[堀潤]さあここからはみなさんの持論を展開するオピニオンCROSS neoです。時間もありませんからどんどん参りましょう。田中さんテーマの発表をお願いします。
[田中康夫]フリップは3枚まで作成してくれるので(このフリップは)私の手書き。タイトルは「治水・治山に王道なし ローマは一日にして成らず」です。
[堀]はい。
[宮瀬茉祐子]日本各地に大きな爪あとを残した台風19号の直撃から10日あまりが経っていますが、いまだに復旧が進んでいない地域も多く残されています。そんな中、先週、群馬県八ッ場ダムの満水や千曲川の堤防決壊により長野市にあるJR東日本の車両基地が水没するなど、治水対策において行政機関に大きな課題を残しました。
[堀]田中さんは常々、治水のあり方については議員時代からも持論を展開されてこられた。
[田中]我々も、爪切ったりあるいは体を洗ったり、つまりどんなに綺麗な洋服着てたって髪の毛もボサボサ、ブラッシングもしてない、誰も喜ばないでしょ。だからそれが治水の基本なんですよ、小まめな。で、何が申し上げたいかっていうと、いわゆる、スーパー堤防ってのは、あれ、万里の長城でしょ?だって何百年もかかりますと。何百兆円もかかりますと。で、どうもこれは分が悪いっていう事で出てきたのが、八ッ場ダムマンセー論だったわけだ。でも、ようやくみなさんが分かったのは、全然溜まってないところが2日間であそこまでいっちゃったと。6割7割溜まってたら緊急放流したんでしょ?と。あるいは、67年間かかってできたわけよ。じゃあその間に何をやってたのか?と言ったらそれは(まずは必要なのは爪を切ったりブラッシングしたりの)、堤防の補修だったり浚渫であったり、護岸の強化であったり森林整備でしょ?って話です。でまあ、私が知事をやっていた(長野市の善光寺の真上の)ところに浅川ダムという計画がありました。この中(フリップ)に書かなかったんだけれども、2001年2月20日に『「脱ダム」宣言』を出した直後に国土交通省から来てた土木部長が「仰る通り浅川ダムを造っても、千曲川との合流部分の氾濫は防げません」って県議会答弁をしたわけ。
✽註
国交省から出向していた土木部長は「浅川の中下流域は確率論的にいきますと(その後に計画変更した常時放流する流水型の穴あきではない通常の堪水型ダムを建設した場合に)30年に1回の洪水まで耐えられるような断面で今鋭意整備を進めております」
と答弁。
即ち今回のような100年確率を優に超える降雨の場合には当初に計画していた堪水型の浅川ダムが存在しても「長野市の檀田地区、吉田地区、風間地区、長沼地区等、長野市の東側一帯が水につかりますし、さらに豊野町の浅野地区の市街地の一帯も冠水する」と答弁。
[堀]んーん。
[田中]じゃあおかしいよね?という事で、私は・・・、この浅川ダムってのは(建設予定地の真下に)活断層がある場所なんだ。で、まだ(影も形も着工すらしていないし)できてなかったわけよ。なのでこの(地図の中の北陸新幹線と記されている上下流の)天井川になっていたところを、(現在は並行在来線の「しなの鉄道北しなの線」よりも浅川が上を流れていた)信越線とのところを3キロ区間、天井川を改良した、護岸の補修もした、じゃあ次何やりましょうか?と。じゃあここに排水機場って書いてあるけど、この先に立ヶ花狭窄部って書いてある、ここは川幅が200メートルなんです。
[堀]狭い。
[田中]今回決壊した場所は800メートルあるんです。つまり、向こうで糞詰まりになってるから、渋滞してる電車が行列するようなものだったわけ。だから私は、何をしようか?と。じゃあこの周りの、りんご畑のところを遊水地として契約しましょうと。何かある時にはここに水を溜めさせて頂きましょうと。
[堀]逃がすわけですね。
[田中]あるいは立ヶ花の先まで放水路を造りましょうって事も河川改修をした上で言ったんだけれども。
[堀]土木部長は何故、ダムは機能しませんと県議会で答弁されたんでしたっけ?
[田中]まあ、正直な方だったんだ、国交省から来た人。
[堀]へー、ああそうですか。
[田中]で、なにかったらね、決壊した場所とかは穂保(ほやす)地区って言うの、稲が生る場所。あるいは新幹線の車両基地は赤沼(地区)って言うんです。で、この全体が長沼(地区)って言うんです。
[堀]ああ、そうか・・・。
[田中]名は体を表すで、国会の下の(外堀通りの交差点の)溜池だって水が溜まる場所っていう事でしょ?
[堀]なるほど。
[田中]だから(地元の地域住民の)みんなは実は、ダムを造ってって最終的に言った人たちも、新幹線の車両基地(建設計画)が(長野)オリンピックをやる前(に持ち上がった時)、私が(知事)就任前、みんな猛反対したわけ。だって洪水になったら1週間水溜まる場所ですよと。
[堀]あっ、そうか。その時にはもう・・・。
[田中]そういう遊水機能の田畑のところをどうして(新幹線の車両基地に)するんですか?と。そうしたら国交省というか、当時の建設省は、分かりましたと。じゃあこの浅川ダムという眠ってた計画を復活させるから大丈夫ですよって言ったの。ところがその後、土木部長は、国交省から来てた人は正直に、いやいやさすがに(浅川ダムを造っても、国の千曲川河川事務所が管理している改良工事が進んでないから浅川中下流域の洪水を防ぐのは)無理なんですと。じゃあなんでこのダム計画が(ゾンビのように)出てきたかって言うと、オリンピックのボブスレーとリューズの会場に行く為のトンネルと橋のお金が出てこねぇと。じゃあダム計画復活させて、ここに書いたように結果的に総事業費380億円で私の後に(旧通産省と総務省出身の2人の天下り知事が穴あきダムを)造り始めたんだけれど、200億円既に(僕が就任した2000年10月には)使い切ってたのよ。
[堀]ああ・・・。
[田中]これ本末転倒でしょ?と。
[堀]いわゆる「付け替え」か・・・。
[田中]オリンピック、いいよ。だったら道路局の予算でやれば良いのに、みんな当時の河川局、今の水管理・国土保全局というところの予算の中で八ッ場でも道路から民家の立替から全部、住宅局や道路局の予算じゃないんですよ。ここを僕は変えなきゃいけませんよっていう事を言ってるわけ。
[堀]そうか。でも新幹線の車両基地を造られる時に地元で指摘された方々がいらっしゃるという事はですよ、やっぱりきちんとした治水をしたいという方々がたくさんいらっしゃるわけでしょ?
