【全文】(ラジオアングル)菊地流フリースタイル 仲宇佐ゆり


菊地成孔の粋な夜電波」(金曜深夜0時、TBSラジオ)はラジオの中のおもちゃ箱のような番組だ。「フリースタイルで構成作家も選曲家もいない。こんなラジオがあったら楽しいよな、ということを毎週考えてやっています」とジャズ・ミュージシャンの菊地は言う。
 基本は菊地の選曲による音楽とトークだが、自作のコントや、小説の朗読に曲をつけることもある。音楽理論の実演入り解説に、食に関する話を募り、その料理に合う曲を選ぶなど、自由自在。音楽のジャンルも幅広い。「今週とれたいい曲という感じで、1週間、常に頭の中で選曲している状態。楽しいですよ」
 型にはまらない分、準備には時間がかかる。番組冒頭に流れる菊地のモノローグは、2日前に約3千字の原稿を書き、テーマ曲の長さに微調整してからマイクに向かう。先週のヒップホップ特集では、オリジナルのラップを7回も録(と)り直していた。本人は遊び感覚だというが、手間もヒマも惜しまない。聴く側にとってはぜいたくな時間だ。
 次回は生放送で作家の田中康夫と選曲合戦をする。前回、田中は愛犬とやって来た。「ややもすると圧倒されて終わってしまいますから、いろいろ突っ込みつつ、田中さんの新しい面が見られたら、と思っています」
 (ライター・仲宇佐ゆり)