2018年7月24日 TBSラジオ 生島ヒロシのおはよう一直線 文科省の「行政指導」で中止となった本日の祇園祭花笠巡行 奇しくも2年後の今日はTOKYO「頭狂」五輪開会式 間違いだらけ治水・治山の改善点 電話ゲスト 田中康夫

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[生島]さて今日は作家の田中康夫さんに気になるニュースに触れていただきましょう。康夫ちゃん。

[田中]はい。おはようございます。

[生島]おはようございます。「猛暑41.1度 2020年東京オリンピックはどうなっちゃうの?」と今日は一般紙も社説で随分取り上げてますね。

[田中]ちょうど奇しくも2年後の今日が開会式なんですね。

[生島]おぉあらま。

[田中]僕は驚いたのは、こないだワールドカップがあったじゃないですか。で、ワールドカップは今度はカタールという、生島さんも行かれた中近東で、「こんな暑いところで平気なのかな?」と思ったら実はね、ヨーロッパの主要リーグの試合を全部調整をして11月下旬から12月中旬にかけて開くんですよ。そうすると僕も知らなかったんだけれど、実はこの時はね平均温度が20度くらいで平均の高い温度でも24度なんですよ。

[生島]なるほど。

[田中]なるほどそうやって考えてみると2011年のアジアカップもね、あれは1月に行ったんですよ。そうするとみんな言ってるのは「アメリカのテレビ局がちょうどゴルフや野球が無い夏の時期に放送したいからオリンピックも夏になっちゃってる」って言われてるじゃないですか。

[生島]うんうん。

[田中]だけど確かに前回の1964年の東京オリンピックはね、10月10日から10月24日だったと。

[生島]そうですよ。

[田中]で、みんなロスの1984年のロサンゼルス大会から商業主義になってったって言われてたんで、この時期からなのかな?と思ったら、なんと東京の次のパリもね(2024年)8月26日から9月11日なんですよ。(オンエア後にツイートでご指摘を頂き確認した所、月を見間違えており、1ヶ月前倒しの7月26日〜8月11日でした。但し、商業主義に大転換した1984年のロサンゼルス大会(7月28日〜8月12日)の次の1988年のソウル大会は9月17日〜10月2日に開催しており、IOCとの交渉次第で柔軟に対応可能とも思われます)

[生島]あー、ちょっとずらしてる。

[田中]9月にかけてやるんですよ。そうするとね、なんかまあ日本はもちろん、国際貢献するんでいろいろお金を出すのは良いかもしれないけれど、お金と我々の汗は国内で出してるけど、口も手も出せないっていうのは・・・。

[生島]・・・ねえ。

[田中]しかもね、カタールはちゃんとエアコン・スタジアムに全部するわけ。お金持ちの国だから・・・っていうんじゃないけれど、じゃあ千駄ヶ谷のスタジアムだってね、VIP席以外はみなさんどうなっちゃう?って話でしょ。

[生島]そうだね。

[田中]しかも、関西(のラジオ大阪)でお聴きの方もいらっしゃるけれど、(京都の)祇園祭もね花傘巡行って(祇園町の)綺麗どころの人(芸妓・舞妓)とか(地元の)子供たちが歩くのは、これはもう暑さなので異例の中止になるんですよね。

[生島]そうそうそう。

[田中]24日、今日ですよ。

[生島]そうですよ。

[田中]しかもこれはね、八坂神社が「文部科学省が校外学習や部活動については気温や湿度が高い日は中止や延期などの柔軟な処置を取るよう通知してきた」って、じゃあオリンピックの時は子供たちやマラソンを見に沿道に出たお年寄りは・・・。いやだからこれ、イギリスの『TIMES』っていう非常に伝統のある新聞も「こんな時期に日本はやってて平気か?」と。

[生島]そうだよね。これ、スケジュールずらせないんですかね?

[田中]いやだから、なんでカタールのワールドカップは(日程調整を)できるし、次のオリンピック・パリ大会も9月にやれるのに日本はこんな時期にやるのか?っていうね。

[生島]ね。ちょっと心配ですね。

[田中]まさにこれこそやっぱり日本外交の、ちゃんとモノを言えるところになって欲しいと私は思いますよ。

[生島]言えてないんだな。

[田中]んーん・・・。

[生島]さて、昨日のね東京新聞にですね「西日本並みの雨量になれば54万人孤立 東京の豪雨対策進まず」とありました。東京大丈夫なんですかね?

[田中]いやいやだから、これはもちろん・・・、でもこれが危機を煽る形になってるじゃないですか。

[生島]うん。

[田中]だって西日本豪雨の時に愛媛県で亡くなられた方が発生した肱川(ひじかわ)っていうのも103km長さがあるのに河口まで(直線で僅か)18kmって蛇行の川なんですよね。あれも結局、「ダムが必要か?必要じゃないか?」の神学論争じゃなくて、あの時、気象庁が警告をしていたのにあえてダムの流水量を通常より減らしてたんですよね。減らして溜めてて、最後直前にあんなふうに一気に流れちゃったから、「これは判断ミスじゃないか?」ってことをだいぶんね産経新聞あたりも書くようになってきたけれども。それで1つね、桂川って皆さんご存じの京都の嵐山の渡月橋(とげつきょう)のところ、あそこも2013年の台風ではね増水してお店とかが浸水したんですよ。

[生島]そうですそうです。

[田中]それに対してね(国土交通省の)近畿地方整備局ってのは、ここは割合とね新しい治水をやろうという部署で、「観光の場所だからお客さんの少ない1月から3月に限ってあの地区を2015年からずっと3年間、浚渫(しゅんせつ)をしたんですよ。つまり、地球は生きてるから砂や砂利が落ちてきますでしょ川に。それをちゃんとあの場所を浚渫したんで今回の西日本豪雨では同じような降雨量だったのに無事だったんですよね。