[田中]そう。そして今回もここで、つまり、内水氾濫と言って千曲川が河川改修をしてないから、狭窄部があるから、千曲川の川の水が逆流しちゃうからという事でこの排水機場を閉めちゃうんですよ。排水機場で普段は千曲川にポンプで流してるのを止めちゃうわけ。その事によってこの辺りも濡れた。
[堀]なるほど。
[田中]そして新幹線の基地を(飛行機を羽田、成田から千歳に避難させたのに上田、高崎等の高架駅に移動させなかったJR東日本)、当時の日本鉄道建設公団と運輸省は、この場所だって言ったんだけれど、この場所は今回も5メートルぐらい越水してるでしょ。ハザードマップ上で最大10メートルと言われてる場所なわけ。
[堀]田中さん、こういう「エラー」を恐らく各地の自治体でずっと続いてきたんだと思います。
[田中]日本は全部活断層の下だ。でもだったら、僕がこの時言ったのも、我々がやった事の後に国は新幹線の基地の下に地下貯水場を造りましょうと。今、地下神殿みたいなもの(首都圏外郭放水路)を素晴らしいって言い出してるでしょ?
[堀]ええ。
[田中]それも嫌ですと言ったわけよ。
[堀]当時?うーん・・・。
[田中]お金が無いかなんだったのか。
[堀]東京にはあれほど立派なものを造るのに、地方にはそうした設備・工事というものは後手に回されますよね。
[田中]そゆこと。まあだから負け惜しみでもなんでもなくて、やっぱりなんていうのかな、治水なのに今、水管理・国土保全局なの。水は管理できないんですよ。
[堀]そうか・・・。
[田中]私ここで書いたように、まさに水こそネットワーク社会なんですよ。全部繋がってるんだから。道路と違うの。
[堀]仰る通り。
[田中]地域分散型で行いながらネットワークで考えるって事だと私は思ってます。
[堀]福島さん、今のお話いかがですか?
[福島香織]やっぱり今回の水害って人災だったなって。多分、地方地方で実は分かってたとか、こういうやり取りがあったって全部掘り起こしたら結構ね、調査報道とか、相当いろんな事が分かってくるんだなと思いました。
[堀]何から手をつけますか?省庁改革ですか?それとも自治体の・・・。
[田中]いやいやだから、それはやっぱり、私が河川改修をしても、国土交通省を説得できなかったのは私の力不足かもしれない。でも国土交通省が、今回も千曲川事務所が、川は難しいんですってコメントを出してんの(笑)。
[福島](苦笑)。
[田中]違うでしょ。あるいは堤防も、前も言ったように今回も緊急堤防って、鉄板使ったでしょ?ヨーロッパやアメリカのように鉄板とかソイル・セメントという、砂とセメントを一緒にしたようなもので堤防を補強しないから、土と砂だけだから液状化してるわけでしょ?
[堀]分かりました。
[田中]大本の根底を、オツムを変えて欲しいなって私は思う。
[堀]ここでね、やはりあやふやにしてしまうとまた命が失われますよって言う事ですからね。
[田中]そうですよ。
[堀]ありがとうございました。
Vol.616「「思想・信条」がYa‘ssyと異なると「日経」で「告解」学習院大学長もシャッポを脱いだ「サンデー毎日」実践的「治水・治山」原論!ダム脳なリバーフロント研究所が登場の痛い「文藝春秋」w」
19/12月号 憂国呆談 season2 volume113◆ソトコト
消費税の軽減税率から、
台風15号の対応、
グレタ・トゥンベリさん、
日本の環境政策と農畜産品の行方まで。
水害は脱ダムのせいなのか!?
田中康夫の『実践的治水・治山』原論 まとめサイト始動しました!
「サンデー毎日」2019年11月17日号
「水害は『脱ダム』のせいなのか❣田中康夫の実践的『治水・治山』原論」(※画像をクリック!)
✽治水・治山のあるべき姿を更に具体的に加筆した原稿はこちらです。
水害は『脱ダム』のせいなのか!? 田中康夫の実践的『治水・治山』原論「サンデー毎日」2019年11月17日号(11月6日発売)
リード文「しなやかな是々非々」
甚大な被害をもたらし、河川氾濫の恐ろしさを知らしめた台風19号。安倍晋三首相は防災の観点から八ッ場ダムを称賛し、また、「脱ダム」が水害を招いたという声もある。だが果たしてそうか? 長野県知事時代から、河川のネットワークを見極めた「治水」を思索、実践してきた田中康夫による真の国土強靱化論。
本文
「『土堤(どてい)原則』は、断じて譲れません」。
河川局を改組して2011年7月、国土交通省に誕生した水管理・国土保全局の官僚は拒み続けました。土と砂利以外の「不純物」が堤防内に混じるのは馴染(なじ)まない、と真顔で。
鋼鉄(スチール)も混凝土(コンクリート)も他の公共事業では「不純物」どころか必須の素材。コンクリート壁の隙間(すきま)から水が浸潤(しんじゅん)して平時から内部が“液状化現象”に陥りがちな堤防を補強すべく、両肩から基礎まで鋼矢板(こうやいた)を縦に2枚打ち込む護岸工法の事業化に向け、僕が求め続けた調査費が2011年度=平成23年度予算に初計上された後の遣り取りが冒頭の発言。
「決壊した箇所に仮堤防を設置する緊急復旧工事と、本格復旧工事の工法の違いを、河川行政に疎(うと)い我々に説明頂けますか?」。
民主党政権の一翼(いちよく)を担っていた国民新党代表の亀井静香氏と共に新党日本代表の僕が尋ねるや、“論理的で科学的な講釈”を垂れました。「緊急時には鋼鉄の使用も止むを得ないが、恒常的に駆体(くたい)として採用するのは好ましくない」。
翌2012年12月の総選挙で僕は敗退。複数の製鉄会社が導入に向け勉強会を立ち上げていた「鋼矢板工法」の調査費を、国交省は打ち切ります。
