2019年8月28日 TOKYO MX モーニングCROSS 田中康夫 不毛なカジノ是非論争🎰 Part 3 カジノの実像 MICEの概念 持続可能な経済効果とは何か

[堀潤] いきましょう。オピニオンCROSS NEO。時刻は7時37分になりました。田中さんテーマの発表をお願いします。
[田中康夫] はい。
[堀]「カジノの実像 MICEの概念 持続可能な経済効果とは何か!」。
[宮瀬茉裕子] 横浜市の林文子市長は22日、IR・カジノを含む統合型リゾート施設を誘致すると正式表明しました。観光名所の山下公園に隣接する横浜港山下ふ頭に整備し、2020年代後半の開業を目指すとしています。この発表に対し山下ふ頭などを利用する港湾運送事業者およそ240社でつくる横浜港運協会は記者会見を開き、誘致に反対の意見を示しました。
[堀]さあ見ていきましょう。今、神奈川は揺れてます。
[田中]実はね、このフリップはちょうど今から1年と1ヶ月と1日前の2018年の7月27日にも私がここでお話をした内容(のタイトル)です。
[堀]そう言われてみればちょっと使い込んだフリップだなぁと。
[田中]NEOってなってないでしょ?
[堀]そうそう。(フリップのロゴが)NEOってなってない。
[田中]で、今、お名前が出た藤木幸夫さんという、横浜港運協会の会長であり日本港運協会の副会長、彼との対談も私、ちょうど1年前にさせて頂いて。私のホームページに対談が載っています。タイトルがですね「不毛なカジノ是非論争を超えて」というタイトルなのでご覧頂ければ。
[堀]今だからこそ改めて読み返したい。
[田中]全部読めますけれども。前回のモーニングCROSSの文字起こしも載ってます。藤木さんはどういう事を仰っているのか?単なるYesNoの反対論とか賛成論じゃないんですよ。あの場所、つまりあの(山下ふ頭と山下公園を眺める)場所を「港の見える丘公園」が「カジノが見える丘公園」に、山の上をしてどうすんの?ってとこから始まってるわけ。
[堀]嫌です。僕も横浜、中学3年から住んでるので、地元ですけど悲しいよ。
[田中]そしてね、確かに「カジノは世界に、140カ国にあるから日本も」ではなくて、日本の良さは「オンリーワン・ファーストワン」を出してきたことが、さきほどの(間伐材で木製のストローを商品化した)匠の人と同じようなものだったんじゃないの、と。で、彼はどういうことを言っているか?「クルーズ船が来る。日本にたくさんの人たちが来る。クルーズ船が横付け可能なところが山下ふ頭だ」と。
[堀]そうですね。
[田中]そしてそこは(既に)保税地域なんですよ。
[堀]うんうん。
[田中]そうするとね、そこに彼は日本一の見本市展示場を、日本で今一番大きいのが、東京ビッグサイトでも10万平米にも満たないんですよ。これは世界の展示場の、後でお見せしますが、77番目の面積。あとはもっと低いの。それを25万平米くらいのものを作れば、世界で唯一、(船を)横付けをしたところに保税なので、見本市に出す物も世界から関税(通関)しないで出せるでしょ?
[堀]そうか。
[田中]そしてね、展示場というのは何か?というと、(食事も宿泊も全て中で済ませるカジノと違って)展示場のなかで囲い込まないんですよ。つまり「外の中華街でもご飯を食べてくれる。ホテルにも泊まる、ホテルで会議もやってくれる。みんな、その展示場の出展する人も、見に来る人も家族でやって来てくれる。そこで運搬をする人たちも含めて大変な、持続的な雇用なんだ」と。「オリンピックやります!万博やります!、必ず宴の後のリバウンドがあるでしょ?」と。それをわたしたちは、世界で初めて海からアクセス可能な25万平米っていうと世界の10位くらいになるんですよ。
[堀]思い返せば横浜のあのコンパクトな感じっていうのは、あれそのものがIRみたいなもんですからね。
[田中]そう。「だからそれを民設・民営でハーバーリゾートをやることが持続可能な雇用と活力だよ」って彼は具体的にずっと仰ってんの。
[堀]良いじゃないですか。
[田中]するとね、よく出てくる(話)が、「日本はいっぱい…、だって競馬、競輪、競艇、みんな国が国営胴元でギャンブルやってるし、パチンコどうよ?」って仰ってる人たちがいるの。ご存知のように竹下登さんの時から7内閣で官房副長官を務めた石原信雄さんが先日、日本経済新聞の『私の履歴書』でこういうことを書いた。「全国1万店舗のパチンコは地域と関連が深く各自治体に利益を外形標準課税的に還元(納税)する道があってよい」と。つまりここの税収も、全部、国の法人税。本社がある大阪とか名古屋のところに(地方税の)法人事業税が行ってて、全国にパチンコ、良い悪いじゃなくて、どんな過疎の所にもあるでしょ?そこの人が使ってるでしょ?雇用してるでしょ?「そこの税収というものを各自治体に割り振るということこそが地方分権だ」ってことを石原さんも仰ってるわけ。じゃあ藤木さんはどういうことをずっと仰ってるかというと、「IR法って本来は統合型リゾートを整備する法律だったんでしょ?」と。
[堀]仰る通り。
[田中]「なんでカジノ一辺倒になるんですか?日本の『タンス預金』を狙ってるのは明らかだ」と。
[堀]そうだ。
[田中]つまりね、公共事業は一応、ゼネコンに(お金が)行くとしても国内で回ってんですよ。カジノ、今度来るのどこですか?
[堀]外資系。
[田中]シンガポールの会社、アメリカの会社。全部それは、シンガポールやマカオはマネー・ロンダリングの場所ですよ、サロン(ヴェネチアやバーデン=バーデンのようなサローネ)じゃないんだ。そんなところに(お金が)行ってどうするの?ってことを仰ってるの。これが藤木さんのご意見。私はその通りだと思う。で、藤木さんが、「顔に泥を塗られちゃったかな」と。「でも泥塗った人はもっとハード・パワーの人たちだよね」って。「アメリカの言うことならなんでも聞いちゃう人たちかな」って言ったんだけど。
[堀]ふふふ。
[田中]カジノありきの三段論法が市長のご意見です。これ、会見で仰ったこと。「横浜の観光客は日帰りが87%だから消費が少ない」と。「世界中の人が長期滞在して喜べるようなもの、それはカジノですね、…があれば非常に喜ぶ」。いい?このあいだ埼玉知事選あったけれども、埼玉の小江戸と呼ばれる川越、宿泊なんかないよ?
[堀]そうですね。
[田中]でもなんであれだけ地元が潤ってんの?
[堀]うんうん。
[田中]で、それに対して「(横浜は)もう人口が減ってって」って、でも人口減ってんの日本全国(笑)。
[堀]はい。
[田中]日本で一番大きな政令指定都市横浜だけじゃないんだよって。
[堀]そうだよ。
[田中]で、会見の最後で仰ったのが「カジノを機軸とするリゾートの誘致こそ市民のみなさまの安心、安全、幸せな生活をしっかりお支えしていく」ってんの。
[堀]違うよ。
[田中]だから藤木さんは「それ、違うでしょ」と。
[堀]うん。
[田中]世界の展示場、これ、日本(で一番大きな東京ビッグサイトでも面積は世界ランキングで)、77番目だよ。「もっとこういうものを作った方が永続的だよ」って言ってるんだよね。
[堀]カジノ抜きの別のアミューズメントのIRで良いじゃない。
[田中]そうなの。だからこれも1年前にお見せしたフリップ。井川意高(いかわもとたか 大王製紙前会長)さんが実体験を踏まえて 「日本のIR構想=カジノ法なんて、童貞と処女がAVの脚本を書いてるような頭でっかちだから、外国の人からすれば赤子の手をひねるが如しだよ」って言ってるの。
[堀]井川さんは「溶かした」張本人だからよくご存知なんでしょう、カジノの舞台裏を。
[田中]「それでもカジノだよ」って仰る人たちは…。実はカジノには2種類ある。これ、ベネチアの(運河沿いの)カジノ(の写真)。クルーズ船で来て観光があって、こういう素敵なサロンなんですよ。あるいはドイツの(温泉保養地の)バーデン=バーデン。マレーネ・ディートリッヒが世界で一番美しいカジノだって言ったの。こういうものになるなら良いけど、ハコモノありきじゃないよね?って。
[堀]南和行さん、いかがですか?今のお話。
[南和行]結局、利権だってみんな思ってることですよね。なんでここまでね、理屈で言うとおかしいなっていうことを。政治主導って言うけど、だれも言ってない政治主導って。やっぱり利権じゃないんですか?っていう。
[堀]いやぁもう是非、注視していきたいですが。
[田中]しかも利権(売上の利益)が国内で落ちないっていうところが大きな問題よ。
[堀]うん、おかしいね。ありがとうございました。