[生島]んーん・・・。

[田中]だからそうやって考えるとね、八ッ場ダムも1952年、僕が生まれる前に計画されて66年経ってもまだできてない。工事が始まったのが3年前でしょ。そうするとこういうこまめな浚渫、これ1平米で1万円で機械でできますからね、地元の業者の人ができる。あるいは堤防も、日本の堤防は(内部が)土と砂だけですから、アメリカや韓国とかヨーロッパは決壊するような場所には鉄板を2枚入れてるんですよね。そうするとすぐに決壊しない。これこそ製鉄メーカーもハッピー。地元の建設業の人も胸を張れる。だからやっぱりみんなで治水やそういうことを考えないと「東京、大変ですよ」って「スーパー堤防を造りますよ」って400年かかるっていうんでしょ?万里の長城のような話ね。

[生島]ふふふ(笑)。

[田中]しかも、江戸川区の人たちに「土地の買収をしないで進めます」って言うけど、土地をかさ上げするんだからその間いったいどこに家を移ってれば良いのか?っていうね。だからやっぱり治水のあり方が、いろんな意見があるけれどもやっぱり今できることは何か?そして長期的できることは、でないとね。「今後、何百人何千人死んじゃいますよ」って言われて、「じゃあ今やってることは何ですか?」と。「今は浚渫をどのくらいやってるんですか?」っていうことをメディアもね問いただしていただきたいなと私は思いますね。

[生島]それは良いポイントですね。了解しました。ありがとうございました。

[田中]どうもありがとうございました。

[生島]田中康夫さんでした。

Vol.616「「思想・信条」がYa‘ssyと異なると「日経」で「告解」学習院大学長もシャッポを脱いだ「サンデー毎日」実践的「治水・治山」原論!ダム脳なリバーフロント研究所が登場の痛い「文藝春秋」w」

19/12月号 憂国呆談 season2 volume113◆ソトコト

消費税の軽減税率から、
台風15号の対応、
グレタ・トゥンベリさん、
日本の環境政策と農畜産品の行方まで。

水害は脱ダムのせいなのか!?
田中康夫の『実践的治水・治山』原論 まとめサイト始動しました!

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サンデー毎日」2019年11月17日号

「水害は『脱ダム』のせいなのか❣田中康夫の実践的『治水・治山』原論」(※画像をクリック!

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✽治水・治山のあるべき姿を更に具体的に加筆した原稿はこちらです。

水害は『脱ダム』のせいなのか!? 田中康夫の実践的『治水・治山』原論「サンデー毎日」2019年11月17日号(11月6日発売)

リード文「しなやかな是々非々」

甚大な被害をもたらし、河川氾濫の恐ろしさを知らしめた台風19号安倍晋三首相は防災の観点から八ッ場ダムを称賛し、また、「脱ダム」が水害を招いたという声もある。だが果たしてそうか? 長野県知事時代から、河川のネットワークを見極めた「治水」を思索、実践してきた田中康夫による真の国土強靱化論。

本文

「『土堤(どてい)原則』は、断じて譲れません」。

河川局を改組して2011年7月、国土交通省に誕生した水管理・国土保全局の官僚は拒み続けました。土と砂利以外の「不純物」が堤防内に混じるのは馴染(なじ)まない、と真顔で。

鋼鉄(スチール)も混凝土(コンクリート)も他の公共事業では「不純物」どころか必須の素材。コンクリート壁の隙間(すきま)から水が浸潤(しんじゅん)して平時から内部が“液状化現象”に陥りがちな堤防を補強すべく、両肩から基礎まで鋼矢板(こうやいた)を縦に2枚打ち込む護岸工法の事業化に向け、僕が求め続けた調査費が2011年度=平成23年度予算に初計上された後の遣り取りが冒頭の発言。

「決壊した箇所に仮堤防を設置する緊急復旧工事と、本格復旧工事の工法の違いを、河川行政に疎(うと)い我々に説明頂けますか?」。

民主党政権の一翼(いちよく)を担っていた国民新党代表の亀井静香氏と共に新党日本代表の僕が尋ねるや、“論理的で科学的な講釈”を垂れました。「緊急時には鋼鉄の使用も止むを得ないが、恒常的に駆体(くたい)として採用するのは好ましくない」。

翌2012年12月の総選挙で僕は敗退。複数の製鉄会社が導入に向け勉強会を立ち上げていた「鋼矢板工法」の調査費を、国交省は打ち切ります。

本誌の連載「ささやかだけど、たしかなこと。」(2015年10月11日号)で僕は、「鬼怒川(きぬがわ)決壊の「真犯人」は誰か!? 予防医学としての治水こそ新しい公共事業」と題し、新聞の「大本営(こくどこうつうしょう)発表」“コピペ”記事を再録しています。

「関東・東北豪雨」の2週間後、「締切堤防」と称し決壊箇所200mに「高さ4mの鉄製の矢板」「2枚の間に土砂を敷き詰め」、「鋼矢板工法」で仮堤防を設置した関東地方整備局はその1ヶ月半後、「土堤原則」に基づく「本格復旧の堤防建設工事に着手」と。

堤防を越えて川の水が溢(あふ)れ出る「越水(えっすい)」。堤防そのものが壊れる「破堤(はてい)」。一度(ひとたび)決壊するや溢れる量と流れの速さは激変し、物的被害も人的被害も桁違いとなります。破堤に至る原因の8割は越水です。河川の猛威の悲劇は、同じ場所で繰り返される蓋然性(がいぜんせい)が極めて高いと理解する米国や欧州、そして韓国では過去の決壊箇所の護岸強化に鋼矢板工法、或(ある)いは土砂とセメントを混合して固めたソイルセメント工法を導入済み。

翻(ひるがえ)って日本。今回の台風19号ハギビス襲来で堤防決壊が71河川140箇所に及んでも猶(なお)、後述する千曲川の決壊箇所を筆頭に鋼矢板工法は飽く迄(あくまで)も「応急復旧」の位置付けです。謂(い)わば「天動説」に胡座(あぐら)を搔(か)いて、「地動説」を小馬鹿にする浮かれポンチ状態。