本誌の連載「ささやかだけど、たしかなこと。」(2015年10月11日号)で僕は、「鬼怒川(きぬがわ)決壊の「真犯人」は誰か!? 予防医学としての治水こそ新しい公共事業」と題し、新聞の「大本営(こくどこうつうしょう)発表」“コピペ”記事を再録しています。
「関東・東北豪雨」の2週間後、「締切堤防」と称し決壊箇所200mに「高さ4mの鉄製の矢板」「2枚の間に土砂を敷き詰め」、「鋼矢板工法」で仮堤防を設置した関東地方整備局はその1ヶ月半後、「土堤原則」に基づく「本格復旧の堤防建設工事に着手」と。
堤防を越えて川の水が溢(あふ)れ出る「越水(えっすい)」。堤防そのものが壊れる「破堤(はてい)」。一度(ひとたび)決壊するや溢れる量と流れの速さは激変し、物的被害も人的被害も桁違いとなります。破堤に至る原因の8割は越水です。河川の猛威の悲劇は、同じ場所で繰り返される蓋然性(がいぜんせい)が極めて高いと理解する米国や欧州、そして韓国では過去の決壊箇所の護岸強化に鋼矢板工法、或(ある)いは土砂とセメントを混合して固めたソイルセメント工法を導入済み。
翻(ひるがえ)って日本。今回の台風19号ハギビス襲来で堤防決壊が71河川140箇所に及んでも猶(なお)、後述する千曲川の決壊箇所を筆頭に鋼矢板工法は飽く迄(あくまで)も「応急復旧」の位置付けです。謂(い)わば「天動説」に胡座(あぐら)を搔(か)いて、「地動説」を小馬鹿にする浮かれポンチ状態。
「意識高い系」な面々が「首都圏の救世主」と称揚する、総事業費5320億円の八ツ場(やんば)ダムが利根川水系で役割分担するのは、全体の僅(わず)か1%に過ぎません。利根川支流の吾妻川(あがつまがわ)に巨大ダムを建造せねば2千名近いカスリーン台風の御霊(みたま)は報(むく)われず、と計画が発表されたのは今から67年前の1952年=昭和27年。
一万歩譲って八ツ場ダム建設が「必要悪」だったとして、河道掘削(かどうくっさく)と呼ばれる川底の浚渫(しゅんせつ)に投じた67年間の費用は如何程(いかほど)かと河川管理者に質(ただ)しても、該当する記録は見当たらずと言葉を濁すでしょう。
我々が手足の爪を切るのと同様、「減災」の肝心要(かんじんかなめ)は維持修繕。なのに財務省が「部・款・項・目・節(ぶ・かん・こう・もく・せつ)」と細分類する予算体系の治水の項目に「浚渫」は存在せず。
重機を用いて1㎡1万円強で実施可能な浚渫こそ、地元の土木建設業者が胸を張って従事可能な地域密着型公共事業。なのに国も大半の自治体も予算を別立てせず、現場の建設事務所の人件費等を「維持修繕費」に一括(ひとくく)り。護岸の補強、上流域の森林整備と並んで治水の基本たる浚渫は全国津々浦々で滞っています。
世界的趨勢を踏まえての「脱ダム」宣言
県土面積が全国4位の信州・長野県の知事時代、台風一過の秋季(しゅうき)に土木部・農政部・林務部の技術系職員を総動員して県管理の河川を総点検。浚渫の補正予算を県独自に組みました。3千万円にも満たぬ金額なれど、確実に治水に寄与。
「長野冬季五輪」から2年8ヶ月後の2000年10月に就任した僕は翌年2月、「長期的な視点に立てば、日本の背骨に位置し、数多(あまた)の水源を擁する長野県に於いては出来得る限り、コンクリートのダムを造るべきではない」と「脱ダム」宣言で9つの県営ダム計画の中止を打ち出します。
「治水・治山に王道なし」。「河川こそ、ネットワーク社会の象徴的存在」。「造るから治す・護る、そして創るへ。」と主張したのは、世界的趨勢(すうせい)を踏まえての決断でした。
1993年にミシシッピ川流域に甚大な被害を齎(もたら)した洪水を分析した米国陸軍工兵隊(アーミー・コープス・オブ・エンジニアズ)は、「洪水調節用構造物」としてのダムが却(かえ)って被害を増大させた側面を指摘し、避難プログラムの作成、氾濫原(はんらんげん)での土地利用の制限を含む総合的な洪水対策への大転換を促します。その翌年、ダニエル・ビアード内務省開墾局長が、「合衆国に於けるダム開発の時代は終わった」と日本も加盟する「国際かんがい排水委員会」で講演。
佐久間ダムを始めとして世界中のダム建設に資金提供してきた世界銀行も、「大規模ダム建設の巨額予算は往々にして当初計画を超過。調査対象81ダムでは堆砂(たいさ)が原因で当初の半分以下に保水機能が低下。ダムの耐久性の見直しは必至。洪水対策のあり方も抜本的な変更を迫られている」と知事就任直後に発表。
日本国内でも同年8月、宍道湖(しんじこ)・中海(なかうみ)の淡水化に851億円を投じた干拓事業を始め、計223の公共事業の中止を自由民主党政務調査会長が発表。採択後5年以上経過しても未(いま)だ着工せぬ事業。完成予定を20年以上経過しても竣工(しゅんこう)に至らぬ事業。実施計画調査に着手後10年以上経過するも未採択の事業。現在、休止=凍結中の事業。その4条件に基づく合理的判断です。
決断した亀井静香氏は、後(のち)に僕に述懐します。「方針を発表後、大抵抗する組織の中にも、これを入れて下さいと駆け込んで来る、心ある役人が居て、中止箇所数が増えたんだよ」。仮に後輩が、先輩の起案した事業に疑問を抱いても、中断・中止・廃止を進言する風土は霞が関に存在しません。官僚を闇雲(やみくも)に萎縮(いしゅく)させるのでなく、公僕(パブリック・サーヴァント)としての良心を覚醒させる触媒役の哲学が、政事屋(ポリティシャン)ならぬ政治家(ステーツマン)に求められています。
「脱ダム」宣言を発する3ヶ月前に僕は、美ヶ原に源を発する薄川(すすきがわ)の大仏(おおぼとけ)ダム建設計画を中止します。ダムなしでは松本駅前が水浸しになると旧建設省から出向の土木部長は力説。が、市街地を流れる薄川の夥(おびただ)しい分量の堆砂は“放置”された儘(まま)でした。