Vol.586宿泊無しでも千客万来な小江戸川越
そぞろ歩き温泉街で復権の城崎温泉
「他力本願では港町KOBEの後塵すら拝する」危機感を抱いて奮闘する
ハマっ子の地頭こそが超〜カジノ宣言の原動力だ! - YouTube

 

[堀潤] いきましょう。オピニオンCROSS NEO。時刻は7時37分になりました。田中さんテーマの発表をお願いします。
[田中康夫] はい。
[堀]「カジノの実像 MICEの概念 持続可能な経済効果とは何か!」。

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[宮瀬茉裕子] 横浜市の林文子市長は22日、IR・カジノを含む統合型リゾート施設を誘致すると正式表明しました。観光名所の山下公園に隣接する横浜港山下ふ頭に整備し、2020年代後半の開業を目指すとしています。この発表に対し山下ふ頭などを利用する港湾運送事業者およそ240社でつくる横浜港運協会は記者会見を開き、誘致に反対の意見を示しました。
[堀]さあ見ていきましょう。今、神奈川は揺れてます。
[田中]実はね、このフリップはちょうど今から1年と1ヶ月と1日前の2018年の7月27日にも私がここでお話をした内容(のタイトル)です。
[堀]そう言われてみればちょっと使い込んだフリップだなぁと。

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2018年7月27日 TOKYO MX モーニングCROSS 田中康夫 今回のIR構想の痛さを判りやすく解説👯周回遅れな島国ニッポン🇯🇵不毛なカジノ是非論争🎰 オウム真理教残る6人の刑執行 文科省に集中?官僚逮捕

[田中]NEOってなってないでしょ?
[堀]そうそう。(フリップのロゴが)NEOってなってない。
[田中]で、今、お名前が出た藤木幸夫さんという、横浜港運協会の会長であり日本港運協会の副会長、彼との対談も私、ちょうど1年前にさせて頂いて。私のホームページに対談が載っています。タイトルがですね「不毛なカジノ是非論争を超えて」というタイトルなのでご覧頂ければ。
[堀]今だからこそ改めて読み返したい。
[田中]全部読めますけれども。前回のモーニングCROSSの文字起こしも載ってます。

田中康夫 公式サイト「不毛なカジノ是非論争を超えて」まとめ

「カジノ」は街を滅ぼす!「異次元の劇薬」ではなく、持続可能な経済効果を!