「意識高い系」な面々が「首都圏の救世主」と称揚する、総事業費5320億円の八ツ場(やんば)ダムが利根川水系で役割分担するのは、全体の僅(わず)か1%に過ぎません。利根川支流の吾妻川(あがつまがわ)に巨大ダムを建造せねば2千名近いカスリーン台風の御霊(みたま)は報(むく)われず、と計画が発表されたのは今から67年前の1952年=昭和27年。

一万歩譲って八ツ場ダム建設が「必要悪」だったとして、河道掘削(かどうくっさく)と呼ばれる川底の浚渫(しゅんせつ)に投じた67年間の費用は如何程(いかほど)かと河川管理者に質(ただ)しても、該当する記録は見当たらずと言葉を濁すでしょう。

我々が手足の爪を切るのと同様、「減災」の肝心要(かんじんかなめ)は維持修繕。なのに財務省が「部・款・項・目・節(ぶ・かん・こう・もく・せつ)」と細分類する予算体系の治水の項目に「浚渫」は存在せず。

重機を用いて1㎡1万円強で実施可能な浚渫こそ、地元の土木建設業者が胸を張って従事可能な地域密着型公共事業。なのに国も大半の自治体も予算を別立てせず、現場の建設事務所の人件費等を「維持修繕費」に一括(ひとくく)り。護岸の補強、上流域の森林整備と並んで治水の基本たる浚渫は全国津々浦々で滞っています。

世界的趨勢を踏まえての「脱ダム」宣言

県土面積が全国4位の信州・長野県の知事時代、台風一過の秋季(しゅうき)に土木部・農政部・林務部の技術系職員を総動員して県管理の河川を総点検。浚渫の補正予算を県独自に組みました。3千万円にも満たぬ金額なれど、確実に治水に寄与。

「長野冬季五輪」から2年8ヶ月後の2000年10月に就任した僕は翌年2月、「長期的な視点に立てば、日本の背骨に位置し、数多(あまた)の水源を擁する長野県に於いては出来得る限り、コンクリートのダムを造るべきではない」と「脱ダム」宣言で9つの県営ダム計画の中止を打ち出します。

「治水・治山に王道なし」。「河川こそ、ネットワーク社会の象徴的存在」。「造るから治す・護る、そして創るへ。」と主張したのは、世界的趨勢(すうせい)を踏まえての決断でした。

1993年にミシシッピ川流域に甚大な被害を齎(もたら)した洪水を分析した米国陸軍工兵隊(アーミー・コープス・オブ・エンジニアズ)は、「洪水調節用構造物」としてのダムが却(かえ)って被害を増大させた側面を指摘し、避難プログラムの作成、氾濫原(はんらんげん)での土地利用の制限を含む総合的な洪水対策への大転換を促します。その翌年、ダニエル・ビアード内務省開墾局長が、「合衆国に於けるダム開発の時代は終わった」と日本も加盟する「国際かんがい排水委員会」で講演。

佐久間ダムを始めとして世界中のダム建設に資金提供してきた世界銀行も、「大規模ダム建設の巨額予算は往々にして当初計画を超過。調査対象81ダムでは堆砂(たいさ)が原因で当初の半分以下に保水機能が低下。ダムの耐久性の見直しは必至。洪水対策のあり方も抜本的な変更を迫られている」と知事就任直後に発表。

日本国内でも同年8月、宍道湖(しんじこ)・中海(なかうみ)の淡水化に851億円を投じた干拓事業を始め、計223の公共事業の中止を自由民主党政務調査会長が発表。採択後5年以上経過しても未(いま)だ着工せぬ事業。完成予定を20年以上経過しても竣工(しゅんこう)に至らぬ事業。実施計画調査に着手後10年以上経過するも未採択の事業。現在、休止=凍結中の事業。その4条件に基づく合理的判断です。

決断した亀井静香氏は、後(のち)に僕に述懐します。「方針を発表後、大抵抗する組織の中にも、これを入れて下さいと駆け込んで来る、心ある役人が居て、中止箇所数が増えたんだよ」。仮に後輩が、先輩の起案した事業に疑問を抱いても、中断・中止・廃止を進言する風土は霞が関に存在しません。官僚を闇雲(やみくも)に萎縮(いしゅく)させるのでなく、公僕(パブリック・サーヴァント)としての良心を覚醒させる触媒役の哲学が、政事屋(ポリティシャン)ならぬ政治家(ステーツマン)に求められています。

「脱ダム」宣言を発する3ヶ月前に僕は、美ヶ原に源を発する薄川(すすきがわ)の大仏(おおぼとけ)ダム建設計画を中止します。ダムなしでは松本駅前が水浸しになると旧建設省から出向の土木部長は力説。が、市街地を流れる薄川の夥(おびただ)しい分量の堆砂は“放置”された儘(まま)でした。

四半世紀も計画に翻弄(ほんろう)された建設予定地・入山辺(いりやまべ)地区での地元住民との車座集会後に即断するも、「素人知事」は些(いささ)か拍子抜けします。

「県政の停滞と混乱」を理由に知事不信任を1年8ヶ月後に決議する長野県議会、「民主主義の手続き」を重んじる記者クラブ加盟各社の誰1人として、強権的・独裁的だと抗(あらが)う素振(そぶ)りすら見せなかったのです。理由は簡単。前述の223箇所に含まれていたから。

河川はネットワーク社会の象徴的存在

他方、死者8千名の善光寺地震(江戸後期・弘化4年=1847年)の震央(しんおう)、1985年=昭和60年に26名の命を奪った地附山(ぢづきやま)地すべり災害の現場に近接する、活断層(かつだんそう)の真上に位置する浅川ダム計画を中止するお前は、無責任な「口舌(こうぜつ)の徒(と)」だと猛反発を食らいます。