四半世紀も計画に翻弄(ほんろう)された建設予定地・入山辺(いりやまべ)地区での地元住民との車座集会後に即断するも、「素人知事」は些(いささ)か拍子抜けします。
「県政の停滞と混乱」を理由に知事不信任を1年8ヶ月後に決議する長野県議会、「民主主義の手続き」を重んじる記者クラブ加盟各社の誰1人として、強権的・独裁的だと抗(あらが)う素振(そぶ)りすら見せなかったのです。理由は簡単。前述の223箇所に含まれていたから。
河川はネットワーク社会の象徴的存在
他方、死者8千名の善光寺地震(江戸後期・弘化4年=1847年)の震央(しんおう)、1985年=昭和60年に26名の命を奪った地附山(ぢづきやま)地すべり災害の現場に近接する、活断層(かつだんそう)の真上に位置する浅川ダム計画を中止するお前は、無責任な「口舌(こうぜつ)の徒(と)」だと猛反発を食らいます。
冬季五輪のボブスレー・リュージュ会場へのループ橋と隧道(トンネル)の建設費を捻出(ねんしゅつ)すべく、眠っていたダム計画が“ゾンビ”の如(ごと)く復活。本体工事は未着工なのに総事業費380億円の半分以上を「転用」していた摩訶不思議(まかふしぎ)な公共事業。しかも驚く勿(なか)れ、「ダムを造っても千曲川と浅川の合流部一帯の洪水は防げない」と件(くだん)の土木部長は県議会で答弁するではありませんか。
その直截(ちょくさい)な答弁に補足すると、千曲川との合流地点には3基の排水機場が存在。増水時にはポンプで浅川から千曲川へと汲み出しますが、好事魔(こうじま)多し。国管理の千曲川の河川改修は遅々として進まず、千曲川の増水時には浅川への逆流を防ぐ為に樋門(ひもん)を閉鎖せねばなりません。行き場を失った浅川の水は「内水氾濫(ないすいはんらん)」と呼ばれる浸水を住宅地や耕作地に及ぼします。「洪水調節用構造物」は必要十分条件たり得ず。優(すぐ)れて河川は、ネットワーク社会の象徴的存在なのです。
閑話休題。首相官邸下の溜池(ためいけ)一帯はハザードマップで2m超の浸水深(しんすいしん)。今回浸水した長野新幹線車両センター一帯は長沼地区大字(おおあざ)赤沼(あかぬま)。千曲川の決壊地点は大字穂保(ほやす)。何(いず)れも水害の歴史を反映する地名です。
故(ゆえ)に、鉄建公団(日本鉄道建設公団=鉄道建設・運輸施設整備支援機構)とJR東日本(東日本旅客鉄道)の計画に住民は反対します。この田畑は、洪水になると1週間は水が引かない赤沼の遊水機能なのだと。長野市防災マップは車両センターの浸水を5m以上と表示。想定よりも低い4・3mに今回は留まったにも拘らず、羽田・成田から千歳へ機材を移動させた航空各社と異なり、上田、高崎等の高架駅どころか車両センター構内を走る本線の高架部分へと車両を移送させる鉄オタとしての愛情すら、JRという“疾走する駅前不動産屋”には希薄でした。
五輪前年の1997年10月開業が至上命令だった旧運輸省、旧建設省と長野県は、上流域に治水ダムを造れば解決すると甘言(かんげん)。それは地域住民を愚弄(ぐろう)する巧言(こうげん)に他ならず。有為(ゆうい)な県職員と共に僕は、浅川改修計画の優先順位を立案します。
先(ま)ずは浅川全域での河道掘削。天井川状態で信越本線の上を流れていた3km区間の河床を最大11m掘り下げ。完了後に現実的提案を行います。川幅が1000mを超える穂保地点で今回決壊したのは、下流5km地点の川幅210mと狭窄(きょうさく)な立ヶ花(たてがはな)での“糞(ふん)詰まり”が原因。その立ヶ花よりも下流に浅川から放水路、地下導水路を建設。車両センター地下に調節池を設置。一旦緩急(いったんかんきゅう)あればリンゴ畑を遊水地として活用する事前契約を農家と結ぶ。伝統的治水工法として濃尾(のうび)平野の木曽三川(きそさんせん)=木曽川・長良(ながら)川・揖斐(いび)川下流域に見られる輪中堤(わじゅうてい)、越水・破堤した場合にも被害の拡大を防ぐべく住宅地側に第2堤防=二線堤(にせんてい)を設けるetc. 国交省は尽(ことごと)く拒否しました。
僕の在任中に副知事を務め、浅川ダムの欺瞞(ぎまん)を熟知していた筈(はず)な総務省出身で現在の阿部守一知事は、「ダムなし」よりも「ダムあり」は浸水時間が1時間半も長引き、赤沼地区の浸水深は「ダムあり」で5cm上昇すると記された「報告書」を土木部から受け取ったにも拘らず浅川ダム建設に着手。3年前に竣工するも哀しい哉(かな)、浅川の内水氾濫は回避出来ませんでした。
河川管理者に、緊急放流の判断ミスや堤防決壊の監理(かんり)責任を刑事罰で問うた事例は皆無な「放置国家」日本。
「防災の日」に奇(く)しくも堤防が決壊し、翌日未明に民家19戸が濁流に呑(の)み込まれた1974年=昭和49年9月の多摩川水害。『岸辺のアルバム』(原作・山田太一、主演・八千草薫)が描いた不条理の「決着」も、地域住民が費用と時間を「自己責任」で負担する民事訴訟に委ねられたのです。
デジタル・データなど存在しなかった往時、マイホームと共に失った家族の絆(きずな)の写真は2度と戻って来ない。遣る瀬無い(やるせない)思いで狛江(こまえ)市猪方(いのがた)の市民が河川管理者の国を相手取った損害賠償請求訴訟。一審は原告の勝訴。控訴審で逆転するも最高裁が破棄。差戻控訴審で住民が勝訴し、判決が確定したのは1992年=平成4年12月。18年3ヶ月の歳月を要しています。
星霜(せいそう)を経て、国交省の外局に当たる気象庁が「平成30年7月豪雨」と命名した昨年の「西日本豪雨」。同省四国地方整備局は「大雨特別警報」発令後、愛媛県内の肱川(ひじかわ)に位置する野村ダムと鹿野川(かのがわ)ダムからの放流量を敢(あ)えて減らしてダム湖の貯水量を増やした後、満水状態となった両ダムから安全基準の6倍もの「緊急放流」を実施。下流域の西予(せいよ)市、大洲(おおす)市で9名が犠牲となりました。