横浜(ハマ)の首領藤木幸夫氏(88)怒りの激白
「サンデー毎日」9月9日号

7月に「カジノ実施法」が成立した。観光立国と地域経済の盛り上げが喧伝されるなか、「横浜の首領」と言われる藤木幸夫・横浜港運協会会長が、「カジノは街を滅ぼす」と立ちはだかった。
都市の自律的な発展を思考してきた田中康夫氏が、藤木氏に訊きながら、カジノ問題の本質に迫る―。

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「カジノ」は街を滅ぼす!「異次元の劇薬」ではなく、持続可能な経済効果を!

横浜(ハマ)の首領藤木幸夫氏(88)怒りの激白 「サンデー毎日」9月9日号

7月に「カジノ実施法」が成立した。観光立国と地域経済の盛り上げが喧伝されるなか、「横浜の首領」と言われる藤木幸夫・横浜港運協会会長が、「カジノは街を滅ぼす」と立ちはだかった。 都市の自律的な発展を思考してきた田中康夫氏が、藤木氏に訊きながら、カジノ問題の本質に迫る―。

 

「臨海部を活性化する上で有効だ」。 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」=「カジノ解禁法」が成立したのは今から1年9ヶ月前。「横浜市、臨海部再開発に弾み カジノ経済効果6000億円 雇用創出6万人超」の見出しで、「産経新聞」は冒頭の横浜市長のコメントを紹介し、「財界からも“ラブコール”」、「横浜の観光客は日帰り客中心だがカジノ導入で滞在型観光になる」と報じました。 「統合型リゾート(IR)整備推進法」とも呼ばれる同法に続いて今年7月には「カジノ実施法」=「特定複合観光施設区域整備法」も国会で成立。因みにIRとはIntegrated Resortの略号。企業が経営状況や財務状況を発信する「投資家向け広報」Investor Relationsとは異なります。 既に昨年3月に設置の「特定複合観光施設区域整備推進本部」は、「観光立国ニッポン」の“意気込み”を体現するかの如く、全ての国務大臣が構成員。本部長は内閣総理大臣。猛暑を超える酷暑が不可避の時期に敢行される2020年東京オリンピックに続く「同調圧力」です。 こうした中、横浜港運協会の藤木幸夫会長は昨年来、「カジノは街を滅ぼす」と警鐘を鳴らし続けています。7月18日には協会主催の公開講演会を開催し、「山下ふ頭開発基本計画」で横浜市が謳う「ハーバーリゾートの形成」にカジノは不要と高らかに宣言。 米寿を8月18日に迎えた藤木さんは、「悪い波を止め、自分たちの街は自分たちで護るのが『波止場』の心意気だ」と語ります。父親の幸太郎氏が1923年=大正12年に興した藤木組が前身の、船内や沿岸、倉庫の荷役等の港湾運輸事業を手掛ける横浜市中区北浜通の藤木企業にお邪魔して、「コペルニクス的転回」として注目を集める一連の発言の深意を改めてお聞きしました。          

藤木 今の政治も経済も、リーダーと称する方々があまりにもお粗末で、その日本に住んでいる横浜市民の私は、果たして日本という国がこれからも存在し続けるだろうか、と懸念しているんです。 昭和20年に戦争が終わって、憲法と同時に地方自治法が昭和22年に施行された。セルフ・ガバメント。当時17歳の私にとって、それは仰ぎ見るシャンデリアでしたよ。今度は県知事を住民が選べるのか。国から派遣されるんじゃないんだ。市長もそうだよ。いやぁ、えらいことになったなという感じです。昭和27年には平和条約も結ばれた。 でも、それは“占領下の泡”だったんですね。逆に今、地方自治法によって、どれだけ地方が害されているか。どれだけ中央政府が地方自治体を舐めているか。矛盾があちこちに出てきているんです。

田中 東京で生まれた僕が思春期を過ごした信州で県知事に就任した今から18年前、それまでの53年間で公選知事は僅か3人。5期務めた前任者は旧自治省出身でした。現在47都道府県知事の6割は霞ヶ関の官僚出身です。県庁職員出身者も含めれば7割近い。

藤木 トランプさんに「頼むぜ」と肩叩かれて「はい」と応えたのがカジノです。ファーストネームで呼ばれて、舞い上がっている。周囲も忖度どころか、おべっか使いな人たちが中央政府に集っている。カジノの問題を捉えて話を出す場合に、その前後の姿、それを扱っている日本の政治の自律性のなさ、それは何なんだ、というところから始めなきゃならない。 小泉チルドレンから始まって小沢チルドレンとか色々ありましたが、今やチルドレン以下じゃないですか。そういう人たちがワッショイ、ワッショイと決めたもの、それがカジノなんです。そんなものを持ってこられたら、我々の現場にゴミを捨てられるようなものだから、住民の1人として反対する。そんなゴミは捨てないでくれと。

田中 成る程、言い得て妙ですね。

藤木 コンテナ船が着岸する本牧ふ頭、大黒ふ頭、南本牧ふ頭を中心に国際戦略港湾として充実を図る中で、在来型貨物船向けに高度成長期の前半に整備された山下ふ頭の利活用が議論となっていてね、そこに降って湧いたのがカジノだ。でも、カジノが市民の暮らしに貢献できるかい?