冬季五輪のボブスレーリュージュ会場へのループ橋と隧道(トンネル)の建設費を捻出(ねんしゅつ)すべく、眠っていたダム計画が“ゾンビ”の如(ごと)く復活。本体工事は未着工なのに総事業費380億円の半分以上を「転用」していた摩訶不思議(まかふしぎ)な公共事業。しかも驚く勿(なか)れ、「ダムを造っても千曲川と浅川の合流部一帯の洪水は防げない」と件(くだん)の土木部長は県議会で答弁するではありませんか。

その直截(ちょくさい)な答弁に補足すると、千曲川との合流地点には3基の排水機場が存在。増水時にはポンプで浅川から千曲川へと汲み出しますが、好事魔(こうじま)多し。国管理の千曲川の河川改修は遅々として進まず、千曲川の増水時には浅川への逆流を防ぐ為に樋門(ひもん)を閉鎖せねばなりません。行き場を失った浅川の水は「内水氾濫(ないすいはんらん)」と呼ばれる浸水を住宅地や耕作地に及ぼします。「洪水調節用構造物」は必要十分条件たり得ず。優(すぐ)れて河川は、ネットワーク社会の象徴的存在なのです。

閑話休題首相官邸下の溜池(ためいけ)一帯はハザードマップで2m超の浸水深(しんすいしん)。今回浸水した長野新幹線車両センター一帯は長沼地区大字(おおあざ)赤沼(あかぬま)。千曲川の決壊地点は大字穂保(ほやす)。何(いず)れも水害の歴史を反映する地名です。

故(ゆえ)に、鉄建公団(日本鉄道建設公団鉄道建設・運輸施設整備支援機構)とJR東日本東日本旅客鉄道)の計画に住民は反対します。この田畑は、洪水になると1週間は水が引かない赤沼の遊水機能なのだと。長野市防災マップは車両センターの浸水を5m以上と表示。想定よりも低い4・3mに今回は留まったにも拘らず、羽田・成田から千歳へ機材を移動させた航空各社と異なり、上田、高崎等の高架駅どころか車両センター構内を走る本線の高架部分へと車両を移送させる鉄オタとしての愛情すら、JRという“疾走する駅前不動産屋”には希薄でした。

五輪前年の1997年10月開業が至上命令だった旧運輸省、旧建設省と長野県は、上流域に治水ダムを造れば解決すると甘言(かんげん)。それは地域住民を愚弄(ぐろう)する巧言(こうげん)に他ならず。有為(ゆうい)な県職員と共に僕は、浅川改修計画の優先順位を立案します。

先(ま)ずは浅川全域での河道掘削。天井川状態で信越本線の上を流れていた3km区間の河床を最大11m掘り下げ。完了後に現実的提案を行います。川幅が1000mを超える穂保地点で今回決壊したのは、下流5km地点の川幅210mと狭窄(きょうさく)な立ヶ花(たてがはな)での“糞(ふん)詰まり”が原因。その立ヶ花よりも下流に浅川から放水路、地下導水路を建設。車両センター地下に調節池を設置。一旦緩急(いったんかんきゅう)あればリンゴ畑を遊水地として活用する事前契約を農家と結ぶ。伝統的治水工法として濃尾(のうび)平野の木曽三川(きそさんせん)=木曽川・長良(ながら)川・揖斐(いび)川下流域に見られる輪中堤(わじゅうてい)、越水・破堤した場合にも被害の拡大を防ぐべく住宅地側に第2堤防=二線堤(にせんてい)を設けるetc. 国交省は尽(ことごと)く拒否しました。

僕の在任中に副知事を務め、浅川ダムの欺瞞(ぎまん)を熟知していた筈(はず)な総務省出身で現在の阿部守一知事は、「ダムなし」よりも「ダムあり」は浸水時間が1時間半も長引き、赤沼地区の浸水深は「ダムあり」で5cm上昇すると記された「報告書」を土木部から受け取ったにも拘らず浅川ダム建設に着手。3年前に竣工するも哀しい哉(かな)、浅川の内水氾濫は回避出来ませんでした。

河川管理者に、緊急放流の判断ミスや堤防決壊の監理(かんり)責任を刑事罰で問うた事例は皆無な「放置国家」日本。

防災の日」に奇(く)しくも堤防が決壊し、翌日未明に民家19戸が濁流に呑(の)み込まれた1974年=昭和49年9月の多摩川水害。『岸辺のアルバム』(原作・山田太一、主演・八千草薫)が描いた不条理の「決着」も、地域住民が費用と時間を「自己責任」で負担する民事訴訟に委ねられたのです。

デジタル・データなど存在しなかった往時、マイホームと共に失った家族の絆(きずな)の写真は2度と戻って来ない。遣る瀬無い(やるせない)思いで狛江(こまえ)市猪方(いのがた)の市民が河川管理者の国を相手取った損害賠償請求訴訟。一審は原告の勝訴。控訴審で逆転するも最高裁が破棄。差戻控訴審で住民が勝訴し、判決が確定したのは1992年=平成4年12月。18年3ヶ月の歳月を要しています。

星霜(せいそう)を経て、国交省の外局に当たる気象庁が「平成30年7月豪雨」と命名した昨年の「西日本豪雨」。同省四国地方整備局は「大雨特別警報」発令後、愛媛県内の肱川(ひじかわ)に位置する野村ダムと鹿野川(かのがわ)ダムからの放流量を敢(あ)えて減らしてダム湖の貯水量を増やした後、満水状態となった両ダムから安全基準の6倍もの「緊急放流」を実施。下流域の西予(せいよ)市、大洲(おおす)市で9名が犠牲となりました。

名は体を表す。全長103kmの源流から伊予灘(いよなだ)の河口まで直線で僅か18km。蛇行する肱川の護岸補強も儘ならぬ中、前述の自民党公明党・保守党連立政権時代の公共事業見直し勧告に含まれていた同水系の山鳥坂(やまとざか)ダム計画を、加計学園岡山理科大学獣医学部新設問題で耳目(じもく)を集めた、旧文部省官房長の加戸守行前知事を筆頭に今猶(いまなお)、切望する向きが存在します。