名は体を表す。全長103kmの源流から伊予灘(いよなだ)の河口まで直線で僅か18km。蛇行する肱川の護岸補強も儘ならぬ中、前述の自民党・公明党・保守党連立政権時代の公共事業見直し勧告に含まれていた同水系の山鳥坂(やまとざか)ダム計画を、加計学園岡山理科大学獣医学部新設問題で耳目(じもく)を集めた、旧文部省官房長の加戸守行前知事を筆頭に今猶(いまなお)、切望する向きが存在します。
今回の台風19号水害でも、ダム湖に流入の全水量をそのまま下流へ流す緊急放流に至った東日本の6ダムは何れも、降雨前にダム湖の水位を下げる「事前調節」を実施せず。「その理由は現時点では答えられない」と同省河川環境課は取材に対して居直りました。「天動説」総本山の面目躍如(めんもくやくじょ)です。
戦後の森林政策の不作為を問う
一方、台風15号ファクサイが齎(もたら)した「千葉県豪雨災害」は、戦後の森林政策の不作為を体現しています。
江戸時代までは杉と赤松、黒松、そして檜(ひのき)を程良き塩梅(あんばい)で植栽し、手入れも怠らなかった山武(さんむ)市一帯。戦後造林の「山武杉(さんぶすぎ)」は荒廃し、根腐れならぬ溝腐れ病に見舞われていました。その倒木が大規模停電の原因です。
日本の国土の68・2%は森林。フィンランドに次いで世界第2位の森林率。その45%は戦後造林された針葉樹。間伐(かんばつ)が急務なのです。樹齢45年から60年の間に針葉樹は、2列残して1列伐採(ばっさい)する「2残1伐」列状(れつじょう)間伐を行なわねば、根元に太陽光が差し込まず、幹が太くならず、ひ弱な“萌(も)やしっ子”の儘。
森林が県土の8割を占める信州・長野県。森林整備の技術者を養成すべく僕は、「信州きこり講座」と銘打った100時限の無料講習会を開設します。間伐資格を取得した土木建設業者には入札参加資格を与え、森林整備予算も県独自に2・5倍へと増やし、旧態依然たる森林組合が牛耳っていた分野に切磋琢磨の精神を吹き込みます。
就任時、利息の返済だけでも1日に1億5千万円と破綻寸前だった県財政を、県民の理解と職員の協力を得て47都道府県で唯一、在任6年間連続で起債残高を減少させ、基礎的財政収支=プライマリー・バランスを連続黒字化させる一方、「地球温暖化を防ぐ森林づくりは百年の計」と「森林ニューディール」を掲げます。と同時に、人が人のお世話をして初めて成り立つ21世紀の労働集約型産業としての福祉・医療・教育の充実も図りました。
鋼鉄製ガードレールと同じ強度認証を受けた信州型木製ガードレールも、「森林ニューディール」の象徴的政策でした。
都道府県道も市町村道も、「造る」際には事業費の65%を国が負担。けれども舗装等の「治す・護る」費用は全額、地元自治体の負担です。大手製鉄会社の関連企業3社が製造する、行政用語で車両用防護柵と呼ばれるガードレールも全額地元が費用負担。地元への経済的還元は設置時の人足(にんそく)費用のみです。ならば、伐採・搬出・製造・設置の全工程を地域で賄う県産材のガードレールを実現出来ないだろうか?
八重洲、日比谷同様、嘗ては海の入江(いりえ)の湿地帯だった丸の内で1920年=大正9年に着工された旧丸ビル=丸ノ内ビルヂング。スギ科の落葉針葉高木メタセコイアが、9階建てビルを支える基礎でした。その一つが塩尻市の県林業総合センターに展示されており、僕は驚愕。つい先程まで生きていた樹木かと見紛う、光沢のある切株だったのです。
何れも県内業者が開発を担当した3タイプの信州型木製ガードレールは、HPに貼り付けた動画でご確認頂ける、つくば市の国土技術政策総合研究所での大型貨物車と乗用車の実車衝突試験を経て、2004年に実用化。知事を退任する2006年まで毎年、設置経費2億円で6箇所ずつ、木の温もりを感じさせる信州の新たな道路景観を生み出します。
「これぞ我々も胸を張れる公共事業」と現在は自民党参議院議員を務める、道路畑出身の佐藤信秋氏も国交省事務次官として予算化に尽力下さいました。
「田中県政の全否定」が基本方針な現在の長野県でも、軽井沢町の中軽井沢から千ヶ滝を経て鬼押出へと向かう県管理の国道146号線、上信越自動車道の群馬県に位置する碓氷軽井沢(うすいかるいざわ)インターチェンジから県境を跨いで県道92号線に入った場所を始めとする幾つかの地点で、地元紙「信濃毎日新聞」が黙殺し続けた県政改革の残滓(ざんし)に触れる事は可能です。
再び閑話休題。「減災」の肝心要(かんじんかなめ)は維持修繕。その「地動説」を、国交省の河川畑と同様に理解出来ないらしい農林水産省の外局に当たる林野庁。予算の92%は小さな沢に、「不純物」と国交省水管理・国土保全局が唾棄(だき)するコンクリートや鋼鉄を打ち込む谷止工(たにどめこう)、間伐完了後には再び下草が生い茂る作業道と異なり、山肌を抉(えぐ)り取る大規模林道に投じられています。
人件費が経費の7割を占める間伐や植樹の森林整備こそは疲弊した中山間地域に雇用と活力を生むのに、その予算額は全体の僅(わず)か8%。しかも今年度4661億円の林野庁予算は、「3・11」関連も含めて7兆3241億円もの国交省予算の16分の1。詰まり国交省の公共事業予算は森林整備費の195倍、と改めて知ると暗澹(あんたん)たる思いに駆られます。
とは言え、成功事例が無い訳ではありません。2013年の台風18号で京都市を流れる桂川(かつらがわ)の嵐山(あらしやま)周辺が氾濫し、両岸の10ha近くが浸水したのを教訓に近畿地方整備局は、こまめな浚渫や護岸の補強に加えて、渡月橋(とげつきょう)付近の河道掘削を観光客が減少する冬場の3ヶ月間に集中的に実施。上流の日吉ダムが1997年の運用以来初めて緊急放水ゲートを全開した昨年7月の豪雨でも事なきを得ています。