田中 大王製紙創業家三代目の井川意高(もとたか)さんはご自身の体験を踏まえて、「日本のIR法=カジノ法は童貞と処女がAVの脚本を書いてるレベル。(百戦錬磨な海外のカジノ運営業者にとって)赤児の手を捻(ひね)るようなものだ」と語っています。

藤木 IR法は本来、統合型リゾートを整備する法律でしょ。どうしてカジノ一辺倒になるんですか。 山下公園に隣接する47万平方メートルの山下ふ頭は、海に面した絶好のロケーションだ。マッターホルンの山裾のツェルマットでは、住民が主体的に観光施設の運営を担っている。横浜でも港湾人の我々が、世界で初めて海からアクセス可能な25万平方メートル規模の国際展示場を民設・民営で設けようと。中長期滞在型のチャーミングな宿泊施設も用意すれば、ビジネスチャンスを求めて国内外から多くの人々が家族連れで訪れるハーバーリゾートとなる。          

「海外からのお客を増やす策として、東京の更なる魅力を付ける為にもあってもいいと思う」とカジノ誘致への色気を都知事が語る東京都港湾局のHPには、「合法カジノ」設置国は全世界に140ヶ国と記されています。思えば作家のフョードル・ドストエフスキーは、賭博に嵌(は)まる自身の性状が、不朽の名作『罪と罰』『賭博者』を生み出しました。泥棒と娼婦という人類最古の職業の一群に、博徒(ばくと)も連なるのです。 実際問題、日本には公営ギャンブルが幾つも存在します。中央競馬は農水省、地方競馬は総務省、競艇は国交省、競輪とオートレースは経産省。監督官庁から天下りが送り込まれ、全国で1万店舗を超えるパチンコパーラーも同様に警察庁が所管しています。カジノにだけ目くじらを立てるのこそ、時代錯誤な「矯風会(きょうふうかい)」的発想だよ、と推進派が主張する所以(ゆえん)です。 英語で賭博はギャンブリング。博徒はギャンブラー。実は和製英語のギャンブル。その「カジノ」には2種類存在するのです。ヴェネチアやバーデン=バーデンに象徴される「サロン」としてのカジノ。マカオやバクーに代表される「マネーロンダリング」としてのカジノ。 ヴェネチアの運河沿いで1963年から営まれる、ジャコモ・カサノヴァも繁く通った世界最古のカジノは、歴史の年輪を感じさせる落ち着いた佇まい。ドイツの黒い森の一廓の、街の名前のバーデン=バーデン自体が“入浴=沐浴(もくよく)”を意味する温泉保養地のカジノも250年以上の歴史を誇り、「世界で最も美しい」とマレーネ・ディートリッヒが称揚した時空です。 返還後もスタンレー・ホー氏の一族が君臨するマカオは一時期、「賄賂社会」として知られる中国の高官を経営者が「接待」する場として活況を呈しました。ディーラーと呼ばれるスタッフと示し合わせて、自分が、或いは雇った「プロ」が敢えて負けて、「合法的」な資金洗浄を完遂です。が、好事魔多し。習近平国家主席が手綱を引き締めるや閑古鳥が鳴いています。 以前に僕が訪れたアゼルバイジャンのバクーに雨後の筍の如く誕生したカジノも、シロヴィキと呼ばれるロシアの高官をオリガルヒと呼ばれる富豪が「接待」する場として『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』に登場しています。 「明るい北朝鮮」とも評される「開発独裁国家」シンガポールで朝鮮労働党の金正恩委員長が足を伸ばした、ドナルド・トランプ大統領の盟友シェルドン・アデルソン氏が経営するマリーナ・ベイ・サンズとて、スロットマシンに興ずる観光客のみで「採算」が取れる訳もないのです。 にも拘(かかわ)らず、「シンガポールのIR、半端ないって。敷地面積で5%に満たぬカジノが全体の80%もの売上を稼ぎまくる」と口角泡を飛ばす面々のみならず、日本政府の官邸HPにも「シンガポールではIR開業後4年で国全体の観光客数が6割、観光収入が9割増加」と記されています。 シンガポール、マカオに加えて推進派が喧伝(けんでん)する“カジノ三大都市”の「本家本元」はラスヴェガス。19世紀半ばに一攫千金(いっかくせんきん)を西海岸に求めたゴールドラッシュの中継点としてネバダ砂漠に忽然(こつぜん)と誕生した街は、1973年の為替レートで約5億円を浜田幸一(ハマコー)氏が擦(す)った往時とは一変。 世界最大の全米家電見本市=CES、IBMの人工知能ワトソン、アップルの新製品発表会等々。同僚や家族と共にミーティング(会議・研修)、インセンティヴ・ツアー(報奨旅行)、コンファランス(大会・学会)、エキシビション(展示会)、即ちMICEに参加する人々が、バリー・マニロウを始めとするアーチストのショーを楽しんだ後にカジノへも足を運ぶ「ファミリー・デスティネーション」の街へと変貌しました。 そのラスヴェガスの昨今の収益構造はカジノ40%、ショー&イヴェント30%、飲食&ショッピング15%、宿泊15%。カジノ65%の一本足打法で失速気味のマカオとは異なります。          

藤木 お台場の先の東京ビッグサイトは、10万平方メートルにも満たないんだってね。日本最大の展示場が世界では77位と聞いて、情けなくなったよ。

田中 47万平方メートルのハノーヴァーを筆頭に、上海、フランクフルト、ミラノ、広州、昆明(こんめい)、ケルン、デュッセルドルフ、パリ、シカゴ。幾つか僕も訪れたことがありますが、見本市会場面積ベスト10は何(いず)れも25万平方メートル以上です。景気のリバンドを伴う「一過性」の東京五輪や大阪万博と違って、MICEは経済効果の「恒常性」を創出しますから。