今回の台風19号水害でも、ダム湖流入の全水量をそのまま下流へ流す緊急放流に至った東日本の6ダムは何れも、降雨前にダム湖の水位を下げる「事前調節」を実施せず。「その理由は現時点では答えられない」と同省河川環境課は取材に対して居直りました。「天動説」総本山の面目躍如(めんもくやくじょ)です。

戦後の森林政策の不作為を問う

一方、台風15号ファクサイが齎(もたら)した「千葉県豪雨災害」は、戦後の森林政策の不作為を体現しています。

江戸時代までは杉と赤松、黒松、そして檜(ひのき)を程良き塩梅(あんばい)で植栽し、手入れも怠らなかった山武(さんむ)市一帯。戦後造林の「山武杉(さんぶすぎ)」は荒廃し、根腐れならぬ溝腐れ病に見舞われていました。その倒木が大規模停電の原因です。

日本の国土の68・2%は森林。フィンランドに次いで世界第2位の森林率。その45%は戦後造林された針葉樹。間伐(かんばつ)が急務なのです。樹齢45年から60年の間に針葉樹は、2列残して1列伐採(ばっさい)する「2残1伐」列状(れつじょう)間伐を行なわねば、根元に太陽光が差し込まず、幹が太くならず、ひ弱な“萌(も)やしっ子”の儘。

森林が県土の8割を占める信州・長野県。森林整備の技術者を養成すべく僕は、「信州きこり講座」と銘打った100時限の無料講習会を開設します。間伐資格を取得した土木建設業者には入札参加資格を与え、森林整備予算も県独自に2・5倍へと増やし、旧態依然たる森林組合が牛耳っていた分野に切磋琢磨の精神を吹き込みます。

就任時、利息の返済だけでも1日に1億5千万円と破綻寸前だった県財政を、県民の理解と職員の協力を得て47都道府県で唯一、在任6年間連続で起債残高を減少させ、基礎的財政収支=プライマリー・バランスを連続黒字化させる一方、「地球温暖化を防ぐ森林づくりは百年の計」と「森林ニューディール」を掲げます。と同時に、人が人のお世話をして初めて成り立つ21世紀の労働集約型産業としての福祉・医療・教育の充実も図りました。

鋼鉄製ガードレールと同じ強度認証を受けた信州型木製ガードレールも、「森林ニューディール」の象徴的政策でした。

都道府県道も市町村道も、「造る」際には事業費の65%を国が負担。けれども舗装等の「治す・護る」費用は全額、地元自治体の負担です。大手製鉄会社の関連企業3社が製造する、行政用語で車両用防護柵と呼ばれるガードレールも全額地元が費用負担。地元への経済的還元は設置時の人足(にんそく)費用のみです。ならば、伐採・搬出・製造・設置の全工程を地域で賄う県産材のガードレールを実現出来ないだろうか?

八重洲、日比谷同様、嘗ては海の入江(いりえ)の湿地帯だった丸の内で1920年大正9年に着工された旧丸ビル=丸ノ内ビルヂング。スギ科の落葉針葉高木メタセコイアが、9階建てビルを支える基礎でした。その一つが塩尻市の県林業総合センターに展示されており、僕は驚愕。つい先程まで生きていた樹木かと見紛う、光沢のある切株だったのです。

何れも県内業者が開発を担当した3タイプの信州型木製ガードレールは、HPに貼り付けた動画でご確認頂ける、つくば市国土技術政策総合研究所での大型貨物車と乗用車の実車衝突試験を経て、2004年に実用化。知事を退任する2006年まで毎年、設置経費2億円で6箇所ずつ、木の温もりを感じさせる信州の新たな道路景観を生み出します。

「これぞ我々も胸を張れる公共事業」と現在は自民党参議院議員を務める、道路畑出身の佐藤信秋氏も国交省事務次官として予算化に尽力下さいました。

「田中県政の全否定」が基本方針な現在の長野県でも、軽井沢町の中軽井沢から千ヶ滝を経て鬼押出へと向かう県管理の国道146号線、上信越自動車道群馬県に位置する碓氷軽井沢(うすいかるいざわ)インターチェンジから県境を跨いで県道92号線に入った場所を始めとする幾つかの地点で、地元紙「信濃毎日新聞」が黙殺し続けた県政改革の残滓(ざんし)に触れる事は可能です。

再び閑話休題。「減災」の肝心要(かんじんかなめ)は維持修繕。その「地動説」を、国交省の河川畑と同様に理解出来ないらしい農林水産省の外局に当たる林野庁。予算の92%は小さな沢に、「不純物」と国交省水管理・国土保全局が唾棄(だき)するコンクリートや鋼鉄を打ち込む谷止工(たにどめこう)、間伐完了後には再び下草が生い茂る作業道と異なり、山肌を抉(えぐ)り取る大規模林道に投じられています。

人件費が経費の7割を占める間伐や植樹の森林整備こそは疲弊した中山間地域に雇用と活力を生むのに、その予算額は全体の僅(わず)か8%。しかも今年度4661億円の林野庁予算は、「3・11」関連も含めて7兆3241億円もの国交省予算の16分の1。詰まり国交省の公共事業予算は森林整備費の195倍、と改めて知ると暗澹(あんたん)たる思いに駆られます。

とは言え、成功事例が無い訳ではありません。2013年の台風18号京都市を流れる桂川(かつらがわ)の嵐山(あらしやま)周辺が氾濫し、両岸の10ha近くが浸水したのを教訓に近畿地方整備局は、こまめな浚渫や護岸の補強に加えて、渡月橋(とげつきょう)付近の河道掘削を観光客が減少する冬場の3ヶ月間に集中的に実施。上流の日吉ダムが1997年の運用以来初めて緊急放水ゲートを全開した昨年7月の豪雨でも事なきを得ています。

「真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず 村を荒らさず 人を殺さざるべし」の気概を抱いて田中正造翁が、渡良瀬(わたらせ)川流域住民の為に足尾銅山鉱毒問題を明治天皇に直訴したのは今から118年前の1901年=明治34年12月10日。彼が還暦を迎えた年です。