「真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず 村を荒らさず 人を殺さざるべし」の気概を抱いて田中正造翁が、渡良瀬(わたらせ)川流域住民の為に足尾銅山の鉱毒問題を明治天皇に直訴したのは今から118年前の1901年=明治34年12月10日。彼が還暦を迎えた年です。
千万人と雖(いえど)も吾(われ)往(い)かん。その「愛民心(あいみんしん)」に基づく彼の苦闘を忘れる勿(なか)れ。
人間の智能がAI=artificial intelligenceに優る唯一無比の心智(メンタリティ)は、「悟る」という営為。
それは、「科学を信じて・技術を疑わぬ」自称「意識高い系」な面々のアルゴリズム的思考では凡そ到達し得ぬ、「科学を用いて・技術を超える」心智でもあります。
「治水・治山に王道なし」。「造るから治す・護る、そして創るへ。」「『天動説』から『地動説』へ。」
富国強兵ならぬ富国裕民(ふこくゆうみん)の心智に基づく社会的共通資本のあり方が今、改めて問われているのです。
「水害は『脱ダム』のせいなのか」サイト
~ただ単にやめれば良いのでなく、新しい治水のあり方を示す~「脱ダム政策の哲学と実践」サイト
「間違いだらけの日本の治水・治山」サイト
田中康夫アドレス yassy@tanakayasuo.me
Vol.613「これぞ実践的「治水・治山」原論の決定版!「水害は脱ダムが原因!」と「天動説」を妄信するダム脳w反論できない「堀江貴文とNewsPicks」「上念司と虎ノ門ニュース」浮かれポンチな仲間達!」
「VERDAD」2019年11月号「田中康夫の新ニッポン論」Vol.76 「おもてなし」の「眠度」
2019年10月19日 TBSラジオ ナイツのちゃきちゃき大放送 田中康夫「守護神w八ツ場ダム」妄信者🙏🏼 痛い「ダム脳」 @takapon_jp 堀江貴文ちゃん 情弱 @NewsPicks の皆さんへ🚀治水・治山に王道なし🌳
田中康夫YouTube公式チャンネル「だから、言わんこっちゃない!」
Vol.610 治水・治山総集編Part2 森林率68・2%世界第2位 経費7割が人件費の間伐こそ地域雇用 なのに林野庁予算は国交省の16分の1 しかも間伐は林野庁予算の僅か8%
Vol.609「河川こそネットワーク社会の象徴的存在!「ローマは一日にして成らず」を勘違いする国土交通省水管理・国土保全局の唯我独尊な天動説w 間違いだらけの日本の治水・治山総集編Part1」
Vol.595 千葉停電問題「真の理由」はこれだ!
国土の66・5%を占める日本の森林は荒れ放題!
3千億円ポッキリ林野庁予算で森林整備は僅か8%
国交省6.9兆円、農水省3兆円ハコモノ大盤振る舞いニッポン
Vol.284 『相変わらずな「土木頭」に渇! 被災地「巨大防潮堤」は時代遅れな「万里の長城」だ!』
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間違いだらけの日本の治水・治山まとめサイト
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2018年7月12日「モーニングCROSS」「羊頭狗肉な日本の水管理・国土保全~造るから治す・護る、そして創るへ~」文字起こし・関連資料
2018年7月24日「おはよう一直線」「間違いだらけ治水・治山の改善点」文字起こし・関連資料
2019年9月23日 TOKYO MX モーニング #クロス 田中康夫 ワールドワイドスポンサーの🏉ハイネケンを国内で製造・販売するキリンビール涙目😹 #Tokyoインパール2020🏟 ラグビーW杯、食べ物持ち込みOKに 大会組織委が容認
2019年10月12日 TOKYOMX 田村淳の訊きたい放題!田中康夫 part 1 首都圏🌀台風直撃⚡間違いだらけな日本の治水&治山🗻
【10月20日・本日最も人気があった記事】 田中康夫氏 脱ダム批判受け反論 (田中康夫) https://blogos.com/article/411830/ [政治] #台風 #blogos
【10月20日・本日最も人気があった記事】
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田中康夫氏 脱ダム批判受け反論 (田中康夫) https://t.co/sHPsJFPuwp
[政治] #台風 #blogos
[堀潤]さあここからはみなさんの持論を展開するオピニオンCROSS neoです。時間もありませんからどんどん参りましょう。田中さんテーマの発表をお願いします。
[田中康夫]フリップは3枚まで作成してくれるので(このフリップは)私の手書き。タイトルは「治水・治山に王道なし ローマは一日にして成らず」です。
[堀]はい。
[宮瀬茉祐子]日本各地に大きな爪あとを残した台風19号の直撃から10日あまりが経っていますが、いまだに復旧が進んでいない地域も多く残されています。そんな中、先週、群馬県八ッ場ダムの満水や千曲川の堤防決壊により長野市にあるJR東日本の車両基地が水没するなど、治水対策において行政機関に大きな課題を残しました。
[堀]田中さんは常々、治水のあり方については議員時代からも持論を展開されてこられた。
[田中]我々も、爪切ったりあるいは体を洗ったり、つまりどんなに綺麗な洋服着てたって髪の毛もボサボサ、ブラッシングもしてない、誰も喜ばないでしょ。だからそれが治水の基本なんですよ、小まめな。で、何が申し上げたいかっていうと、いわゆる、スーパー堤防ってのは、あれ、万里の長城でしょ?