藤木 宿泊・飲食・運送・観光と多岐に亘(わた)って、多くの雇用を地元に生み出すからね。 今、世界を見ると、金を持っている奴の勝ちという金融資本主義。まだ金融だけで止めておけば良いんだけど、金融の後に「マフィア」という単語が付くんだ。金融マフィア同然の連中が跋扈(ばっこ)して、それを多くの国の政府がウェルカムしている。嘆かわしいね。カジノ客は海外からという計算は、現実と違うだろう。日本の「タンス預金」を狙っているのは明らかだ。 唐突に聞こえるかも知れないが、1917年にロシア革命が起きて、今年は2018年でしょ。“資本主義”とは資本が元金で、主義というのはやり方。だから、元金をどうやって増やすか、それしか頭にない連中は、汗をかいて利益を上げたのと、人を騙して利益を上げたのと、その見境が付かなくなる時期が来る。それが資本主義と組む怖さだ、と(ウラジミール・)レーニンは言ってるんです。 だから皆、平等でいこうと美しいことを言ったものの、結果は伴ってないから、あまり彼を褒める訳にはいかないけどね。でも、101年経って、それが私たちの目の前に現れてしまっている。その中で、市民全体の将来を考えるのが、波止場で働く港湾人の使命だ。 今回も中央政府は、山下ふ頭にカジノを持ってきたらどうか、と考えている。しかし港湾人としては、あの場所を賭博場にされては困るんです。ただ、反対、反対と言ってるだけじゃ詮方ないから、それで上海や広州に引けを取らない見本市会場を中心としたMICEを展開して、市民の暮らしに貢献しようじゃないか。横浜港運協会の会長として、そう考えているんです。         

実は幕張メッセも東京ビッグサイトも、「国策」東京五輪メディアセンター等に用いる準備で来年4月から20ヶ月、利用不可。その「ビジネスチャンス」を虎視眈々と狙う中国と韓国。見本市という事業は、場所が移ったら、もう戻ってこない。これぞ嘘偽りなき「国難」です。にも拘らず、日本のメディアは一向に取り上げません。 藤木さんは横浜エフエム放送の社長も務めます。設立時、県域FM放送局は県名を社名に用いよ、と行政指導する旧郵政省に対し、「いや、世界的に知名度のあるYOKOHAMAでなきゃ、俺は降りる」と凄(すご)んだ武勇伝の持ち主。 僕自身が選曲とお喋りを担当する音楽番組「たまらなく、AOR」を3年前から担当しているご縁で幾度か謦咳(けいがい)に接する度、彼こそは「イデオロギーを超越した国士」と呼び得る俊豪(しゅんごう)だと感銘を受けます。 「雇用と活力を地元に生むのは、他国に伍する規模の見本市会場だ」。「コペルニクス的転回」を訴える“横浜愛”の深意が、真っ当なる市民・国民の心に届く事を願ってやみません。

[田中]藤木さんはどういう事を仰っているのか?単なるYesNoの反対論とか賛成論じゃないんですよ。あの場所、つまりあの(山下ふ頭と山下公園を眺める)場所を「港の見える丘公園」が「カジノが見える丘公園」に、山の上をしてどうすんの?ってとこから始まってるわけ。

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2019年8月24日 TBSラジオ ナイツのちゃきちゃき大放送 地元にカネが落ちないダム建設と同じバキューム産業がカジノ🎰 十年先のニッポンを見抜く横浜港運協会⚓藤木幸夫会長の諫言❣ ゲスト 田中康夫

2018年7月28日 TBSラジオ ナイツのちゃきちゃき大放送 🇺🇸周回遅れな島国ニッポン🇯🇵不毛なカジノ是非論争🎰Part 2 ゲスト 田中康夫

Vol.580 人類最古の職業は泥棒・娼婦と博徒!だからカジノYES or NOの短絡思考でなく地元にカネが落ちないダム建設と同じバキューム産業がカジノ!十年先のニッポンを見抜く横浜港運協会 - YouTube

Vol.581 カジノありきのハコモノ三段論法では欧米どころかアジアにも太刀打ち出来ない!
イデオロギーを超越した国士・藤木幸夫さんのヨコハマ愛!
「モニクロ」以上に判り易く代替案をお届け!- YouTube

藤木幸夫氏インタヴュー 神奈川新聞 2018年07月18日

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《壁撞き》 横浜美術館 蔡國強展:帰去来 - YouTube

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[堀]嫌です。僕も横浜、中学3年から住んでるので、地元ですけど悲しいよ。
[田中]そしてね、確かに「カジノは世界に、140カ国にあるから日本も」ではなくて、日本の良さは「オンリーワン・ファーストワン」を出してきたことが、さきほどの(間伐材で木製のストローを商品化した)匠の人と同じようなものだったんじゃないの、と。で、彼はどういうことを言っているか?「クルーズ船が来る。日本にたくさんの人たちが来る。クルーズ船が横付け可能なところが山下ふ頭だ」と。

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[堀]そうですね。
[田中]そしてそこは(既に)保税地域なんですよ。
[堀]うんうん。
[田中]そうするとね、そこに彼は日本一の見本市展示場を、日本で今一番大きいのが、東京ビッグサイトでも10万平米にも満たないんですよ。これは世界の展示場の、後でお見せしますが、77番目の面積。あとはもっと低いの。それを25万平米くらいのものを作れば、世界で唯一、(船を)横付けをしたところに保税なので、見本市に出す物も世界から関税(通関)しないで出せるでしょ?
[堀]そうか。

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資料:(一社)日本展示会協会                      

[田中]そしてね、展示場というのは何か?というと、(食事も宿泊も全て中で済ませるカジノと違って)展示場のなかで囲い込まないんですよ。つまり「外の中華街でもご飯を食べてくれる。ホテルにも泊まる、ホテルで会議もやってくれる。みんな、その展示場の出展する人も、見に来る人も家族でやって来てくれる。そこで運搬をする人たちも含めて大変な、持続的な雇用なんだ」と。「オリンピックやります!万博やります!、必ず宴の後のリバウンドがあるでしょ?」と。それをわたしたちは、世界で初めて海からアクセス可能な25万平米っていうと世界の10位くらいになるんですよ。
[堀]思い返せば横浜のあのコンパクトな感じっていうのは、あれそのものがIRみたいなもんですからね。
[田中]そう。「だからそれを民設・民営でハーバーリゾートをやることが持続可能な雇用と活力だよ」って彼は具体的にずっと仰ってんの。
[堀]良いじゃないですか。