千万人と雖(いえど)も吾(われ)往(い)かん。その「愛民心(あいみんしん)」に基づく彼の苦闘を忘れる勿(なか)れ。

人間の智能がAI=artificial intelligenceに優る唯一無比の心智(メンタリティ)は、「悟る」という営為。

それは、「科学を信じて・技術を疑わぬ」自称「意識高い系」な面々のアルゴリズム的思考では凡そ到達し得ぬ、「科学を用いて・技術を超える」心智でもあります。

「治水・治山に王道なし」。「造るから治す・護る、そして創るへ。」「『天動説』から『地動説』へ。」

富国強兵ならぬ富国裕民(ふこくゆうみん)の心智に基づく社会的共通資本のあり方が今、改めて問われているのです。

「水害は『脱ダム』のせいなのか」サイト 

~ただ単にやめれば良いのでなく、新しい治水のあり方を示す~「脱ダム政策の哲学と実践」サイト

「間違いだらけの日本の治水・治山」サイト 

田中康夫アドレス yassy@tanakayasuo.me

Vol.613「これぞ実践的「治水・治山」原論の決定版!「水害は脱ダムが原因!」と「天動説」を妄信するダム脳w反論できない「堀江貴文とNewsPicks」「上念司と虎ノ門ニュース」浮かれポンチな仲間達!」

VERDAD」2019年11月号「田中康夫の新ニッポン論」Vol.76 「おもてなし」の「眠度」

[生島]さて今日は作家の田中康夫さんに気になるニュースに触れていただきましょう。康夫ちゃん。

[田中]はい。おはようございます。

[生島]おはようございます。「猛暑41.1度 2020年東京オリンピックはどうなっちゃうの?」と今日は一般紙も社説で随分取り上げてますね。

田中康夫YouTube公式チャンネル「だから、言わんこっちゃない!」

Vol.610 治水・治山総集編Part2 森林率68・2%世界第2位 経費7割が人件費の間伐こそ地域雇用 なのに林野庁予算は国交省の16分の1 しかも間伐は林野庁予算の僅か8%

Vol.609「河川こそネットワーク社会の象徴的存在!「ローマは一日にして成らず」を勘違いする国土交通省水管理・国土保全局の唯我独尊な天動説w 間違いだらけの日本の治水・治山総集編Part1」

「脱ダム」アーカイブ・参考資料
http://www.nippon-dream.com/?p=6773

10/07/15 ああ、ダムありきの“恥水”対策よ
http://www.nippon-dream.com/?p=403

サンデー毎日」連載「ささやかだけど、たしかなこと。」第5回 鬼怒川決壊の「真犯人」はだれか!?予防医学としての治水こそ新しい公共事業
http://www.nippon-dream.com/?p=15069

脱ダム政策の哲学と実践
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/nodams.pdf

しなやかな国土強靱化
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/56b252dcd6798974c9eb9ce7789e6ae72.pdf

巨大公共事業で地元は潤わない 
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/b90708120d9bd21e7b86863a8b31a25a.pdf

「間違いだらけの日本の治水・治山」まとめサイト

「脱ダム政策の哲学と実践」まとめサイト

2018年7月12日 TOKYO MX モーニングCROSS 田中康夫 羊頭狗肉な水管理・国土保全 造るから治す・護る、そして創るへ。松本元死刑囚四女遺骨は”海に散骨”発言をめぐって

埼玉・熊谷で41.1度 国内観測史上最高

[田中]ちょうど奇しくも2年後の今日が開会式なんですね。

[生島]おぉあらま。

[田中]僕は驚いたのは、こないだワールドカップがあったじゃないですか。で、ワールドカップは今度はカタールという、生島さんも行かれた中近東で、「こんな暑いところで平気なのかな?」と思ったら実はね、ヨーロッパの主要リーグの試合を全部調整をして11月下旬から12月中旬にかけて開くんですよ。そうすると僕も知らなかったんだけれど、実はこの時はね平均温度が20度くらいで平均の高い温度でも24度なんですよ。

カタールの取り組みwiki 五輪開催時期一覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/2022_FIFA%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97

[生島]なるほど。

[田中]なるほどそうやって考えてみると2011年のアジアカップもね、あれは1月に行ったんですよ。そうするとみんな言ってるのは「アメリカのテレビ局がちょうどゴルフや野球が無い夏の時期に放送したいからオリンピックも夏になっちゃってる」って言われてるじゃないですか。

[生島]うんうん。

[田中]だけど確かに前回の1964年の東京オリンピックはね、10月10日から10月24日だったと。

[生島]そうですよ。

[田中]で、みんなロスの1984年のロサンゼルス大会から商業主義になってったって言われてたんで、この時期からなのかな?と思ったら、なんと東京の次のパリもね(2024年)8月26日から9月11日なんですよ。(オンエア後にツイートでご指摘を頂き確認した所、月を見間違えており、1ヶ月前倒しの7月26日〜8月11日でした。但し、商業主義に大転換した1984年のロサンゼルス大会(7月28日〜8月12日)の次の1988年のソウル大会は9月17日〜10月2日に開催しており、IOCとの交渉次第で柔軟に対応可能とも思われます)

「まあパリは東京より夏涼しかったり・・・なんてのもあります」

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[生島]あー、ちょっとずらしてる。

[田中]9月にかけてやるんですよ。そうするとね、なんかまあ日本はもちろん、国際貢献するんでいろいろお金を出すのは良いかもしれないけれど、お金と我々の汗は国内で出してるけど、口も手も出せないっていうのは・・・。

[生島]・・・ねえ。

[田中]しかもね、カタールはちゃんとエアコン・スタジアムに全部するわけ。お金持ちの国だから・・・っていうんじゃないけれど、じゃあ千駄ヶ谷のスタジアムだってね、VIP席以外はみなさんどうなっちゃう?って話でしょ。