[田中]だって何百年もかかりますと。何百兆円もかかりますと。で、どうもこれは分が悪いっていう事で出てきたのが、八ッ場ダムマンセー論だったわけだ。でも、ようやくみなさんが分かったのは、全然溜まってないところが2日間であそこまでいっちゃったと。6割7割溜まってたら緊急放流したんでしょ?と。あるいは、67年間かかってできたわけよ。じゃあその間に何をやってたのか?と言ったらそれは(まずは必要なのは爪を切ったりブラッシングしたりの)、堤防の補修だったり浚渫であったり、護岸の強化であったり森林整備でしょ?って話です。でまあ、私が知事をやっていた(長野市の善光寺の真上の)ところに浅川ダムという計画がありました。この中(フリップ)に書かなかったんだけれども、2001年2月20日に『「脱ダム」宣言』を出した直後に国土交通省から来てた土木部長が「仰る通り浅川ダムを造っても、千曲川との合流部分の氾濫は防げません」って県議会答弁をしたわけ。
✽註
国交省から出向していた土木部長は「浅川の中下流域は確率論的にいきますと(その後に計画変更した常時放流する流水型の穴あきではない通常の堪水型ダムを建設した場合に)30年に1回の洪水まで耐えられるような断面で今鋭意整備を進めております」
と答弁。
即ち今回のような100年確率を優に超える降雨の場合には当初に計画していた堪水型の浅川ダムが存在しても「長野市の檀田地区、吉田地区、風間地区、長沼地区等、長野市の東側一帯が水につかりますし、さらに豊野町の浅野地区の市街地の一帯も冠水する」と答弁。
[堀]んーん。
ダムマンセー論者がクソ大マヌケなのは、仮にダム自体が未来永劫維持出来たとしても、ダム湖を形成する山々が保水能力を失った為に崩壊のリスクを孕んでる事をすっ飛ばしてぬか喜びしてるから。 https://t.co/O1W9wOgcOo
— RINN(林 康弘)【寸劇の暇人】 (@RINN0222) October 20, 2019
『「脱ダム」宣言』全文 (画像クリックで外部サイトに接続します)
2001年2月28日 県議会答弁録
http://yassy.system-a.org/keiei/seisakut/model/dam1.htm
2001年3月2日 県議会答弁録
田中さんをずっと支持していたので、このところ心がずきずきしていました。
— ペニーレイン (@torch2012) October 22, 2019
ダムさえあればの短絡論理ではないのだと彼はやはり言います。
もっともっと、考えていかなければなりません。
「環境に優しいダム」を標榜する浅川「穴あき」ダムの香ばしい言い訳が2葉のカラー写真入りで展開されている長野県土木部浅川改良事務所HP
https://www.pref.nagano.lg.jp/asakawa/jigyo/chisui/documents/reaflet2705.pdf
[田中]じゃあおかしいよね?という事で、私は・・・、この浅川ダムってのは(建設予定地の真下に)活断層がある場所なんだ。で、まだ(影も形も着工すらしていないし)できてなかったわけよ。なのでこの(地図の中の北陸新幹線と記されている上下流の)天井川になっていたところを、(現在は並行在来線の「しなの鉄道北しなの線」よりも浅川が上を流れていた)信越線とのところを3キロ区間、天井川を改良した、護岸の補修もした、じゃあ次何やりましょうか?と。じゃあここに排水機場って書いてあるけど、この先に立ヶ花狭窄部って書いてある、ここは川幅が200メートルなんです。
[堀]狭い。
[田中]今回決壊した場所は800メートルあるんです。つまり、向こうで糞詰まりになってるから、渋滞してる電車が行列するようなものだったわけ。だから私は、何をしようか?と。じゃあこの周りの、りんご畑のところを遊水地として契約しましょうと。何かある時にはここに水を溜めさせて頂きましょうと。
[堀]逃がすわけですね。
[田中]あるいは立ヶ花の先まで(地下)放水路を造りましょうって事も河川改修をした上で(国交省に5プランを提出して)言ったんだけれども。
[堀]土木部長は何故、ダムは機能しませんと県議会で答弁されたんでしたっけ?
[田中]まあ、正直な方だったんだ、国交省から来た人。
[堀]へー、ああそうですか。
[田中]で、なにかったらね、決壊した場所とかは穂保(ほやす)地区って言うの、稲が生る場所。あるいは新幹線の車両基地は赤沼(地区)って言うんです。で、この全体が長沼(地区)って言うんです。
[堀]ああ、そうか・・・。
[田中]名は体を表すで、国会の下の(外堀通りの交差点の)溜池だって水が溜まる場所っていう事でしょ?
[堀]なるほど。
#クロス 名は体を表す…地名や、土地の災害史を確認したい。また遊水池や信玄堤のような治水政策を見直したいところ… pic.twitter.com/NJuiZCgCwN
— naoki_yoshi_mot (@naokin_photo) October 21, 2019
[田中]だから(地元の地域住民の)みんなは実は、ダムを造ってって最終的に言った人たちも、新幹線の車両基地(建設計画)が(長野)オリンピックをやる前(に持ち上がった時)、私が(知事)就任前、みんな猛反対したわけ。だって洪水になったら1週間水溜まる場所ですよと。
[堀]あっ、そうか。その時にはもう・・・。
[田中]そういう遊水機能の田畑のところをどうして(新幹線の車両基地に)するんですか?と。そうしたら国交省というか、当時の建設省は、分かりましたと。じゃあこの浅川ダムという眠ってた計画を復活させるから大丈夫ですよって言ったの。ところがその後、土木部長は、国交省から来てた人は正直に、いやいやさすがに(浅川ダムを造っても、国の千曲川河川事務所が管理している改良工事が進んでないから浅川中下流域の洪水を防ぐのは)無理なんですと。じゃあなんでこのダム計画が(ゾンビのように)出てきたかって言うと、オリンピックのボブスレーとリューズの会場に行く為のトンネルと橋のお金が出てこねぇと。じゃあダム計画復活させて、ここに書いたように結果的に総事業費380億円で私の後に(旧通産省と総務省出身の2人の天下り知事が穴あきダムを)造り始めたんだけれど、200億円既に(僕が就任した2000年10月には)使い切ってたのよ。
田中康夫さんの #クロス
— naoki_yoshi_mot (@naokin_photo) October 21, 2019
治水治山に王道なし ローマは1日にしてならず
台風19号被災の千曲川流域の治水政策の歴史…
ここにも五輪のためという大義名分があった… pic.twitter.com/AmWBL2NJJo
以前のダム族。受注側もダム1件受注で10年食えると言われてた
— 海魂(うみたま) (@umi888umi) October 23, 2019
脱ダムで注目された康夫さんの真意は「無駄な公共事業を減らし必要なものにしっかり金をかけよう」だったはず
だが官僚がやったのは単価切下げ、下請け苛めと同じ
結果、総事業費は減ったが無駄な事業は減らなかった数字のマジック
「戦艦大和な八ツ場ダム😜万里の長城なスーパー堤防⚔」このタイトルに「絵文字」が多いと批判した、ホリエモン。田中康夫さんの本読んだことがないみたい。田中康夫さんの「なんとなくクリスタル」以来の「ルビ」はそれだけでも強烈な「批評」を含んでいた。
— tomoyuki1215 (@tomoyuki12151) October 23, 2019
[堀]ああ・・・。
[田中]これ本末転倒でしょ?と。
[堀]いわゆる「付け替え」か・・・。
[田中]オリンピック、いいよ。だったら道路局の予算でやれば良いのに、みんな当時の河川局、今の水管理・国土保全局というところの予算の中で八ッ場でも道路から民家の立替から全部、住宅局や道路局の予算じゃないんですよ。ここを僕は変えなきゃいけませんよっていう事を言ってるわけ。
[堀]そうか。でも新幹線の車両基地を造られる時に地元で指摘された方々がいらっしゃるという事はですよ、やっぱりきちんとした治水をしたいという方々がたくさんいらっしゃるわけでしょ?
