[堀]まずは田中さんテーマの発表をお願いします。
[田中]はい。私はまずこのアノニマスを。
[堀]アノニマス。
[脊山]今月10日、国際ハッカー集団「アノニマス」は、中国政府や香港政府のサーバーに対しサイバー攻撃を行うという宣言をしたと一部で報じられました。
[堀]国防公安司法の各省では香港警察等がアノニマスの攻撃の対象で、政府関係の電子メール、アドレス情報を何万件も流失させると予告をしています。アノニマスの声明によりますと「中国よ我々を止めることはできない。香港市民に対して権力を乱用する前にわれわれの攻撃を予想すべきだった」として香港での民主的な選挙をデモが攻撃の理由であることを示唆しています。アノニマスと言えば最近でもTPPの内部機密文書をですね、表に出していったりとか様々な活動を活発化させてますよね。
[田中]そうですね、情報がコントロールし切れるっていうのがそもそも幻想だっていうことだと思ってんですよ。
[堀]そもそもんー。
[田中]私のように全部洗いざらいだしてると逆に情報として当たり前になってしまうっていうとこがありますけども。ご存知のように中国は逆にね、ソーシャルネットワーキングの中で逆に中国系の、最近は「澎湃」っていう新聞もネット上で出したりしている。
[堀]OSの開発とかも含めて中国も独自のインターネット世界を構築して欧米系とは違うんだっていうのは。
[田中]結局コントロールしようと思っても微博みたいなのとかが出てきてるから逆に政府系のもっとインサイドの情報を出しましょうっていうのがメディアで受けている。逆に日本もメディアなんか逆にその新聞だけ読んでれば全部官邸のことは分かる、って今アメリカのワシントンの人は言っている。
[瀬尾]はっはっは。
[田中]というような状況があるからね、私、ここにこうやって敢えてこのマークを書いたのは、皆さんご存知だと思うけどアラン・ムーアの「V for Vendetta」っていう、アラン・ムーアはご存知のように、非常に、反権力という事だけじゃ無くて、これ大変な漫画ですよね、良識的な本を出している講談社かと思ったら逆に、むしろこういう反権力的なのに、今なんとなく、右の発言が元気な小学館から出てくる。
[瀬尾]ふっふっふ。
[田中]ってのはすごい話なんですけれども(笑)。
[堀]どういうストーリーが主に書かれている漫画なんですか?
[田中]これは映画にもなってますから多分ご覧なった方も居ると思いますけども、アノニマス的な発想であると同時に、ある意味では情報ってのは見方によって全部ロールシャッハなんだと。つまり少女のようだと思ったのがおばあちゃんに見えたりもするわけですよね。そうするとじゃあ今中国や韓国が、勿論中国に関しても問題は沢山あると思うんですよ、でも中国は情報をコントロールしてておかしいじゃないかって言うけれども、考えてみたら例えばシンガポールとかも去年からネット上でシンガポールに関してのニュースを出す場合にはもう政府の、省庁の許可を得ないと一般市民は出せないっていう形になっているよねっていう。
[堀]そうですよね、シンガポールは観光のイメージや金融のとしてのイメージがあってリベラルなイメージがありますけど、実はかなり統制された国でもあるんですよね。
[田中]うん。だからその意味で言うと逆に言えば北朝鮮もとんでもないことは沢山あるけれども、親子で首相をやって親子の係累が皆航空会社や銀行の役員もやっているってのはまさにロールシャッハじゃないか、ってことを多分アラン・ムーアは言ってるし、その意味で言うと今回の香港の件も情報隠しているのはおかしいよって我々は愉快犯的に言うだけじゃなくて、翻って日本も、中国も韓国もこれだけ情報を管理するようになったんだから日本も当然でしょ?っていう人達が出てきたときには、その権力に対してはみんなはそれは違うって言えるのかっていう、小さな勇気を持たなきゃいけないっというね。
[堀]そうでよね。そもそもグーテンベルクの活版印刷でマスメディアが広く誕生した時から、情報を流す側は必ず何かしらの意図をもって大衆を相手に情報を流す。我々が無防備であればその情報を受ける側にまわり続けるしかないというこの関係性ってのはずっと変わって無いんですよね。だからそこでどういう風に情報と向き合うかっていうのは結構我々受け手側の問題の話であって。
[田中]まぁその辺は瀬尾さんは元プロだから。
