「33年後の」物語が、この『33年後のなんとなく、クリスタル』という小説で。

[壇]どのような内容の本になりますか?

[吉田](紹介文朗読)

「極上の小説と438の軽妙な”註”で、日本社会のすべてがわかる、まさに小説の形で読むエンサイクロペディア。「もとクリ*」では、この国が最も豊かだった1980年に、日本社会はすでに”午後”であり、やがて来る”黄昏”を見通していた田中康夫。33年を経て彼はいま、ニッポンの未来に何を見るのか? *なんとなく、クリスタル」

[壇]なかにいる人たちが、かなり本当の・・・

[吉田]そうなんです!

[壇]・・・人っぽいというところが、ここの本の楽しむべきポイントだと思います。

[吉田]『なんとなく、クリスタル』の主人公である「由利」っていうのは実在の人物で・・・

[壇]はい。

[吉田]ある夏の日に、自分の小説の登場人物に出会ってしまった「作者」の恋愛であり、戸惑いであり、そういうものを描いたすごいロマンティックな小説でもある、で一方ですごいリアルな小説でもあるっていう、二つの面があるっていうのがこの小説の魅力じゃないかと思うんですけど。

[壇]ファンタジーの中の登場人物が、今生きてるこの実社会の人々達のコスプレを上手にして・・・

[吉田]あぁ、そうですね。

[壇]本の中で・・・

[吉田]そんな感じがしますね。

[壇]演じているような気がしたんですよ。

[吉田]それはすごくいい表現ですね。

[壇]ね。細部に至るまで細かい描写が書かれているということは、恐らく話したことのある素敵な女性なんだろうなって思ってすべてがタッチするのに相応しい温度を持っている気がしたんです。だから余計に「悔しいんです」よね。

[吉田](笑) 。でもそうやって、ここで行われている、まぁすごい豊かな食事であったり会話であったりっていうのは、本当は触れないものじゃないですか、でそれに壇蜜さんがなんか触ったような気持ちがして、こういう女性達も描いて素敵だなと思ってくれたら、一番この小説の愉しみ方としては相応しいのかなと思いますけれども。

[壇]そうですね、年代。「この年」に生まれたことをちょっと恨めしく思う、そういう風な後味が残ったときにわたし、この本を読んで良かったな、と改めて思ったんです。

[吉田]あぁ、そうですか。

[壇]是非置かせて頂きます。

[吉田]よろしくお願い致します。

[壇・吉田]ありがとうございました。ありがとうございます。

 

壇蜜・『33年後のなんとなく、クリスタル』朗読)

 

「『微力だけど無力じゃない』って

言葉を信じたいの」。

醍醐での由利の科白が頭を過ぎる。

「黄昏時って案外、好きよ。

だって、夕焼けの名残の赤みって、

どことなく夜明けの感じと似ているでしょ。

たまたま西の空に拡がるから、

もの哀しく感じちゃうけど、

時間も方角も判らないまま、

ずうっと目隠しされていたのを

パッと外されたら、

わぁっ、東の空が明るくなってきた

と思うかも知れないでしょ」

由利は悪戯っぽく微笑んだ。

 

[壇]もう何年も、暗闇しか見ていない。誰か灯りを。

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「註の新たな註」
「いまクリ」と「もとクリ」、その記憶の円盤が舞い続ける時空。

ようこそ現在から1980年の東京、そして日本へ❣
「✽文庫本化に際しての、ひとつの新たな長い註。」でお約束した「註の新たな註」は、
両書に登場する「字句の解釈」に留まらず、
高度消費社会の幕開けから現在に至る時代背景を、
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