[田中]そう。そして今回もここで、つまり、内水氾濫と言って千曲川が河川改修をしてないから、狭窄部があるから、千曲川の川の水が逆流しちゃうからという事でこの排水機場を閉めちゃうんですよ。排水機場で普段は千曲川にポンプで流してるのを止めちゃうわけ。その事によってこの辺りも濡れた。
[堀]なるほど。
[田中]そして新幹線の基地を(飛行機を羽田、成田から千歳に避難させたのに上田、高崎等の高架駅に移動させなかったJR東日本)、当時の日本鉄道建設公団と運輸省は、この場所だって言ったんだけれど、この場所は今回も5メートルぐらい越水してるでしょ。ハザードマップ上で最大10メートルと言われてる場所なわけ。
[堀]田中さん、こういう「エラー」を恐らく各地の自治体でずっと続いてきたんだと思います。
[田中]日本は全部活断層の下だ。でもだったら、僕がこの時言ったのも、我々がやった事の後に国は新幹線の基地の下に地下貯水場を造りましょうと。今、地下神殿みたいなもの(首都圏外郭放水路)を素晴らしいって言い出してるでしょ?
[堀]ええ。
[田中]それも嫌ですと言ったわけよ。
[堀]当時?うーん・・・。
[田中]お金が無いかなんだったのか。
新幹線車両センター下に地下遊水池を計画した田中康夫元知事…
— 可児和義 山里ちゃふぇ ケーキ屋アトリ (@kaniyamazato) October 20, 2019
結果論になるが…車両センター造るときに敷地を掘り下げて…なおかつ橋梁によって車両を引き込む線路を2mほど持ち上げておけば遊水地としての機能と車両センターの機能を併せ持つ場所になったはず…https://t.co/1PkRReMklN
[堀]東京にはあれほど立派なものを造るのに、地方にはそうした設備・工事というものは後手に回されますよね。
[田中]そゆこと。まあだから負け惜しみでもなんでもなくて、やっぱりなんていうのかな、治水なのに今、水管理・国土保全局なの。水は管理できないんですよ。
[堀]そうか・・・。
[田中]私ここで書いたように、まさに水こそネットワーク社会なんですよ。全部繋がってるんだから。道路と違うの。
[堀]仰る通り。
[田中]地域分散型で行いながらネットワークで考えるって事だと私は思ってます。
[堀]福島さん、今のお話いかがですか?
[福島香織]やっぱり今回の水害って人災だったなって。多分、地方地方で実は分かってたとか、こういうやり取りがあったって全部掘り起こしたら結構ね、調査報道とか、相当いろんな事が分かってくるんだなと思いました。
[堀]何から手をつけますか?省庁改革ですか?それとも自治体の・・・。
[田中]いやいやだから、それはやっぱり、私が河川改修をしても、国土交通省を説得できなかったのは私の力不足かもしれない。でも国土交通省が、今回も千曲川事務所が、川は難しいんですってコメントを出してんの(笑)。
[福島](苦笑)。
「川は難しい。具体的な原因について調査を進めていきたい」Ⓒ国土交通省千曲川河川事務所
「わたしたちは時を超え、川と共に暮らし、川と共に未来を創り続けています。」 と大言壮語する国土交通省千曲川河川事務所HPの
特設サイト「千曲川・犀川と生きた100年」の「川と共に暮らす」に何故か、
千曲川が破堤した長沼地区大字穂保、新幹線車両基地が浸水した大字赤沼、浅川が内水氾濫した旧豊野町浅野に関する記述が完璧に「欠落」している件w
正直、逆かと
— 海魂(うみたま) (@umi888umi) October 23, 2019
自然は常に人間の想定を越えてくる、その事実を直視出来ていない
異常気象と毎年言えば、それは異常ではなく現在日本の普通気象
そこに対策が追い付かなすぎなのが問題
個人的には自然をコントロールできる、する、という西洋的発想がおこがましい
御天道様は自然をナメるなと言っている
[田中]違うでしょ。あるいは堤防も、前も言ったように今回も緊急堤防って、鉄板使ったでしょ?
2015年の鬼怒川決壊の際に
「コンクリート製のブロックで補強」し「強度を高めるため高さ4mの鉄製の板およそ600枚を設置」した国土交通省関東地方整備局が
「土堤原則」を貫徹すべく2ヶ月後に、「仮設の堤防に代わる新たな堤防の建設工事を行う」と報じたNHKのニュースを引用した原稿
『鬼怒川決壊の「真犯人」は誰か!? 予防医学としての治水こそ新しい公共事業』
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/20150928170844.pdf
[田中]ヨーロッパやアメリカのように鉄板とかソイル・セメントという、砂とセメントを一緒にしたようなもので堤防を補強しないから、土と砂だけだから液状化してるわけでしょ?
[堀]分かりました。
[田中]大本の根底を、オツムを変えて欲しいなって私は思う。
[堀]ここでね、やはりあやふやにしてしまうとまた命が失われますよって言う事ですからね。
[田中]そうですよ。
[堀]ありがとうございました。
「間違いだらけの日本の治水・治山」「VERDAD」2017年8月号「田中康夫の新ニッポン論」㊿
http://tanakayasuo.me/top/wp-content/uploads/2017/07/27cb7c766956f952aa0f1cc4b5b8a1ad.pdf
「砂防ダム」「VERDAD」2014年8月号「田中康夫の新ニッポン論」⑯
http://tanakayasuo.me/top/wp-content/uploads/2014/07/ba94495447c2089a30f55e0346f67c39.pdf
関連記事を含むサイト
http://tanakayasuo.me/archives/12232
「国土強靱化」「VERDAD」2013年5月号「田中康夫の新ニッポン論」①
http://tanakayasuo.me/top/wp-content/uploads/2013/05/0e24da84a39310770bc5d432d26ad6a8.pdf
関連記事を含むサイト
http://tanakayasuo.me/archives/10607
「社会的共通資本」 「VERDAD」2018年3月号「田中康夫の新ニッポン論」56
http://tanakayasuo.me/top/wp-content/uploads/2018/03/4a7cdb336435f35eab37f9747355f8b1.pdf
関連記事を含むサイト
http://tanakayasuo.me/archives/22210
「鬼怒川決壊の『真犯人』は誰か!? 予防医学としての治水こそ新しい公共事業」 「サンデー毎日」
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/20150928170844.pdf
間違いだらけの日本の治水・治山まとめサイト