[生島]そうだね。

[田中]しかも、関西(のラジオ大阪)でお聴きの方もいらっしゃるけれど、(京都の)祇園祭もね花傘巡行って(祇園町の)綺麗どころの人(芸妓・舞妓)とか(地元の)子供たちが歩くのは、これはもう暑さなので異例の中止になるんですよね。

[生島]そうそうそう。

[田中]24日、今日ですよ。

[生島]そうですよ。

[田中]しかもこれはね、八坂神社が「文部科学省が校外学習や部活動については気温や湿度が高い日は中止や延期などの柔軟な処置を取るよう通知してきた」って、じゃあオリンピックの時は子供たちやマラソンを見に沿道に出たお年寄りは・・・。いやだからこれ、イギリスの『TIMES』っていう非常に伝統のある新聞も「こんな時期に日本はやってて平気か?」と。

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猛暑で花傘巡行中止 「参加者が熱中症の危険」 京都・祇園祭

英紙も警告 2020年の東京五輪は“殺人オリンピック”になる

「悪名高い高温多湿」 日本の猛暑、海外メディアも速報

猛暑:「命に危険」列島異常高温 生活にも影響

暑さ猛烈、災害レベル 熊谷、東京消防庁、高校球児ら…記録的な1日に悲鳴「まるでサウナ」

'Unprecedented' Japan heatwave kills 65 people in a week

[生島]そうだよね。これ、スケジュールずらせないんですかね?

[田中]いやだから、なんでカタールのワールドカップは(日程調整を)できるし、次のオリンピック・パリ大会も9月にやれるのに日本はこんな時期にやるのか?っていうね。

[生島]ね。ちょっと心配ですね。

[田中]まさにこれこそやっぱり日本外交の、ちゃんとモノを言えるところになって欲しいと私は思いますよ。

[生島]言えてないんだな。

[田中]んーん・・・。

[生島]さて、昨日のね東京新聞にですね「西日本並みの雨量になれば54万人孤立 東京の豪雨対策進まず」とありました。東京大丈夫なんですかね?

西日本並み雨量なら54万人孤立 東京の豪雨対策進まず

[田中]いやいやだから、これはもちろん・・・、でもこれが危機を煽る形になってるじゃないですか。

[生島]うん。

[田中]だって西日本豪雨の時に愛媛県で亡くなられた方が発生した肱川(ひじかわ)っていうのも103km長さがあるのに河口まで(直線で僅か)18kmって蛇行の川なんですよね。あれも結局、「ダムが必要か?必要じゃないか?」の神学論争じゃなくて、あの時、気象庁が警告をしていたのにあえてダムの流水量を通常より減らしてたんですよね。減らして溜めてて、最後直前にあんなふうに一気に流れちゃったから、「これは判断ミスじゃないか?」ってことをだいぶんね産経新聞あたりも書くようになってきたけれども。

ダム放流5分前 避難指示 大規模浸水の愛媛・大洲

ダム放流「徹底的に検証する」と首相

安倍晋三首相は13日、西日本豪雨の際にダムの放流により愛媛県肱川が氾濫し、犠牲者が出たことに関し「国土交通省で徹底的に検証し、改善点があれば改善していく」と述べた。視察先の同県宇和島市で記者団に語った。

愛媛 ダム放流「下流域の被害は予想もやむをえず」

大雨の際、洪水調節機能を失った肘川水系の野村ダムと鹿野川ダム

野村ダムと鹿野川ダムの放流による肘川の水害

4人犠牲の愛媛・大洲、ダム放流量は安全基準の6倍だった…

[田中]それで1つね、桂川って皆さんご存じの京都の嵐山の渡月橋(とげつきょう)のところ、あそこも2013年の台風ではね増水してお店とかが浸水したんですよ。

[生島]そうですそうです。

[田中]それに対してね(国土交通省の)近畿地方整備局ってのは、ここは割合とね新しい治水をやろうという部署で、「観光の場所だからお客さんの少ない1月から3月に限ってあの地区を2015年からずっと3年間、浚渫(しゅんせつ)をしたんですよ。つまり、地球は生きてるから砂や砂利が落ちてきますでしょ川に。それをちゃんとあの場所を浚渫したんで今回の西日本豪雨では同じような降雨量だったのに無事だったんですよね。

[生島]んーん・・・。

世界的景勝地で初の水害対策 京都・桂川の災害復旧工事

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[田中]だからそうやって考えるとね、八ッ場ダムも1952年、僕が生まれる前に計画されて66年経ってもまだできてない。工事が始まったのが3年前でしょ。そうするとこういうこまめな浚渫、これ1平米で1万円で機械でできますからね、地元の業者の人ができる。あるいは堤防も、日本の堤防は(内部が)土と砂だけですから、アメリカや韓国とかヨーロッパは決壊するような場所には鉄板を2枚入れてるんですよね。そうするとすぐに決壊しない。これこそ製鉄メーカーもハッピー。地元の建設業の人も胸を張れる。
だからやっぱりみんなで治水やそういうことを考えないと「東京、大変ですよ」って「スーパー堤防を造りますよ」って400年かかるっていうんでしょ?万里の長城のような話ね。

[生島]ふふふ(笑)。

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[田中]しかも、江戸川区の人たちに「土地の買収をしないで進めます」って言うけど、土地をかさ上げするんだからその間いったいどこに家を移ってれば良いのか?っていうね。だからやっぱり治水のあり方が、いろんな意見があるけれどもやっぱり今できることは何か?そして長期的できることは、でないとね。「今後、何百人何千人死んじゃいますよ」って言われて、「じゃあ今やってることは何ですか?」と。「今は浚渫をどのくらいやってるんですか?」っていうことをメディアもね問いただしていただきたいなと私は思いますね。

[生島]それは良いポイントですね。了解しました。ありがとうございました。

[田中]どうもありがとうございました。

[生島]田中康夫さんでした。 

NEW!「不毛なカジノ論争を超えて」まとめサイト

月刊「VERDAD田中康夫の新ニッポン論61 カジノという「コンテンツ」加筆版

偉大な発明の電気やガスも、そのまま山中や街中に置くと樹木は焼け、人は死にます。それらを活用して如何なる利便や充実を生み出せるか。コンテンツ(中身)が問われているのです。なのに物体(オブジェクト)や話題(サブジェクト)が即ちコンテンツ、と勘違いし続ける“お子ちゃまニッポン”。