[田中]だからむしろ私たちは、例えば東京オリンピックや万博ってのは必ず一過性なのでリバウンドがあるじゃないですか?経済が。「むしろ恒常的な経済にしよう」ということで彼は「MICEこそ持続的な経済効果だ」と言っている。「MICE(マイス)」ってのは何かっていうとミーティング(会議・研修)インセンティブ・ツアー(報奨旅行)、特に営業の方とかが表彰されて家族で行ける。そしてコンファランス(大会・学会)、エキシビション(展示会・見本市)。で、これの優等生が実はなんとラスベガスなんですよ。ラスベガスはゴールド・ラッシュでカジノができたと思ってるけど、ラスベガスは今はもう、ファミリー・ディスティネーションなんですよ。すなわち全米家電見本市という大変大きなもの、あるいはIBMのワトソン (コンピュータ)の発表会やGoogleの発表会、Appleの発表会、ですからカジノの収入は半分以下でむしろ色んなアーティストのショーとか、そしてショッピング・宿泊なの。マカオは(ギャンブルの収入比率が)65パーセントで、逆に習近平氏が「(賄賂の温床となるカジノでの)マネロン、駄目だ」って言ったら急に閑古鳥が鳴いてるわけですよ。そういう展示場って何か?モーター・ショーとかじゃなくてね、「見本市」。なんとそれを行える総展示面積ってのはこんなに日本は少ないんですよ。  

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via 2018年7月27日 TOKYO MX モーニングCROSS 田中康夫 今回のIR構想の痛さを判りやすく解説👯周回遅れな島国ニッポン🇯🇵不毛なカジノ是非論争🎰 オウム真理教残る6人の刑執行 文科省に集中?官僚逮捕 - 田中康夫 Speech To Text Online

[田中]するとね、よく出てくる(話)が、「日本はいっぱい…、だって競馬、競輪、競艇、みんな国が国営胴元でギャンブルやってるし、パチンコどうよ?」って仰ってる人たちがいるの。ご存知のように竹下登さんの時から7内閣で官房副長官を務めた石原信雄さんが先日、日本経済新聞の『私の履歴書』でこういうことを書いた。「全国1万店舗のパチンコは地域と関連が深く各自治体に利益を外形標準課税的に還元(納税)する道があってよい」と。つまりここの税収も、全部、国の法人税。本社がある大阪とか名古屋のところに(地方税の)法人事業税が行ってて、全国にパチンコ、良い悪いじゃなくて、どんな過疎の所にもあるでしょ?そこの人が使ってるでしょ?雇用してるでしょ?「そこの税収というものを各自治体に割り振るということこそが地方分権だ」ってを石原さんも仰ってるわけ。じゃあ藤木さんはどういうことをずっと仰ってるかというと、「IR法って本来は統合型リゾートを整備する法律だったんでしょ?」と。

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[堀]仰る通り。
[田中]「なんでカジノ一辺倒になるんですか?日本の『タンス預金』を狙ってるのは明らかだ」と。
[堀]そうだ。
[田中]つまりね、公共事業は一応、ゼネコンに(お金が)行くとしても国内で回ってんですよ。カジノ、今度来るのどこですか?
[堀]外資系。
[田中]「シンガポールの会社、アメリカの会社。全部それは、シンガポールやマカオはマネー・ロンダリングの場所ですよ、サロン(ヴェネチアやバーデン=バーデンのようなサローネ)じゃないんだ。そんなところに(お金が)行ってどうするの?」ってことを仰ってるの。これが藤木さんのご意見。私はその通りだと思う。で、藤木さんが、「顔に泥を塗られちゃったかな」と。「でも泥塗った人はもっとハード・パワーの人たちだよね」って。「アメリカの言うことならなんでも聞いちゃう人たちかな」って言ったんだけど。
[堀]ふふふ。
[田中]カジノありきの三段論法が林文子横浜市長のご意見です。これ、会見で仰ったこと。「横浜の観光客は日帰りが87%だから消費が少ない」と。「世界中の人が長期滞在して喜べるようなもの、それはカジノですね、…があれば非常に喜ぶ」。いい?このあいだ埼玉知事選あったけれども、埼玉の小江戸と呼ばれる川越、宿泊なんかないよ。

[堀]そうですね。

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[田中]でもなんであれだけ地元が潤ってんの?
[堀]うんうん。
[田中]で、それに対して「(横浜は)もう人口が減ってって」って、でも人口減ってんの日本全国(笑)。
[堀]はい。
[田中]日本で一番大きな政令指定都市横浜だけじゃないんだよって。
[堀]そうだよ。
[田中]で、会見の最後で仰ったのが「カジノを機軸とするリゾートの誘致こそ市民のみなさまの安心、安全、幸せな生活をしっかりお支えしていく」ってんの。

[堀]違うよ。
[田中]だから藤木さんは「それ、違うでしょ」と。
[堀]うん。
[田中]世界の展示場、これ、日本(で一番大きな東京ビッグサイトでも面積は世界ランキングで)、77番目だよ。「もっとこういうものを作った方が永続的だよ」って言ってるんだよね。
[堀]カジノ抜きの別のアミューズメントのIRで良いじゃない。
[田中]そうなの。だからこれも1年前にお見せしたフリップ。井川意高(いかわもとたか 大王製紙前会長)さんが実体験を踏まえて 「日本のIR構想=カジノ法なんて、童貞と処女がAVの脚本を書いてるような頭でっかちだから、外国の人からすれば赤子の手をひねるが如しだよ」って言ってるの。

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[堀]井川さんは「溶かした」張本人だからよくご存知なんでしょう、カジノの舞台裏を。
[田中]「それでもカジノだよ」って仰る人たちは…。実はカジノには2種類ある。これ、ベネチアの(運河沿いの)カジノ(の写真)。クルーズ船で来て観光があって、こういう素敵なサロンなんですよ。あるいはドイツの(温泉保養地の)バーデン=バーデン。マレーネ・ディートリッヒが世界で一番美しいカジノだって言ったの。こういうものになるなら良いけど、ハコモノありきじゃないよね?って。