[堀]瀬尾さんいかがですか?流すほうは色々な情報っていうのは意図を持ったりとかコントロールしたりするのは当たり前っていうメディア関係の観点に立つか。
[瀬尾]そうですね、メディアの問題もあるし元々ネット文化ってカウンターカルチャー的な西海岸文化で、やっぱり権力に対する反権力みたいな有り様がありますよね、それでこういう例えば政府の情報操作されているものを対抗したいっていうのがあったと思うんです。で、今回アノニマスが中国に挑戦するというのは野次馬根性にはすごく面白いなと思うんですけど、一方で言うと逆にネット側、例えば今グーグルの問題だとかアマゾンの問題だとか、一企業が実は情報独占に近い形を行っているんじゃないかという新しい権力も出てきてるんですね。でこれに対してこの前グーグルに対する日本の裁判の判決では「忘れられる権利」があるんじゃないかっていう主張もされてるんで、このあたりのネット上に出来てる新しい、僕らが想定もしてなかった権力にどう市民社会が対立するかっていう。
[田中]仰る通りで、逆に言えばまさに多国籍ならぬ無国籍企業、どこで税金を払ってるかも分からない企業の方が権力よりも既に情報をコントロールしているっていうところありますよね。
[堀]それこそアノニマス的ですよね。
[田中]だから僕は知事の時代に言ったのは、「官対民」ってねみんな言ったんだけどそうじゃないですよ、と。官に居る人だって一人ひとりは子供の教育や住宅のローンを抱えてる人なんで、一人ひとりが「民」なることが大事でね。「愛国心」って言うけどその前に「愛民心」を持たなきゃいけない、と。多分今回のアノニマス達もですね、ただ単に反権力ってだけじゃ無くてちゃんと人間の心を持った人間の顔を持った経済や政治にしましょうよって言う運動になっていけばこれは大変なことなんですね。
[瀬尾]それは面白いですね、昔みたいに分かり易い権力じゃ無いじゃないですか。でもシンガポールやあるいはさっき出た北朝鮮みたいに、誰か固有の顔があってこの権力者が悪いって言う話だったら良いんですけど、なかなかやっぱり今の社会ってそれが無いですよね。
[田中]仰る通り。
[堀]そういう意味で言うとだから戦争や紛争のあり方というのも随分変わっていって、国家と国家の正規軍同士の戦いでは無い、で、特にサイバー空間だとそれが更に見えないところで色んな参画者が居るわけですよね。
[田中]だからやっぱりバクテリア、戦争も含めてバクテリアじゃ無いんですよ。バクテリアってストレプトマイシンがあれば駆除できるかもしれない、あるいは戦争も「nation to nation」、国家と国家だったら何時か引き分けか勝ち負けが決まるけども、テロってのはだって今回起きてるのは、貧しいからテロが起きるって言うけど、いやぁあそこに参加してる人達は逆にイスラムからイギリスに行って父親が大金持ちなんだけど自分の居場所はどこなんだろうっと思ってるわけでしょ。そうするとやっぱりこれバクテリアじゃ無くて僕、ウイルスだと思うんです。そうするとウイルスはどんどん変化していくんだからそれに対して国家とか企業という方が逆に結果的に後手後手になってしまってるという新しい局面です。
[堀]じゃあやはり変わっていくべき対象は我々も随分対応を変えていかなきゃいけない、と。今回香港とデモに参加している学生達の関係性っていうのは落とし前としては今後どういう風になっていくという風にご覧になっていますか?
[田中]一つは逆に言えば香港の議会の民主派という人達も結果的に不甲斐ないじゃないか、ってのが市民の間であった。じゃあそれを変えなくちゃ、って言ってた大学の先生達もちっとも動いてくれなかった、そして今学生が動いている。で僕は、中国の政府からすればこれは時間をどんどん引き延ばしていく方が良いんだと思うんですね。
[堀]戦線を長引かす。
[田中]やっぱり理念で集ってる人はいつか疲れちゃいますから、で、同時に今の長官を辞めさせれば、長官が決めた選挙制度はリセットだからじゃあもう一回時間を引き延ばして考えますか?って言える。なかなかそれは。
[堀]したたかなやり方ですね。
[瀬尾]今回の学生側の要求も完全な民主化を要求してるわけじゃ無いんですよね。どちらかと言うと、中央政府からの見方も色々あるんですけど、これまでの体制を続けてくれっていう要求でもあったりするんで、ここが単純な民主主義対共産主義っていう戦いでも無いってところもありますよね。
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