2016年12月施行の特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律=「カジノ解禁法」に続き、今年7月20日成立の特定複合観光施設区域整備法=「カジノ実施法」を巡り、相も変わらぬ神学論争が展開中です。

中内㓛(なかうち・いさお)氏と80年代の高度消費社会を牽引した堤清二(つじい・たかし)氏は「武器と麻薬と売春だけは決して扱わない」と事ある毎に発言しました。他方、辻井喬(つつみ・せいじ)氏と同じく作家のフョードル・ドストエフスキーは賭博(とばく)に嵌(は)まる性格が『罪と罰』を生み出しました。泥棒と娼婦という人類最古の職業に博徒(ばくと)も連なるのです。

日本のメディアが報じるお約束の“三大都市”はラスベガス、シンガポールマカオ。が、それ以外にも東京都港湾局がHPに記載する「合法カジノ」設置国は140ヶ国。イタリアのヴェネチア、ドイツのバーデン=バーデンにも由緒正しきカジノが存在します。ゴンドラで夙(つと)に知られる前者は元より街全体が比類なきコンテンツ。黒い森(シュヴァルツヴァルト)の一廓の、街の名称自体も“入浴=沐浴(もくよく)”を意味する後者のクアハウス(複合温泉施設)は、マレーネ・ディートリヒが風光を称揚し、ルーネットで身を滅ぼす『賭博者』の着想をドストエフスキーが得た時空。

西海岸での一攫千金(ゴールドラッシュ)の中継点としてネバダ砂漠に忽然(こつぜん)と誕生し、エルヴィス・プレスリーも舞台に立ったラスベガスは、1973年の為替レートで約5億円を浜田幸一氏が擦(す)った往時とは一変。世界最大のCES=全米家電見本市、IBM人工知能=ワトソンやアップルの新製品発表会等々。同僚や家族とともにミーティング(会議・研修)、インセンティヴ・ツアー(報奨旅行)、コンファランス(大会・学会)、エキシビション(展示会)即ちMICEに参加する人々が、ショーのステージやカジノにも足を運ぶ街へと変貌しました。

「外界からの悪い波を止め、自分達の街は自分達で護り育むのが波止場の矜恃」。藤木幸夫氏が会長を務める横浜港運協会は7月18日、公開講演会を開催。東京五輪大阪万博に象徴される経済効果の「一過性」から脱却し、宿泊・飲食・運送・観光等の多岐に亘る経済効果の「恒常性」を創出するMICE中核施設として、フランクフルトや上海と伍する規模の国際見本市が開催可能な25万平米以上の国際展示場を47万平米の山下ふ頭に民設・民営で実現を、とコペルニクス的転回を宣言したのです。

47万平米のハノーバーを筆頭に上海、フランクフルト、ミラノ、光州、昆明、ケルン、デュッセルドルフ、パリ、シカゴ。展示会場ベスト10は25万平米以上。日本最大ビッグサイトは10万平米に満たず世界77位。加えて「国策」東京五輪メディア・センターに用いる準備で来年4月から20ヶ月間、利用不可。虎視眈々(こしたんたん)と狙う中国勢。これぞ嘘偽りなき「国難」です。

返還後もスタンレー・ホー氏が君臨するマカオのカジノは『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』に登場したアゼルバイジャンのバクーと同様、中国やロシアの高官(シロヴィキ)&富豪(オリガルヒ)にとっての「資金洗浄マネーロンダリング)場」。ラスベガスやシンガポールとて、スロットマシンに興じる観光客のみで「採算」が取れる訳もありません。

「日本のIR構想なんて、童貞と処女がAVの脚本を書いてるレベルで赤子(あかご)の手を捻(ひね)るが如し」。知己(ちき)で大王製紙創業家三代目の井川意高(いかわ・もとたか)氏がインタヴューで微苦笑していたのを想起します。

http://tanakayasuo.me/top/wp-content/uploads/2018/07/7b49766a2ec4f0c438eb17c3c692e791.pdf

✽Ya’ssyメッセージ

今回の原稿「カジノという「コンテンツ」」は、

初校段階で10行ほど超過していた為、

幾度か編集部と行数を削減すべく遣り取りする中で、

藤木幸夫氏と井川意高氏の肩書を誤って落としてしまいました(汗)

「脱ダム」アーカイブ・参考資料
http://www.nippon-dream.com/?p=6773

10/07/15 ああ、ダムありきの“恥水”対策よ
http://www.nippon-dream.com/?p=403

サンデー毎日」連載「ささやかだけど、たしかなこと。」第5回 鬼怒川決壊の「真犯人」はだれか!?予防医学としての治水こそ新しい公共事業
http://www.nippon-dream.com/?p=15069

脱ダム政策の哲学と実践
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/nodams.pdf

しなやかな国土強靱化
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/56b252dcd6798974c9eb9ce7789e6ae72.pdf

巨大公共事業で地元は潤わない 
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/b90708120d9bd21e7b86863a8b31a25a.pdf

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2018年7月12日 TOKYO MX モーニングCROSS 田中康夫 羊頭狗肉な水管理・国土保全 造るから治す・護る、そして創るへ。松本元死刑囚四女遺骨は”海に散骨”発言をめぐって

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「註の新たな註」
「いまクリ」と「もとクリ」、その記憶の円盤が舞い続ける時空。

ようこそ現在から1980年の東京、そして日本へ❣
「✽文庫本化に際しての、ひとつの新たな長い註。」でお約束した「註の新たな註」は、
両書に登場する「字句の解釈」に留まらず、
高度消費社会の幕開けから現在に至る時代背景を、
関連する僕の拙稿等も紹介しながら絵解きしていくサイトです。

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