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Saloneの意味

バーデン=バーデン

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ヴェネチア

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[堀]南和行さん、いかがですか?今のお話。
[南和行]結局、利権だってみんな思ってることですよね。なんでここまでね、理屈で言うとおかしいなっていうことを。政治主導って言うけど、だれも言ってない政治主導って。やっぱり利権じゃないんですか?っていう。
[堀]いやぁもう是非、注視していきたいですが。
[田中]しかも利権(売上の利益)が国内で落ちないっていうところが大きな問題よ。
[堀]うん、おかしいね。ありがとうございました。

VERDAD 2018/8月号 田中康夫の新ニッポン論61 「カジノという「コンテンツ」」

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偉大な発明の電気やガスも、そのまま山中や街中に置くと樹木は焼け、人は死にます。それらを活用して如何なる利便や充実を生み出せるか。コンテンツ(中身)が問われているのです。なのに物体(オブジェクト)や話題(サブジェクト)が即ちコンテンツ、と勘違いし続ける“お子ちゃまニッポン”。 2016年12月施行の特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律=「カジノ解禁法」に続き、今年7月20日成立の特定複合観光施設区域整備法=「カジノ実施法」を巡り、相も変わらぬ神学論争が展開中です。 中内㓛(なかうち・いさお)氏と80年代の高度消費社会を牽引した堤清二(つじい・たかし)氏は「武器と麻薬と売春だけは決して扱わない」と事ある毎に発言しました。他方、辻井喬(つつみ・せいじ)氏と同じく作家のフョードル・ドストエフスキーは賭博(とばく)に嵌(は)まる性格が『罪と罰』を生み出しました。泥棒と娼婦という人類最古の職業に博徒(ばくと)も連なるのです。 日本のメディアが報じるお約束の“三大都市”はラスベガス、シンガポール、マカオ。が、それ以外にも東京都港湾局がHPに記載する「合法カジノ」設置国は140ヶ国。イタリアのヴェネチア、ドイツのバーデン=バーデンにも由緒正しきカジノが存在します。ゴンドラで夙(つと)に知られる前者は元より街全体が比類なきコンテンツ。黒い森(シュヴァルツヴァルト)の一廓の、街の名称自体も“入浴=沐浴(もくよく)”を意味する後者のクアハウス(複合温泉施設)は、マレーネ・ディートリヒが風光を称揚し、ルーネットで身を滅ぼす『賭博者』の着想をドストエフスキーが得た時空。 西海岸での一攫千金(ゴールドラッシュ)の中継点としてネバダ砂漠に忽然(こつぜん)と誕生し、エルヴィス・プレスリーも舞台に立ったラスベガスは、1973年の為替レートで約5億円を浜田幸一氏が擦(す)った往時とは一変。世界最大のCES=全米家電見本市、IBMの人工知能=ワトソンやアップルの新製品発表会等々。同僚や家族とともにミーティング(会議・研修)、インセンティヴ・ツアー(報奨旅行)、コンファランス(大会・学会)、エキシビション(展示会)即ちMICEに参加する人々が、ショーのステージやカジノにも足を運ぶ街へと変貌しました。 「外界からの悪い波を止め、自分達の街は自分達で護り育むのが波止場の矜恃」。藤木幸夫氏が会長を務める横浜港運協会は7月18日、公開講演会を開催。東京五輪や大阪万博に象徴される経済効果の「一過性」から脱却し、宿泊・飲食・運送・観光等の多岐に亘る経済効果の「恒常性」を創出するMICE中核施設として、フランクフルトや上海と伍する規模の国際見本市が開催可能な25万平米以上の国際展示場を47万平米の山下ふ頭に民設・民営で実現を、とコペルニクス的転回を宣言したのです。 47万平米のハノーバーを筆頭に上海、フランクフルト、ミラノ、広州、昆明、ケルン、デュッセルドルフ、パリ、シカゴ。展示会場ベスト10は25万平米以上。日本最大ビッグサイトは10万平米に満たず世界77位。加えて「国策」東京五輪メディア・センターに用いる準備で来年4月から20ヶ月間、利用不可。虎視眈々(こしたんたん)と狙う中国勢。これぞ嘘偽りなき「国難」です。 返還後もスタンレー・ホー氏が君臨するマカオのカジノは『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』に登場したアゼルバイジャンのバクーと同様、中国やロシアの高官(シロヴィキ)&富豪(オリガルヒ)にとっての「資金洗浄(マネーロンダリング)場」。ラスベガスやシンガポールとて、スロットマシンに興じる観光客のみで「採算」が取れる訳もありません。 「日本のIR構想なんて、童貞と処女がAVの脚本を書いてるレベルで赤子(あかご)の手を捻(ひね)るが如し」。知己(ちき)で大王製紙創業家三代目の井川意高(いかわ・もとたか)氏がインタヴューで微苦笑していたのを想起します。
NEW! VERDAD 2018/9月号 田中康夫の新ニッポン論74 「体温が感じられる社会」

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「もはや社会なんてものは存在しない(There is no such thing as society)。自分で自分の面倒を見るのが国民の義務だ」。身も蓋もない経済的新自由主義の「自己責任論」を掲げてマーガレット・サッチャーが大英帝国の宰相に就任したのは40年前の1979年。
『ニューズウィーク』元東京支局長で『フォーリン・ポリシー』寄稿編集者のクリスチャン・カリル氏は著書『すべては1979年から始まった』で彼女を含む4名、即ち「改革開放」を旗印に建国30周年の中国で国家資本主義を導入した鄧小平、「東欧民主化」に向けて米国CIAと連携して故国ポーランドを訪問したヨハネ・パウロ2世、亡命先からイランに帰国し「イラン・イスラム革命」を主導したシーア派指導者ルーホッラー・ホメイニーを「21世紀を方向づけた反逆者たち」と規定。
奇しくも同年にアフガニスタンへ侵攻したソビエトは10年後の89年に消滅し、ベルリンの壁も崩壊。市場原理主義と宗教原理主義が世界を席巻する中、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』とエズラ・ボーゲルが持ち上げた日出ずる国も現在、“昏迷(こんめい)”しています。
7月8日付『日本経済新聞』が報じた「主要商品・サービスシェア世界市場調査」で、有機ELパネルも大型液晶パネルも上位5社は韓国・中国・台湾の企業が独占。エレクトロニクス分野13品目の上位5社に日本企業は皆無。高品質なメイド・イン・ジャパン銘柄が信頼を勝ち得ていると思いきや、5分類された医薬品に加えて化粧品・腕時計・ビール・茶・スポーツ衣料・冷蔵庫・洗濯機・太陽光パネル・風力発電機も上位5社は「ジャパン・ナッシング」。
にも拘らず経済産業省が主導する旧・産業革新機構=現INCJ、クールジャパン機構=海外需要開拓支援機構の官民ファンドがジャパンディスプレイ、ルネサスエレクトロニクス等のゾンビ企業の延命に血税を注ぐ、倒錯した“ニッポン凄いゾ論”が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)。
「臨海部を活性化する上で有効だ」。既に2年8ヶ月前、「特定複合観光施設区域の整備に関する法律=カジノ解禁法」成立の時点で明言していた横浜市長。今年8月22日の会見で改めて、「カジノを基軸とする統合型(インテグレ-ティッド)リゾートの誘致」こそ「市民の皆さまの安全、安心、幸せな生活をしっかりお支えしていく為の最も良い方法」と胸を張り、「今年をピークに人口が減少に転じ、消費や税収の減少、社会保障費の増加、経済活力の低下と厳しい財政状況が見込まれる」と決断理由を述べました。日本全体が人口減少していくのに不可解な“ヨコハマ凄いゾ論”です。
「(1万店舗の)パチンコは地域と関連が深く、自治体に利益を還元する道があってよい」。この6月に『私の履歴書』で看破(かんぱ)した、旧自治省で市町村税課長を経験した石原信雄・元内閣官房副長官と共闘して政府に物申してこそ、政令指定都市20市の中で最も多い347万人を擁する横浜市が、輝く自治体の星となり得る好機。
 大王製紙創業家3代目の井川意高氏は自身の経験を踏まえて「日本のカジノ法は童貞と処女がAVの脚本を書いてるレベル。(百戦錬磨な海外の業者にとっては)赤児の手を捻(ひね)るようなもの」と語ります。「悪い波を止め、自分たちの街は自分たちで守るのが『波止場』の心意気」と矍鑠(かくしゃく)たる89歳の藤木幸夫・横浜港運協会長も、昨夏に僕との対談で喝破(かっぱ)。
「クルーズ船も横付け可能な保税地域の山下ふ頭に(10万平米にも満たない東京ビッグサイトを超えて)他国に伍する25万平米規模の見本市展示場を民設・民営で設けるハーバーリゾートこそ、持続可能な雇用と活力を地元に生む」。人間の相貌(かお)と体温が感じられる港町を願う藤木翁の卓見です。

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エフエム横浜で4年前から「たまらなく、AOR」の選曲&お喋りを担当している僕は、74回目の「敗戦の日」の翌日にNHK-FMでも90分間、「しなやかなAOR」と題して計16曲をお届けしました。ディーセント=慎み深い誇りを持った、そしてマチュアード=成熟した落ち着きのある音色を編み出す、分別を弁えた大人=即ちアダルト・オリエンテッドなAORの音楽が華開いたのは70年代後半から80年代初頭に掛けての、別けても1979年に数多くの名曲が誕生しています。
ジャズやロックと異なり、声高に正義を語る上下左右の「イデオロギー」とは無縁なAORは、サッチャーやロナルド・レーガンが喧伝する経済的新自由主義の徴候に鈍感だったのではありません。寧ろ逆に鋭く察知していたからこそ、密やかに謙虚な誇りを抱いて日々、真っ当に働き・学び・暮らす市井の人々のしなやかさを楽曲へと昇華させていきました。

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2019年8月16日 NHK-FM「真夏の夜の偉人たち しなやかなAOR」選曲・出演 田中康夫

 

8月30日(金)Vol.583
カジノありき妄信論の皆さんがYa‘ssyに脊髄反射w
明日まで見逃し視聴可能な「モニクロ」動画!
言葉尻に固執する香ばしい程に痛い理解力なき方々のツイートを紹介しながら再解説! - YouTube

アメリカ東海岸最大のカジノ都市アトランティックシティの衰退

藤木氏「かわいそうだよ」林市長リコールには否定的

横浜市の「カジノ誘致」騒動の虚しさ。どう見ても失敗するので、反対する気力すら起こらない。なぜか?

「オピニオンCROSS」は首都圏以外の全国・全世界の方々も以下、エムキャス「見逃しヴィデオ・オン・デマンド」ページにて放送後3日間ご視聴頂けます。 

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「註の新たな註」

「いまクリ」と「もとクリ」、その記憶の円盤が舞い続ける時空。ようこそ現在から1980年の東京、そして日本へ❣

「✽文庫本化に際しての、ひとつの新たな長い註。」でお約束した「註の新たな註」は、両書に登場する「字句の解釈」に留まらず、高度消費社会の幕開けから現在に至る時代背景を、
関連する僕の拙稿等も紹介しながら絵解きしていくサイトです。

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